貴族に転生したけど追放されたのでスローライフを目指して自前のチートで無双します

guju

国士騎士⑩

翌日、俺は馬車に揺られて王宮へと向かっていた。

「スーリヤ、昨日はご苦労だったな」

国士騎士の面々を、無事に訓練施設まで送り届けたスーリヤに労いの言葉をかける。

「いえ、この程度のことならば苦労しないわ」
「そうか、頼もしいな。じゃあ次の命令だ」
「なんなりと」
「じゃあ、これを」

俺はそう言って、アイテムボックスから握りこぶし程度の大きさの丸い透明な石を取り出す。
そして、それをスーリヤに手渡した。

「これは? 」
「一定の魔力量の保持者、又はそれに準ずる伸び代をもつ者に反応する石。検査機のようなものだ」
「こ、こんなものどこで? 」
「作った。複数の魔石を強引に連結させ、能力を付与したお手製だ」

なんとも出鱈目な事であるかは、既に自覚している。

魔石は1つの鉱石であるが、それをひとつの塊から外した時点で一つ一つが全て別物になる。
つまり、魔石を半分に割れば同じものが2個ではなく、全く別の魔石が2つという事になるのだ。

それとは別に、魔物から取れる石も魔石だ。
どちらも似たようなものでさほど差はないが、より強力な魔物の魔石ほど優秀である。

そのような性質を持ち合わせる魔石には、魔法を付与することが出来る。そして、それを魔道具と言う。

今回俺が作ったものは、その複数個に分けた魔石に能力を付与し、それを別ものとして連結する事で''複数の能力を干渉させ合い、ひとつの能力にする''ということをしている。

今回であれば、神官が主に使いステータスの確認に用いられる魔法''鑑定''と、指定した物事を正しく感知する魔法''判別''、光を放つ魔法''閃光''を組み合わせている。

鑑定以外は簡単な魔法だが、付与し、連結するとなると全くの別物といえる。

試しにできるかなと思ってやった結果、いとも簡単に出来てしまうこの力には本当に助けられている。

俺は、それらをスーリヤに説明した。
それを直ぐに理解出来たのは、さすが聡明なスーリヤである。

「ご主人様、本当にすごい」
「いや、そんな事ないよ」

そう、実際そんなことは無い。
俺が凄いのではなく、神が凄いのだから。あくまで俺は力を拝借しているまで。俺本来の力など、まるで無力なのだ。

「で、それを使ってどうするのですか? 」
「奴隷商に行って、男女問わずのそ石が光ったものを買ってきて欲しいんだ。数は、そうだな……15人ほど」
「それほどの奴隷をどうなさるので? 」
「魔法薬を造らせる」
「魔法薬ですか。分かりました、日中には済ませて参ります」
「うん、分かった」

走り去る馬車の中、スーリヤは静かに消えた。
スーリヤレベルであれば、転移魔法ごとき無詠唱で使えるのは当たり前だろう。

そんなこんなで、スーリヤが立ち去って直ぐに王宮へと着いた。

「アルト様、お待ちしておりました」

ネメスによって開かれた扉の先には、数人のメイドと執事が門の外にて出迎えていた。
その中には、昨日見送りに出ていたメイドの顔もあった。

「では、こちらへ」

メイドに連れられて、昨日と同じ応接室に案内された。
既に菓子が用意されており、焼きたてだったのか部屋には甘い香りが広がっていた、

随分と用意がいいな。

「では、お時間までこちらでおくつろぎ下さい」
「分かった」

メイドが退出する。
さて、この不思議な状況を何とかしようか。

菓子を用意しておくのは、時間が分かっていたなら何ら不思議なことでは無い。不思議なのは、この菓子の匂いだ。

普通、客に出す菓子はセオリーとして決まっている。

甘みが強く、香りが強いものだ。そして、その中には柑橘系の香りが含まれている。
理由は単純、柑橘系にはリフレッシュ効果のある香りがあるからだ。

だが、今日の部屋に充満するこの香りは、些か不純物が入っているように感じる。

微量の香りであれば気づかないだろうが、充満しているこの部屋には、少し違和感を覚えるくらいには差がある。

犯人は凡そ察しがつくが、さてどうしたものか。
謁見前に、無駄な騒ぎを起こすのは気が引けるのだか。

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