貴族に転生したけど追放されたのでスローライフを目指して自前のチートで無双します

guju

領地運営と戦争準備⑧

「どうも、陛下から色々と聞いていますぞ。お会いできて光栄です、アルト伯爵」

 子爵が居る客室の扉を開けば、来ることを察していたかのな反応を返した。

「どうも、初めまして」

 俺が右手を差し出すと、ゼーバス子爵はそれを握り返した。

「どうぞ、お座り下さい」

 子爵は自らが座っていたソファを俺に譲ると、机の前に置いてあった椅子を移動させ、そこに座った。

「チェルシー、アルト様にお茶をお出しして」
「受けたわまりました」

 連れてきた侍女にそう指示する。
 
 お茶がでてきたところで、俺は話を切り出した。

「今日は、わざわざ来て下さりありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそ及び下さり光栄です」

 形式的な挨拶を交わし、お茶で口を潤す。
 いくら貴族位が上だといえど、相手は自分より何十年も生きてきている人間だ。上からの態度をとるのは疲れるものだ。

「私も……」

 子爵が、か細い声で言う。

「私も、チャンに息子を1人奪われた者です。仇をとって下さり、本当にありがとう、ございました」

 涙ながらに言う子爵。

 チャンがやっていた新人潰し。国王派の有力貴族の当主や、キレ物である子息などを誘拐し、密かに始末していることは有名だった。
 だが、なんの証拠も得られず動けずにいたところを、俺が潰したという訳だ。

 チャンは、恐らく奴隷として扱き使われた後、20年のうちには処刑されることが確定している。
 
「気にしないでください。俺は、陛下の為にやったまでですから」
「それでも、感謝はさせてください」
「なら、その気持ちは有難く受け取ります」

 その後も話を聞けば、どうやら被害者は彼の他にも4家あるらしい。
 みな同じように俺に感謝しており、後に礼に行こうとしていたと言う。

 ここまで放置されていたのは、恐らくチャンの巧妙なやり口だろう。手が届かない所で、悪事を働いては逃れ。

 「そうだ……」
「どうかなされましたか? 」

 子爵が用意した菓子を食べながら、物凄く面白いことを思い付いた。

「1つ、お願いがありまして」
「はぁ、なんでしょうか? 」
「恐らく、陛下はチャンを自らの領地の奴隷とするはずです」
「えぇ、殆どそうなりますね」
「そこをなんとか、俺の手に回ってこないかと思いまして」
「ほう、チャンを貴方が」
「えぇ、この土地で、自らがふんぞり返っていたこの地で、馬車馬の如く働かせようかと思いましてね」
「それはそれは、貴方は恐ろしい事をお考えになる……。分かりました、そのように陛下に頼んで見ましょう」
「ありがとうございます」

 少し気分が晴れたように、なんなら少し楽しそうに言う子爵は、余程チャンを恨んでいたのだろう。
 恐らく、ほかの被害者もそうだろう。

 それに、これはいい見せしめだ。お前達もこうなりたくなければ、派手に動くなと、そう暗に伝える事が出来る。

 1番慎重に動いていたチャンがあっさりと堕ちたのだ。恐らく、数年は静かになるだろう。

 それから暫く話し込み、僅かに残していたキウンの分裂体から合図を受け、俺は話を切り上げる。

「ゼーバス子爵、随分と話し込んでしまいましたね。そろそろ俺は失礼します」
「楽しい時間でした、アルト様。今後とも長き良き付き合いを」

 そう言って差し出された手を、俺は快く握った。
 そして、ゼーバス子爵のいる客室を出て次の部屋へと向かった。





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