貴族に転生したけど追放されたのでスローライフを目指して自前のチートで無双します

guju

領地運営と戦争準備⑬

 まさか、故郷からの手紙が届くとは思ってもみなかった。
 内容としては、俺の領地が辺境領からそれほど遠くなく、近隣の街の中ではトップクラスの武力を保持している事からの援軍の願いだ。
 今辺境領では、魔物の量が増加しているらしく、自前の軍と現地の冒険者だけでは手が足りないと言う。その上辺境の地である為、他所の冒険者がこちらに流れてくることもほとんど無く、手が回らずに領内の村で被害が多発しているらしい。

 本来なら関わりは持ちたくなかったが、父親の領地の危機となれば嫌でも手を差し伸べてしまう。
 別に嫌っている訳では無い、どころか大切に思っている俺は、彼等からの頼みを無下には出来ない。
 
 俺は手紙を持ってきた兵士に指示を飛ばす。

「おい、今すぐ王都にいる訓練生と指導官を全員この街に集結させろ。転移魔法陣の発動許可も俺の名で通せ」
「はっ、畏まりました! 」

 敬礼をした兵士は、事の重大性を察したのか駆け足で無線機のある兵舎へと戻った。
 無線機と言っても転移魔法と収納魔法を合わせた――収納した声を転移で相手に送り取り出すという原理の物だ。

 取り敢えず、手紙には魔物の強さはそれ程強くないと記されていた。
 冒険者ギルドが規定した依頼レベルでいえば、Cがほとんどである。
 その程度なら、俺が抱えている訓練生ならば当然のように倒せる実力は既についている。そう、現場の人間から聞いている。

 だが実践はまだな為、ならば好機と訓練に使わせてもらうことにした。

 軍要請に赴く時に、自らより爵位が上の貴族ならば本人が出向かないのは失礼にあたる。屋敷の管理はネメスに一任して、その穴をスーリヤに埋めさせるか。

 あとは、軍備品として大量の回復の魔法薬と魔力増強の魔法薬を荷馬車に積むか……。いや、今回の遠征は訓練と割り切った方が都合がいいか。
 丁度魔法薬制作者の新人育成も行っている所であるし、数名の上位魔法薬師を2名ほどとあとは訓練生で構築しよう。
 そうして、現場で軍医としても駆け回ってもらおう。
 基礎知識として叩き込んだ医療技術が、ここで役に立つだろう。

 となれば、荷馬車に積むのは魔法薬の材料と手当のための薬草、包帯か。

 俺は紙に一覧を纏める。

「スーリヤ」
 
 俺がひと声呼べば、どこからともなく「なんでしょう」と傍に現れる。

「この紙を魔法薬室室長に渡してくれ。部隊編成と材料の調達は三日後だ」
「了解致しました。その様にお伝え致します」

 そうして、すぐに光の粒子となりその場から立ち去る。

 よし、これで遠征への下準備はある程度完了したか。
 恐らくこの依頼で稼げる金額はさほど大きくない。精々経費としてかかった費用が帰ってくる程度だろう。
 だが、それと同時に辺境伯からスラムの人々を幾人か勧誘すれば、それだけで意義のあるものに変わるだろう。

 辺境の地で住まうものの能力が高いゆえ、自ずとスラムの人間も腕利きであったりと本来よりは役に立つ。
 この際、役員に奴隷だけでなく契約を結んだスラムの人間を入れてもいいかもしれないな。

 30人……いや、50人は連れて帰りたい物だ。
 食料は現地で調達するとして、行きは転移魔法で近くまで飛べばいいか。

 ネメスから、四天王を1人借りようか。
 そいつをスラム勧誘の人材に回す。

「ネメス」

 扉の付近で控えていたネメスがこちらへ来る。

「お前には、この度の遠征の感の全権代理を務めてもらう予定だ」
「は……。それは、どういう? 」
「恐らくひと月ほど、俺の指示なしでこの領地を運営してみろと言うことだ」
「それは、私には致しかねます」
「なぜだ? 」

 ネメスは、ひと間を置いて言う。

「悪魔の国を統べる事は出来ても、人族の領地とならば勝手が違い、結果がそぐわぬ形になるかと、そう推測するからです」
「そうか、だがやれ」
「ですが……」
「この領地は、お前が失敗したところで壊れるほどやわな場所ではない。俺は、お前にそんな心配をされる領地を作った覚えはない。それとも、お前は俺が信じられないか? 」
「いえ……そういう訳では」
「なら、やるんだ」
「はい。必ずや、成功させてみせます」
「その意気だ」

  こうして、遠征の準備が着々と進んでいくのであった。
 

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