武士は食わねど高楊枝

一森 一輝

6話 白の中の黒(1)

 事情聴取が終わって、ファーガスは背伸びをした。
 改めて知ったのだが、騎士学園の中で起こった事に関して警察は関与しないらしい。その為、ファーガスの向かいに座ったのはワイルドウッド先生だった。質問も最低限で、むしろ情報を提供してくれさえした。
 事の顛末は、デューク先生の乱心に終始していたという。
 彼の言ったという悪質なストーカーなどという存在は居らず、その痕跡も残っていなかった。彼の部屋は荒らされてはいた物の、彼以外の指紋は見つからなかったそうだ。
 さらには、乱心の理由として最も重要視されているのが、彼の麻薬の接種である。UKでの麻薬は、諸外国の中でも流通が激しい。貧民街などいけば簡単に売人が寄ってくるほどで、騎士の格好さえしていなければ購入も容易らしい。その為検挙も楽なのだが、如何せん数が多かった。ゴキブリの様に、いくら潰しても出て来るのだ。
 麻薬を摂取していたのは彼だけでなく、他にも結構な人数が居たようだ。今秘密裏に逮捕している最中なのだとか。オーガに関しては、彼らは長い時間をかけて亜人を罠にはめて確保していたのだという。どうやって移動させたかは、未だ分かっていない。有力な説としては、騎士たちが摂取していた麻薬を餌などに混入して、それにより操っていたのではないか。というものがある。
 ファーガスはその事実を聞いて、いたたまれない気持ちになった。世間的には純粋な被害者である彼だから、その事も考慮されたのだろう。一時間もせず、解放された。
 ソウイチロウの件は、どうだったのだろうと考えた。まさか騎士学園の中で裁いたのか。それではあの結果にならないだろう。だが、外で裁けば、どうなったのか。ソウイチロウの無罪だけでは成り立たないような気もする。実在を危ぶむなどという、馬鹿な事は考えないが。
 ともあれ、自由だ。明日のクリスマスに備えてケーキを買いに学園を出ようとすると、校門でローラが外行きの服を着込んで歩いているのを見た。白を基調としたゆったりした服で、その所為か、尚更人形のような外見となっている。
「お、久しぶり。買い物か? それにしては荷物が多いようだけど……」
「あ、ファーガス、お久しぶりです。今回の件は、お疲れ様でした」
「ん、ありがとう」
 聞こえなかったのかと思ったが、そういう訳でもないらしい。彼女は一度自分の服装を見直してから、「ああ」と言った。
「私は、今から帰省するところなんです。許可も貰ってあります」
「え? そうなのか。何でだ?」
「えっと……」
 ローラは、少し気まずいという顔をしてから、このように続ける。
「私が住んでいた町の近くの村が、ドラゴンに襲われて壊滅したと聞きました。一応連絡も取れたのですが、学園の方から帰ってもいいとの許可が下りて、……流石に、心配で」
 ファーガス、度肝を抜かれた。目を剥いて、慌てながら言う。
「そりゃ大変だ! 呼び止めてごめん。ほら、早く行かなきゃ! ああ、気が効かなかったな。荷物でも持つか?」
「え!? い、いえ。大丈夫ですよ。ファーガスもいろいろあって忙しいでしょうし」
「いいや、大丈夫だ。今は丁度時間が空いてるから。ほら、これ重いだろ? よっこいせっ、……と」
 ローラの荷物を担ぎ上げて、「駅でいいよな」と聞いた。たどたどしく首肯され、先導する。遠慮はしばらく続いていたのだが、聞き入れずに雑談をしていたらいつの間にかなくなっていた。
 雑談は自然と、ドラゴンの話になった。討伐は順調で、被害も軽微であるという。騎士学園からの卒業生たちは、かなりの戦果を挙げたと聞いた。
「風を操るドラゴン。東洋から来たとされる、巨大な蛇のようなドラゴン。あと、巨大なサイのようなドラゴンも倒されたと聞きました」
「すぐに討伐された二匹に次ぐ三匹か……。サイみたいな奴って、俺の直感だと意外に強い気がする」
「確かに、良い情報がなかなか入ってきませんでしたね。凄いです、ファーガス」
 ぱちぱちと拍手され、ちょっとだけ照れてしまう。それで頭を少し掻いてから、他の情報も聞き出していく。
 その中に、ソウイチロウの情報は当然なかった。大丈夫だろうかと心配する。また、虐められてはいないか。ソウイチロウは、一人でも強い。だが、脆さはあるのだ。そこを突かれてしまえば、本当に呆気なく崩れてしまう事を、ファーガスは知っている。
 付き合いはネルよりも短いが、親友と言えばまずソウイチロウが思い浮かぶ。それだけ、相性が良いのだろう。しかし、引き離されてしまう事も多かった。悩み事が無いと、またバカ話がしたいなと、空を仰ぐこともしばしばだ。
 ソウイチロウの事を考えると、これまでにあった様々な不可解について思考がいく。デューク先生の事も、ちゃんと納得がいったとは言い難い。しかし、今はローラと話しているのだ。少しだけ首を振って、彼女との会話に集中した。
 歩きながら、こちらの近況と言うか、事件の顛末を伝えた。口封じもされていなかったし、別に怒られはしないだろう。麻薬の事を伝えると、ローラは酷く気分の悪そうな表情になった。
「どうした?」
「……いえ、私の遠い親戚で、ドラッグの為に人生が滅茶苦茶になった人が居たので……」
 教えてくれて、有難うございます。そのように、彼女はファーガスの話を遮った。あらかた話していたし、彼女の顔を見ていればその気も失せる。デリカシーが無かったかなと、ちょっと悩んでしまう。
 駅に着いて、別れを告げた。「しばらくすれば、帰ってくるんだよな?」と聞くと「ええ、勿論です」と微笑される。
「じゃあな」
「はい、また」
 手を振って、別れた。後には、僅かな寂寥が残った。
 駅に帰るまでに、ファーガスはちょっとしたお土産を買って帰った。この国の料理店は不味い場所も多いが、不思議な事に茶菓子は美味い事が多い。自分、ベル、ネル、後はアンジェの分である。ローラにも買ってやればよかったと、少し後悔した。先に立たずだ。
 学園に返ってから、ベルたちの事を見つけられずに、ぶらぶらと歩いていた。すると、上級生の何人かが、こちらに近づいてくる。皆笑顔だ。薄気味悪く、少年は微妙な顔つきで避けるように歩く。捕まった。
「何スか!」
「おう、お前凄いじゃねぇか! お前がグリンダーだよな? よし、先輩が飯奢ってやろう。おい、グリンダー様が昼食をご所望だぞ! お前らも少し金出せ」
「何でだよ、言い出しっぺのお前だけ出せよ」
「良いだろ? 何たって学園を救った英雄の一人だぜ?」
「は?」
 ファーガスは、呆然とそんな声を漏らした。流石に上級生たちも不審に思って、躊躇いがちに問うてくる。
「もう一度聞くけど、お前はファーガス・グリンダーだよな?」
「は、はい」
「デューク先生が血迷って集めた大量のオーガに、いち早く気付いて山からの脱出を防いだ」
「確かに、そうですけど……」
「お前紛らわしいんだよ! もっと胸張れ!」
「痛ってぇ!」
 背中をバシンとやられ、呻くファーガスである。何故か知らない上級生数人に肩を組まれ、大所帯で歩いた。彼らは意気揚々と歌を歌っている。UKの国家であった。ちょっと怖い。
 けれどファーガスは、ノリが良かった。合間合間に褒め殺され、歌え歌えと煽られれば、歌いだしてしまう。
「おお主よ、我らが神は立ち上がり!」
『敵を蹴散らし、追走させ!』
「姑息な罠をも破りたもうた!」
『我らの望みは汝に在り!』
『神よ我らを守りたまえ!』
 ファーガス、上級生たちと続いて、最後には全員で歌った。二番である。一番の途中でファーガスは細々と歌い出し、今は誰よりも声を出している。
「……何やってんだ、お前」
 きょとんとしているのはネルである。それを見つけた上級生たちは、それぞれ「お」と声を漏らす。
「もう一人英雄が見つかったぞー!」
「いや、オレアイルランドクラスなんでいいっス」
「アイルランドクラスだとかそんな事はどうでもいいんだよ! ほら、お前も来い! 何だよ、お前オーガと一人でやり合ってたそうじゃないか! どんだけ強いんだよ、今度おれと手合せしろ!」
「は? え、うわ! 何だアンタら。はぁ!?」
 ネルも同じように巻き込まれ、肩を組まされた。無理やり隣同士にさせられ、奴は小さく「どういう事だ? こりゃ」と尋ねてくる。
「俺達を英雄扱いして、祝杯でもやろうってんだと。良かったな。驕ってくれるらしいからスコーン食い放題だぜ」
 学園で出される食事は、朝昼晩を抜けば有料になる。例えばスコーンなどがその筆頭だ。さらには、カレーなど自国の食文化から外れるメニューもその範囲である。
 その言葉に、ネルは目を輝かせた。しかし、と妙な顔をする。
「この先輩方ってよ、多分だがイングランドクラスだろ」
「まぁ……、そうだろうな。去年に見覚えあるし。……それがどうかしたか?」
「いいや……。随分仲良くなったもんだと思ってな。まぁいい。スコーンが食べ放だ、もとい、有料の飯でも無料だってんなら腹いっぱい食わなきゃな!」
「本音が今漏れてたぞー」
 貴族にとってはスコーンなど安い物だろうとは思ったが、無料飯と言うのが良いらしい。得した気分になるのだとか。貴族でもそんな風に思うのかと、少し意外だった。
 その途中、ベルやアンジェも先輩方に発見され、大所帯での宴が始まった。別校舎の騎士候補生たちもこちらへ訪れ、こっそりとこちらの校舎の生徒たちに泡の出る麦茶を振る舞っていた。ファーガスはなかなか行ける性質なので、ぐびぐびとやって大いに盛り上がった。その途中、片隅に置きっぱなしの手荷物を見て、苦笑した。
 買ってきた茶菓子は、後回しになりそうだ。


 祝杯は、事件の収拾の為に特別あてがわれた休日を丸々潰した。そこら中に貴族の様に酔った先輩方が倒れ伏している。ファーガスはザルなので割とけろりとしていた。もちろん酒なんてこれっぽっちも飲んでいないよ?
 ベルは下戸で、呑まずに紅茶と茶菓子で優雅に楽しんでいた。が、今は気持ち悪そうにしている。酒臭さに当てられて軽い酩酊状態らしかった。本当に飲んでいたら病院送りになるタイプである。
 ネルは、そこに倒れている。その顔は真っ赤だ。アンジェはその上に折り重なっていた。何だかんだでこの二人は仲がいい。
 ベルを介抱し、酒臭いイングランドクラスの食堂から出た。イングランドクラス以外の人間は、精々が英雄だとからかわれたアイルランドクラスの三人だけだ。仲が良いと言ってもその程度らしい。そこで、少々困ったことに気付いた。もしや、三クラス全てで宴の肴にされるのか。
 予想しているだけでも、すでに萎え始めた。楽しいは楽しいのだが、こういうのは偶にやるからいいのだ。繰り返し行えば、飽きが来て疲れがたまる。
「ありがとう、ファーガス」
「いいや、気にすんな。それに、ベルははっきり言って軽い」
 気持ち悪そうにしていたから肩を担ぐのでなくお御姫様抱っこを選んだのだが、中々いい収まり方をした。軽いと言われ、頬を紅潮させるのだから愛嬌が有る。降ろしてと言われても、降ろしたくない程だ。もっとも、中々言われないから案外抱かれ心地はいいのかもしれない。
 今日は、星が綺麗だった。「そうだ!」と閃く。ベル、とその名を呼んだ。
「これからさ、酔い気覚ましに二人で星を見に行かないか?」
「え?」
 言うが早いか、学園を出た。近くに開けた公園があり、その中央には小高い丘があるのだ。そこに上ると一階建ての多いUKの建物は視界から消え、満天の星空が見える。ここは都心ではないから、星の輝きが電灯などにかき消されることは無いのだ。
 本当はそのままで行こうとしたのだが、学園から出ようとした所で流石に照れたらしく、降ろすように言われてしまった。残念でならなかったものの、腕が疲れて自分から言い出すよりはいいと思い直した。ファーガスの腕は太く、どちらかと言うと白筋が多い感じなのだ。持続力が無いのである。
 辿りつくと、誰もいなかった。寒い為だろう。スコットランドクラスの聖神法で、火を灯す。「いつの間にか多芸になったね」とベルは微笑んだ。
「昔の君は、不器用もいいところだった。あの頃は私も狭量だったなぁ。ファーガスが簡単な所で詰まってしまうのが、何故だか分からないけど許せなかった」
 昔、と言われ、知り合って間もない頃の事だと気付くのに少しかかった。確かに、あの頃は体がもっと小さかったというのもあるし、それ以上に記憶の混濁が激しかった時期だ。ソウイチロウは生まれた時から記憶があったというから分からないだろうが、途中から蘇った自分のような場合は、何でもないような場面でたびたびフラッシュバックが起こり、呆然としてしまったのだ。不器用であった最たる理由である。
 また、と不意に思った。今日は、良くソウイチロウのことを思い出す。再び会う事が出来るのは、いつの事なのだろう。そう考えると、少し寂しい。
「……ファーガス?」
 ボーっとしていたのか、ベルに声を掛けられる。ハッとして、直前までの会話を思い出し、肩を竦めた。
「許せないって……、怖いな。こりゃ、もっと頑張らないと」
 言いながら、愛しさが募って彼女の頭を撫でた。そうすると、恥ずかしげに身をくねらせて、ベルは少年の手を受け入れてくれる。
「そうだよ、もっと頑張って。何せ、君は私の騎士なんだから」
 甘えるような声だった。それで、ファーガスは堪らなくなった。下唇をかみしめて、勇気を振り絞ろうとする。
 だから、不意を突かれた。
「ファーガス、私ね、……君のことが、好きだよ」
「へっ?」
 驚いて彼女の顔を見直すと、少女はぷいと後ろを向いてしまっていた。けれど、炎が灯っているから耳まで赤いのがバレバレだ。
 対して、少年の頭は、パンクしかけていた。ベルの顔の赤さは何だか可愛らしい物があるが、ファーガスのそれはもはや爆発寸前の風船である。真っ赤と言うか赤黒い。赤黒いというか、赤グロかった。
 ベルは、何も言わない。答えを、待っているのだ。ファーガスは、微かに震える。彼に注がれる空気は、もはや限界だ。
 強く、勢い良く、ベルの手を握った。小さくて、冷たくて、でも熱かった。
 少年は、とうとう破裂する。精一杯の告白の言葉を、放つつもりだった。
 そうなる、はずだった。
 咆哮。それは、二人の体を完全に委縮させた。状況を把握するよう鍛え上げてきたはずの少年少女らの体は、全くと言っていいほど動かなかった。大気が揺れ、二人は本能的な恐怖に意識することなく互いの体を引き寄せあう。
 ファーガスの小さな光源に、空で何か黒きものがよぎった。再びの咆哮。ファーガスは怯えたが、二度目故に動けないという事はない。
 ベルを抱えて、立ち上がった。同時に、空から雷が落ちるような音がした。すさまじい光に、少し遅れてくる凄絶な音。だが、空に雲などはないのだ。焦燥に急かされながら、空を見上げる。雷は、落ちるのでなく横方向に――空を飛び回る黒き物体に放たれているようだ。誰が放っているのかは、分からない。
「ファーガス、これ、一体何が起こって……!?」
「わ、分からない。とりあえず、学園に戻ろう。あそこなら、ドラゴンが来ても安全だってされてる」
 再び、空が明るくなった。ベルの手を取って駆け出しつつ、小さく振り返る。星空を焼き尽くすかのような、極大の炎。それが放射状に放たれ、周囲を照らしている。何が空を飛んでいるのか。何と何が戦っているのか。
「嘘……」
 ベルが、声を漏らす。ファーガスも、息を呑む。
 それは、真っ黒な鱗に覆われたドラゴンだった。この国を滅ぼさん限りに蹂躙したといわれる、伝説のドラゴン。
 炎は消え、その中で小さな光が流れた。流星を連想させられたが、ファーガスは酷く嫌な予感に襲われた。もはや背後を顧みることなく、二人は学園に向かってかけていく。
 校門をくぐるか否かのところで、眼前に光が墜落した。近くで見ると、光は聖神法のそれにも似ていた。光は消え、暗闇の中で何かがうめき声をあげていると知った。ますます予感が増して、少年は少女の制止を振り切り、その元へ向かう。
 石畳の上で血まみれでいる、人間らしき影。
 ベルは口を押え、顔を真っ青にした。剣で戦うため慣れているはずのファーガスでさえ、息を呑んだ。墜落の衝撃で腕は千切れ、うつ伏せに這いつくばっている。その周囲の石畳は、砕けていた。
「おい、アンタ! 大丈夫か!? 生きてるのか!?」
「ぅぐ……、ぁ……!」
 その声を聞いて、ぞっとした。憎悪に満ちた声。だが、それ以上に恐ろしかったのは、その声に聴き覚えがある事だった。
「……ソウイチロウ? お前、ソウイチロウなのか?」
 違うと答えてくれ。そのような儚い思いは、彼が顔を上げた事によって粉々に打ち砕かれた。
「……殺す。……殺してやる……!」
 ソウイチロウは、弱々しく這い出した。しかし、ファーガスは気付いた。そこに腕が千切れて、転がってはいなかったか。にもかかわらず、何故彼は二つの腕を持っている。
 聖神法で、光を灯した。その所為で、ファーガスはソウイチロウの、その呪われた姿を直視することになった。かつて強い輝きを湛えていたその瞳は、今はどす黒く淀んでいる。片腕は異形に染まり、もう片方の腕も衝撃に耐えかねて滅茶苦茶だ。動ける躰ではなかった。だというのに、彼は執念で動いていた。
 しかし、最後には力なく潰えた。どうすれば良いのか、ファーガスは戸惑った。ベルが、「とにかく医務室へ」と叫んだところに、血相を変えたワイルドウッド先生が、こちらに呼びかけてきた。
「二人とも! ここで一体何をしているんだ!? 中に早く入りなさい! 死にたいのか!」
 ベルとソウイチロウを抱えたファーガスは、先生のその怒声に恐慌状態に陥りかけた。彼はファーガスが背負う彼を見て呼吸を止め、首を振ってから「とにかく、中へ!」と駆け足気味につれていく。
 ファーガスは先生に引っ張られながら、呆然としていた。先生の怒号、ベルの泣きじゃくる声。何もかもが狂いゆく中で、ファーガスはいつの間にか時計が十二時ぴったりを指していることに気が付いた。十二時。それは、零時でもある。日付が変わった。ファーガスは、ぽつりとつぶやく。
「クリスマスに、なったのか……」
 三度、咆哮が上がった。黒き龍の羽ばたきによって雲が運ばれてきたのか、窓の外には雪が降っていた。

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