生きる喜びを教えてくれたのは異世界に転生した君でした
46.遺跡探索~入口~
「遺跡探索って、初めてだから緊張しちゃう」
リズは目の前に広がる人一人がやっと通れる穴を見て心境を語る。
ユウ達は今、ネロの指示により高難易度依頼である未開拓の遺跡探索に来ている。森の中、しかも地下に眠る遺跡。狩人が狩りの最中に偶然見つけた遺跡だ。その入り口は人の踏み入った形跡はなく、興味を唆られた狩人が数歩中に入ると、広大な空洞がその先に広がっていたらしい。ギルドに報告されている遺跡のどれにも該当していない未踏の遺跡だ。
『魔法道具もあるかもしれないから、お前ら行ってこい。未探索ならもしかしたら武器防具が手に入るかもしれないしな』
そんな軽い指示により、鍛錬兼探索だ。武器防具とは言っても、ユウとリズはすでに神から与えられている武具がある。敢えて何か欲しいかと問われれば、少し前の僕であればこの革鎧の代わりになるものと考えていたが、この革鎧もただの革鎧ではなく、エリーの目利きによれば恐らく神竜の革から作られた革鎧とのことで、超軽量で丈夫、かつ耐熱耐冷耐魔性能を有しているとのことだ。簡単には手に入らないような貴重な革鎧であることがわかれば大事にする他なかった。
そして未探索遺跡を前に、天翔ける竜には新顔がいた。
「オイラも! 今まで一人だったからこうしてみんなで冒険なんてなかったから」
切れ長の目と淡青の髪を有し、その頭には特徴的な角。竜族の少年、ルカだ。彼が犯した事は罪とは見做されず無事にお咎めなしとなり、その経緯から今は天翔ける竜の一員である。
「でも、広大な空洞ってだけで、遺跡かはわからないんじゃない?」
「可能性は高い。魔法都市は空にあっただけじゃなかったみたいだから」
「地下にもあるんだとしたら、まだ魔法都市は生きてたりして。私達が初の魔法都市の生き残りとの対面者になるかも?」
魔法都市は何百年も前に滅んでいる。空に浮かぶ魔法都市は原因不明の壊滅と共に地上へと落下した。地上にある魔法都市の遺跡の殆どは探索されており、目に見える場所にある遺跡で未探索なものはない。あるとすれば、相当いわくつきの遺跡であることは間違いない。
そんな中、こうして地下にあるかもしれない遺跡を見つけ、天翔ける竜一行の心持ちはその興奮に上向きだった。
空に浮かぶ魔法都市がそこだけで自給自足の生活をしていたとは思えない。であれば、地上との交易手段として目立たぬ場所に転移装置なりを持っていてもおかしくなかった。
「魔法都市の人達が生きているとして、平和的な人達ならいいんだけどね……」
「まぁ行ってみましょ。行けばわかるわ」
「リズ姉は猪みたいだね! まぁオイラも早く行きたいから気持ちわかるけどね!」
「猪みたいって……」
確かにリズはどちらかと言うと猪突猛進タイプだ。しかし、会って間もないルカに見抜かれるとはどれだけの猪オーラを醸し出していたのかと自身の振る舞いが気になってしまう。
「リズが僕達を引っ張ってくれる。その力強さには、いつも本当感謝してるんだ。ルカもそのうちわかるよ、リズの猪っぷりの凄さが」
「もう、ユウまで私を猪だなんて――」
失礼しちゃうわ、と言うリズを筆頭に天翔ける竜は洞窟へと足を踏み入れるのだった。
中に入るとすぐに光が届かなくなり、エリーの星魔法で宙空に光球を出して入り口から続く細い坂道を少し下っていく。
「きゃっ?!」
「リズ?!」
ユウの目の前にいたリズが突然可愛らしい悲鳴をあげる。何があったのかと思ってリズの肩口から前方を見ると、話に聞いていた通り、広大な空間が眼下に広がっている。光球の光はその空間全てに行き渡ってはおらず、かなりの空間であることが窺えると同時に、遺跡であることだけは間違いないということがわかった。明らかな人工物である建物の屋根や塔のようなものが、空間の中にわずかに見えていた。一行の歩いていた地上から続く小道は、その空間の中では小道とは呼べず、崖の壁面の出っ張りという感じだ。
「わっ。この高さは怖いね」
「で、でしょ?ユウ、先、お願いしていい?私、高いところはちょっと……」
「任せて」
一行は上下左右が壁に囲まれて落下の心配がない安全地帯まで少し下がると、リズはユウと身体を入れ替える。
もちろん、人一人がやっと通れる小道であるため、入れ替わる際の身体の密着は避けられない。リズの鎧に潰されながらも所々感じるリズの柔らかさを堪能しているとリズの視線がユウに突き刺さる。
「ユウ、こんなところで変なこと考えないで」
「は、はい、ごめんなさい」
こんなところじゃなかったらいいのかな、などとユウは思い至るが、今の状況でそんなことを言おうものならリズの視線が軽蔑に変わりそうだったので黙って無心を装い、リズと場所を入れ替わる。
「エ、エリー! オイラ達も順番変わ――」
「らない」
「うぅ……いいなユウ兄」
天翔ける竜は、女性メンバーが強いパーティだった。
リズは目の前に広がる人一人がやっと通れる穴を見て心境を語る。
ユウ達は今、ネロの指示により高難易度依頼である未開拓の遺跡探索に来ている。森の中、しかも地下に眠る遺跡。狩人が狩りの最中に偶然見つけた遺跡だ。その入り口は人の踏み入った形跡はなく、興味を唆られた狩人が数歩中に入ると、広大な空洞がその先に広がっていたらしい。ギルドに報告されている遺跡のどれにも該当していない未踏の遺跡だ。
『魔法道具もあるかもしれないから、お前ら行ってこい。未探索ならもしかしたら武器防具が手に入るかもしれないしな』
そんな軽い指示により、鍛錬兼探索だ。武器防具とは言っても、ユウとリズはすでに神から与えられている武具がある。敢えて何か欲しいかと問われれば、少し前の僕であればこの革鎧の代わりになるものと考えていたが、この革鎧もただの革鎧ではなく、エリーの目利きによれば恐らく神竜の革から作られた革鎧とのことで、超軽量で丈夫、かつ耐熱耐冷耐魔性能を有しているとのことだ。簡単には手に入らないような貴重な革鎧であることがわかれば大事にする他なかった。
そして未探索遺跡を前に、天翔ける竜には新顔がいた。
「オイラも! 今まで一人だったからこうしてみんなで冒険なんてなかったから」
切れ長の目と淡青の髪を有し、その頭には特徴的な角。竜族の少年、ルカだ。彼が犯した事は罪とは見做されず無事にお咎めなしとなり、その経緯から今は天翔ける竜の一員である。
「でも、広大な空洞ってだけで、遺跡かはわからないんじゃない?」
「可能性は高い。魔法都市は空にあっただけじゃなかったみたいだから」
「地下にもあるんだとしたら、まだ魔法都市は生きてたりして。私達が初の魔法都市の生き残りとの対面者になるかも?」
魔法都市は何百年も前に滅んでいる。空に浮かぶ魔法都市は原因不明の壊滅と共に地上へと落下した。地上にある魔法都市の遺跡の殆どは探索されており、目に見える場所にある遺跡で未探索なものはない。あるとすれば、相当いわくつきの遺跡であることは間違いない。
そんな中、こうして地下にあるかもしれない遺跡を見つけ、天翔ける竜一行の心持ちはその興奮に上向きだった。
空に浮かぶ魔法都市がそこだけで自給自足の生活をしていたとは思えない。であれば、地上との交易手段として目立たぬ場所に転移装置なりを持っていてもおかしくなかった。
「魔法都市の人達が生きているとして、平和的な人達ならいいんだけどね……」
「まぁ行ってみましょ。行けばわかるわ」
「リズ姉は猪みたいだね! まぁオイラも早く行きたいから気持ちわかるけどね!」
「猪みたいって……」
確かにリズはどちらかと言うと猪突猛進タイプだ。しかし、会って間もないルカに見抜かれるとはどれだけの猪オーラを醸し出していたのかと自身の振る舞いが気になってしまう。
「リズが僕達を引っ張ってくれる。その力強さには、いつも本当感謝してるんだ。ルカもそのうちわかるよ、リズの猪っぷりの凄さが」
「もう、ユウまで私を猪だなんて――」
失礼しちゃうわ、と言うリズを筆頭に天翔ける竜は洞窟へと足を踏み入れるのだった。
中に入るとすぐに光が届かなくなり、エリーの星魔法で宙空に光球を出して入り口から続く細い坂道を少し下っていく。
「きゃっ?!」
「リズ?!」
ユウの目の前にいたリズが突然可愛らしい悲鳴をあげる。何があったのかと思ってリズの肩口から前方を見ると、話に聞いていた通り、広大な空間が眼下に広がっている。光球の光はその空間全てに行き渡ってはおらず、かなりの空間であることが窺えると同時に、遺跡であることだけは間違いないということがわかった。明らかな人工物である建物の屋根や塔のようなものが、空間の中にわずかに見えていた。一行の歩いていた地上から続く小道は、その空間の中では小道とは呼べず、崖の壁面の出っ張りという感じだ。
「わっ。この高さは怖いね」
「で、でしょ?ユウ、先、お願いしていい?私、高いところはちょっと……」
「任せて」
一行は上下左右が壁に囲まれて落下の心配がない安全地帯まで少し下がると、リズはユウと身体を入れ替える。
もちろん、人一人がやっと通れる小道であるため、入れ替わる際の身体の密着は避けられない。リズの鎧に潰されながらも所々感じるリズの柔らかさを堪能しているとリズの視線がユウに突き刺さる。
「ユウ、こんなところで変なこと考えないで」
「は、はい、ごめんなさい」
こんなところじゃなかったらいいのかな、などとユウは思い至るが、今の状況でそんなことを言おうものならリズの視線が軽蔑に変わりそうだったので黙って無心を装い、リズと場所を入れ替わる。
「エ、エリー! オイラ達も順番変わ――」
「らない」
「うぅ……いいなユウ兄」
天翔ける竜は、女性メンバーが強いパーティだった。
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