シロトクロ

むぎ

第5話 アタリとハズレ

レン「トモカ…あの空き地で何かあったのか?」
トモカ「え…?な、何かって?」
レン「何かあったなら隠さないで話してくれ」
トモカ「……何でそう思うの?」

レンも不思議だった。
何故そんなことを聞くのか自分でも分からなかった。

レン「いや、何でもない忘れてくれ」
トモカ「う、うん。」

トモカは言えなかった。
目の前で人間が異形化したという事実を。

ユウの母「まったく…高校生にもなって空き地で寝ちゃうなんて……」
レン「ほんとですよ(笑)」
ユウの母「ごめんねー。あ!そうだ!ご飯食べてく??ご両親には電話しとくからさ!」
トモカ「え、でも……」
レン「喜んで!ユウの母ちゃんのご飯マジで美味いんで嬉しいです!」
ユウの母「あら、嬉しい事言ってくれるじゃない!今日はカレーだから降りてらっしゃい!」
レン「よっしゃー!カレーだーー!」
トモカ「まったくレン君ったら……」


ユウの母が作る料理は格別だ。
特にカレーは抜群に美味いのでユウはもちろんレンもそのカレー以外のカレーを食べれない程である。

レン「やっぱこのカレーだよなぁ〜!」
ユウの父「ほんとレン君の食べっぷりは見てて気持ちいいな!ハハハっ!」
トモカ「もっと綺麗に食べなよ!!」
ユウの母「いいのよトモカちゃん!美味しそうに食べてくれるの見ると私嬉しいもの!」

ユウの母はご機嫌だ。

ユウ「腹減った!母ちゃん俺にもカレー!!」
トモカ「ユウ!」
レン「悪ぃユウ!先にいただいてたわ!」
ユウの父「ユウ!レン君とトモカちゃんに感謝しろよー!」
ユウの母「そうよ!ここまで運んでくれたんだから!」
ユウ「ありがとうな!よし、いただきます!!」

物凄い勢いでカレーを食べ進めるユウ

ユウ「やっぱ母ちゃんのカレーが1番だな!」
レン「だよな!」

ユウの父「ほんとお前らは昔っから相変わらずだな!」

一同「ごちそうさまでした!」

時計は21時を示していた。

トモカ「すっかり遅くなっちゃった。」
ユウ「送ってくよ!」
レン「俺も途中まで一緒だし行くわ!」

3人は外に出てゆっくりと歩き出した。


ユウ「いやー今日は本当にありがとうな」
レン「あのさ、ユウ…」
トモカ「あ、あのね!」
ユウ「ん?どしたトモカ」
トモカ「いや、あのね、うーんと」

レンはトモカが明らかに空き地での事をユウに聞かれないようにしている事に気付いた。


レン「はぁ……」
ユウ「なんだよお前ら(笑)」
レン「あのさ、ユウ…」
トモカ「ちょっとレン君!」
レン「ごめんトモカ。少しだけユウと話をさせてくれ。」
トモカ「う、うん。」
ユウ「なんだよ」
レン「今日、空き地で何があった?ただ寝てたわけじゃねーだろ?」
ユウ「別に何もねーよ、日向ぼっこしてたら眠くなっちまっただけだって」
レン「嘘はやめろよ」
トモカ「ホントだよレン君…」

ユウはレンまで巻き込みたくなかった。
空き地で起きた事をレンが知ったら…
爆発を一緒に受けたレンも何か力を得ていたとしたら…
危険な目に遭うのは自分だけでいいと考えた上での嘘だった。

ユウ「別に何もねーよ。本当に…」
レン「お前の嘘つく時に鼻が動く癖、まだ治んねーんだな」
ユウ「!!」
レン「俺にだけは嘘はつかないで欲しかったわ…じゃあな…気をつけて帰れよな」

レンはそう言うと裏道を通り自宅へ向かった

トモカ「ユウ………レン君は…」
ユウ「分かってる…あいつを傷つけちまった…」
トモカ「でも、私も言えなかった…。この町で何か不吉な事が起き始めてるなんて…。」
ユウ「トモカ。お前は何があっても守るから……」
トモカ「え?どうしたの?急に…」
ユウ「ほら、着いたぞ!さっさと風呂入って寝ろよな!」
トモカ「ありがとう…また明日ね!」
ユウ「おう!」


トモカを送り届けたユウは空き地へと向かった。


ユウ「ギン…聞きたいことがある。」

シュッ!!

ギン「なんだ聞きたいことって」
ユウ「コアについてだ」
ギン「コアについて?それなら戦いの際に話した通りだぜ?」
ユウ「いや、その事じゃなくてさ」
ギン「じゃあ何だ?知ってる事なら答えるぜ」
ユウ「どうして俺なんだ?その…適合者ってのは」

ユウは疑問だった
何故、自分が選ばれたのか……

ギン「そういうことか……」
ユウ「知ってるなら教えてくれ」

ギン「お前が選ばれたのは偶然じゃない」
ユウ「どういうことだ?」

ギン「俺達の世界の創造主が継承者を探しててな」
ユウ「継承者?」

ギン「あぁ。長年の戦いでもう消えかかっちまってんだ」
ユウ「戦い?創造主が誰と戦うんだ?」

ギン「創造主の力ってのは何も創るだけじゃないんだ」
ユウ「あー。もしかして破壊の力か?」

ギン「察しがいいな。」
ユウ「よく漫画とかであるからな、創りすぎたものを壊すヤツを生み出したとか」

ギン「まったくその通りだぜ」
ユウ「てことは、破壊神と創造主がバチバチにやり合ってたってことか。」

ギン「おかげで創造主も破壊神も消えかかっちまってんだ」
ユウ「仮にその2人が消えたらどうなるんだ?」
ギン「戦ってるって言ってもこの2人が世界の均衡を図ってんだ。」

ユウ「つまり消えたらそのバランスが崩れて…」
ギン「世界が消滅する。」


ユウ「!!………それで継承者を探してんのか」

ギン「そういう事だ。」
ユウ「でもよ、おかしくねーか?」

ユウは気付いたのだ。
この話の矛盾点に……

ユウ「お前さ、今までにも適合者見つけて戦ってたんだよな?」
ギン「まあな」

ユウははっきりと覚えていた。
ギンは使い魔として今まで誰かと戦っていた際、名前を貰えなかった事を。
コアは所有者によって形を変えると知っていた事を。

ユウ「その適合者は継承者になったんじゃないのか?」
ギン「お前、ホント鋭いヤツだな」
ユウ「そいつらは……」
ギン「死んだよあいつらは全員」
ユウ「!!」
ギン「破壊神ってのは全てを壊すんだ。もちろんコアだって例外じゃない。」

衝撃だった。
自分と同じ力を得た人が死んだという事実に。

ユウ「コアを破壊されると死ぬってことか?力を失うだけじゃなくて命もなのか?」
ギン「そうだ。コアに選ばれ適合した時既に適合者の命の原動力はコアに変わるんだ。」

ユウ「ならどうしてコアは形を変えるんだ!俺みたいに心臓ならまだしも!」

ギン「全員が同じ場所に発現したら壊すのなんて容易いだろ…だからヤツらに分からないようにしたんだ!」

ユウ「そういうことか。でもよ、コアを壊す前に適合者の命を破壊すればいいだけの話だろ?」

ギン「コアを発現した段階で命の原動力はコアになる。って事は心臓を破壊してもコアがある限り心臓は創り直せる。」

ユウ「はぁ?チートかよ……」

ギン「だからこそお前は特殊なんだよ。」

ユウ「そうか、俺は心臓がコアだから心臓が破壊されたらコアが破壊されるのか……」

ギン「まあ、そういう事だ。それより話を戻すぜ」

ユウ「あぁ。」


ギン「適合者をこの町で1人1人探してたら間に合わないんだ。」
ユウ「意外と広いからな門之町かどのちょう
ギン「だから、テストをさせてもらった」
ユウ「テスト?」
ギン「この町で資格がある者達にしか届かないサインを出してな。」

ユウ「まさか、あの異変は!!」
ギン「あぁ。創造主からの試験だ。」
ユウ「だからあの時、地鳴りに気付かない人達が居たのか。」

ギン「だからお前が選ばれたのは偶然じゃないんだよ。ただ…」
ユウ「ただ?」
ギン「お前が戦ったゴブリンの男居たろ?」
ユウ「あぁ。」
ギン「あいつらも一応選ばれたヤツらだ」

ユウ「選ばれた?でも、化物になったぞ?」
ギン「ハズレたんだよ…」
ユウ「ハズレだと?」

ギン「あの男はコアに対応する器じゃなかった。」
ユウ「それって」
ギン「継承者の抽選からハズレたんだ。創りすぎたものは破壊しなきゃならない。だから…」
ユウ「化物にしてコアの力で破壊するってか?」
ギン「そういう事だ。」

ユウは許せなかった。
自分勝手な創造主の行動に憤りを感じていた。



つづく………

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