精霊使いと冠位の10人

いなお

ハイネ・グライフ



「おいおい、嘘っしょ?」

校庭にいる3体いるトロールを見て絶句する。
神草埜々と智香の戦いを遠目で見ていた康太であるが、あの超絶な再生能力を目の当たりにし、今自分ができることを頭をフル回転させながら思考する。
するとその思考を遮るように頭の中でハイネが話し始めた。

(リーシャ、あのトロールよく見るんじゃ)
「(トロールを?)」

康太とリーシャが2人でハモるように答えた。
康太はよく観察してみるとトロールの皮膚は爛れて、その表面ががぼたぼたと落ちている。
どうやら高速で腐敗と再生が繰り返されているように見えるがそれ以外に何かあるのだろうか。

(あれはまさか、複数の魔獣の魔力が流れている?)
(リーシャもそう思うかの?)

精霊の2人は同じ結論に達したようだが人間である康太にはなんのことやらさっぱりだ。

「どういうことっスか?」
(あのトロールの魔力は他の魔獣の魔力が複数流れています。自然にできたものとはとてもじゃないですが......)
「人工的な、誰かの仕業って事っスか」

複数の魔獣が合成されているというが、康太が生きてきた中で、そんな魔獣は見たことも聞いたこともない。

(あれは体内の何処かにある核を壊さなければ、永遠と回復するタイプじゃな。さっきの光魔術では、核を壊せなかったのじゃろうな)

つまりは埜々が消し去ったもう半分にその核とやらはあったのだろう。

「リーシャ、ハイネ。核の場所ってわかるっスか?」
(私は何となくと言ったところです)
(妾もじゃなー。どうも体内で核が動いておるようじゃ)
「そらまた、厄介な事この上ないっスね」

どうやら2人も正確な場所までわかるというわけではないらしい。
先ほどの埜々の光魔法のように広い範囲を攻撃できる魔術ならばそれなりにも対処法があるのだろうが、精霊使いである康太は人様にその魔術を見られるわけにはいかない。
その縛りがあるせいで、自然とできることが限られてしまう。

(まあけど妾が何とかするしかあるまいな。リーシャの火力ならばまとめて消し去ることもできるじゃろうが流石に目立ちすぎるじゃろう)
(うぅ。康太様、申し訳ありません)

しょんぼりとリーシャは申し訳なさそうに康太に謝る。

「いや、こればかりはしょうがないっスよ。気にしないで。そんでハイネ、行けるっスか?」
(妾を舐めるなよ康太。この程度チョチョイのチョイじゃ)
「よし」

康太に憑いていたハイネが実体化する。
空中から地面に着地して「ほい」という声を出す。
そしてハイネの頭に手を置き、その名を口にする。

「ハイネ・グライフ!」

康太の周りで風が荒れ狂う。
それは小さな竜巻のように康太とハイネを中心として吹き荒れた。
新緑の光に包まれたハイネは銃の形となり康太の手に収まった。
そして康太は銃口をトロールに向けて狙いを定める。

「んじゃま、精霊使いの力見せてやるっスよ!」


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