クラス転移で仲間外れ?僕だけ◯◯◯!
118話 閑話 シェシリー#7
その赤い液体の入った小瓶のアイテムの鑑定結果を教えてもらいましょう。何か打開策が見つかるかもしれません。
「そのアイテムの効果私にも教えてくれませんか?」
「え?良いですけど、多分どうにもならないと思いますよ?」
美月様に具体的な効果を教えてもらいます。
私が命を救うために必要な効果の部分は、【他者の魔素が体内に入ってくるので、ジビレや激しい痛みを伴う。また1日に3滴以上使用すると、魔素汚染によって体が魔物に変質してしまい、死ぬ。】というものでした。
う~ん?
これはもしかしたら、直接的に薬が原因で死ぬ訳では無いのでは?
この薬、鬼神薬の効果の主作用は【鬼のごとき力を短時間得ることが出来る。】で副作用は【自分の体が魔素汚染してしまう】というものなのでは?
つまり………魔素汚染をしても、自分の体が魔素汚染による魔物化にうまく適応出来れば、死なないのでは無いでしょうか?
それならば、私の持つあのスキルを使えば何とかなるかもしれません。
何度も効果を頭の中で考察し、私の考えに不備が無いか考えます。
しかし、これと言った不備はなさそうです。
やはり、私の考えた方法で行くべきでしょう。
「やっぱり!…………鬼神薬の副作用は死ぬことでなかったのですね。」
「?どういうことですか?」
「鬼神薬の副作用はあくまでも魔素汚染によって魔物に変質することです。その結果、人が死ぬだけで鬼神薬が人を殺す訳ではありません。」
「それになんの意味が?」
「つまり、魔素汚染を上手くコントロール出来れば、魔物化しつつも死なずにいられる筈です。私は[超位魔素耐性]というスキルを持ってます。これは自分以外の魔素に適応するスキルです。普通は魔素の濃いダンジョン等に侵入するために必要なスキルですが超位ともなれば、このアイテムを使っても死ぬことがないくらいの効果がある………………筈です。」
とはいえ、本来の[超位魔素耐性]の使い方から大きく外れた使い方ではあります。
正直、成功確率はかなり低いでしょう。
出来れば、成功確率が低いことを美月様に悟られなければ嬉しいのですが………。
ですが、聡明な美月様なら恐らく直ぐに、成功確率が低いことに思い至るでしょう。
美月様の事です、その事を知ってしまえば、心配をしてくれるでしょう。
私は心配してもらえると心が暖かくなって嬉しいですが、これ以上美月様に心配を掛けて、無駄に心労を掛けたくありません。。
「でも、いいんですか?これだって絶対成功する訳じゃないですよね?」
ここは私が迷ってはいけません!
もし、少しでも私が迷ったような事を言ってしまえば、美月様は私がもし死んだ時、この方法しか用意できなかったとと悔やんでしまうでしょう。
しかし、私が迷いもなくこの方法を使えば、もし失敗しても美月様が自分を責めることが無いかもしれません。
「それは当然のことです。今までの私の戦いだって全て絶対勝てる戦いでは無かったです。常に命を散らす覚悟はしてました。」
「わかりました。じゃあ、リリアさんが鬼神薬を飲んでから種族が人でなくなった瞬間に[ティム]を発動します。それにリリアさんが応じて使役獣になったら、僕の[状態異常妄想]でリリアさんに[再生]を付与します。」
ふぅ、もしかしたら死ぬかもしれませんね。
覚悟を決めて美月様に身を任せましょう。
でも、最後に思い残しはしたくないです。
「分かりました…………。さ、最後に!………………やっぱりやめときます。」
最後に美月様に想いを告げようと思いましたが思いとどまりました。
今私が想いを告げてもし、死んでしまったら美月様は一生、女の人と付き合う時に思い出させてしまうかもしれません。
私が生きているうちは覚えてて欲しいですが、私が死んだなら私の事を忘れて気楽に生きて欲しいです。
それに、今言ってしまうのは卑怯ですよね。
断りづらい今じゃなく正々堂々、美月様の愛を勝ち取りたいです。
美月様には気になる方、つまり美樹様がおられますしね。
中途半端な方法で美月様を手に入れて後悔したくないです。
「え?なんですか?気になるじゃないですか?」
「今言ってしまったら死んじゃいそうなので、生きて怪我を治したときに言います。」
適当に言った言い訳でしたが本心でも有るかもしれません。今は想いを告げたら満足して、頑張れないかもしれません。
自分の思いに笑みが溢れます。
「じゃあ飲みますね。」
!!?
「イイィィィ!!!」
痛い!
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
あまりの痛みに声がまともに出ない。
まともな平衡感覚もなくなり地面をのたうち回った。
意識も混濁していた私の幻聴なのか、それと本物の声なのか、美月様の優しい声が聞こえた気がした。
そして痛みが限界を越えて失神した。
目が覚めると名前を呼ばれた気がしてそっちの方を向く。
「あ…………うーん?」
目の前には心配そうな美月様のお顔があった。
「リリアさん大丈夫ですか?意識は問題ないですか?」
あんまりにも急にそんな真剣な顔を見せられると顔が……火照ってしまいます。
いけません!美月様が心配してくださっているのに!
意識は…………良く分かりませんが異常はなさそうですかね?
体を見回しながら、ペタペタ触りますが変化は無さそうです。
「え、えぇ。体も特に痛くは無いですし、頭が働かなくなった感じもありません。」
美月様は安心したように力を抜いて話し出しました。
「そうですか………………それは良かったです。ですけど種族が魔族に………………、それにレベル1に戻ってしまったみたいですいません。」
魔族?
魔物ではなかったのでしょうか?
ステータスを確認すると種族は鬼人族(魔族)となっている。
額に手を持っていくと一本の角が生えていた。サイズは小さめで内部は固そうだけど、表面は皮があってプニプニしている。
今までなかった部位のためか少し敏感に感じる。
そのまま、角以外の変化が無いか確認するがそれは問題無さそうだ。
「まあ、死ぬのに比べれば、角一本くらい大したことありませんよ。
それにレベルが初期化されたのだって私にとっては好都合なんですよ? 」
そうなのです。
ステータスは初期化されたものの、私にとっての一番の弱点であった基礎ステータス値が低いという問題が無くなっており、将来的には前より遥かに強くなれそうになってる。
「え?なんでですか?」
自分のステータスを再度確認しながら言う。
「私のステータスは高位の冒険者をやっていくには、かなり低めのステータスでした。私くらいのステータスなら本来は低級坊けが良いところです。技術で補っていましたが、正直限界が近かったと思います。ですから冒険者を止めたんですが、今のこのステータスならもっと先の、私が諦めたその先の強さまでたどり着ける気がします。ですから感謝してます。」
命を救ってくれただけで無く、私のコンプレックスまで無くしてもらえるなんて。
「リリアさんなら確実にもっと強くなれると思います。僕も微力ながら手伝いますよ。」
「ありがとうございます。………………それで、私が先程言おうとしたことの続きなんですが…………。」
もう命は助かりましたし、これでもう想いを伝えても問題ありませんよね?
正直これ以上この想いを隠して一緒に居ることなんて耐えられません。
胸がドキドキして緊張が……………。
美樹様、お先に失礼させてもらいますよ。
「美月様………………。私は貴方の事を愛してます。私の恋人になってくださいませんか?」
「え!」
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コメント
ぱんれお
『中途半端な方法で美樹様を手に入れて後悔したくないです。』
の1文で、「美樹様」ではなく、
「美月様」ではないでしょうか…
間違っていたらすいません。