精霊使いと冠位の10人
誘い
「お話って本気っスか?」
「ええ、もちろん。私、ヴォイドとは違ってあんまり戦うの好きじゃないし」
あの夜のセントラルタワーで康太と戦った金髪の男の仲間だと自ら告白したようなものだ。
康太は警戒しながらこの女性を観察する。
「私たちの狙い。知りたいでしょう?」
いきなり核心めいた話題を振って来られて康太は困惑した。
奏の話では精霊を魔獣堕ちさせようとしているという話だったが、それだけが目的だとはいうまいというのが康太の考えだ。
「私達は目的は魔法省を潰す事。理由までは教えてあげられないけどね」
その言葉が真か偽か。
正直どちらかはわからない。
しかしこれだけは康太はわかった。
「そんな事できるわけない」
魔法省には数多くの魔術師が存在し、尚且つ冠位の10人(グランドマスター)がいる。
そうやすやすと潰せるわけがない。
だが金髪の女性はニコリと笑いながら話を続ける。
「ええ、普通にやり合ったら戦力的にも返り討ちに合うでしょうね」
「じゃあ一体?」
そこで奏の魔獣堕ちという言葉が引っかかる。
魔獣堕ちした精霊はとても凶暴魔獣となる。
昔、奏から魔獣堕ちした精霊は冠位の10人(グランドマスター)が3人いなければ対処はできないだろうと話していたのを思い出す。
「まさか精霊を魔獣堕ちさせて・・・!?」
「ピンポーン!魔力の塊の魔獣で襲撃すれば、いくら魔法省や冠位の10人(グランドマスター)と言えど簡単には倒せないわ。現にあの光の子は合成魔獣(キメラ)程度で手こずってたし、そこまで準備に気合い入れなくてもいい気がしてきたけどねえ」
光の子というのは埜々のことだろう。
そして合成魔獣(キメラ)とは、おそらく。
「やっぱあのトロールはあんたが?」
「それもせーかい!いい感じに聡いねえ」
「そりゃ、合成魔獣(キメラ)なんてワード出されたらねえ」
もっともハイネとリーシャがいなければ、あれが複数の魔獣が合成されているということに気がつかなかった。
しかし康太は疑問に思っていた。
なぜここまで、親切に手の内を見せてくれるのか。
不気味でならないと言った様子で康太は嫌な予感がしていた。
「それで?なんでそこまで話してくれるんスかね?」
金髪の女性は笑ってこう答えた。
「あなた、こっちに来なさい」
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