つぎはぎの仮面で愛して

椎名


『トモ』の影はいつだって視界にちらついている。それだけ、同じ時を過ごしていたのだから。何を見ても、『トモ』へと繋がる欠片になるのだ。

 なんて、残酷で、甘美な呪いだろう。

「だから今さら一つも二つも変わらないの。あの子が優しくてひどい毒をくれた時から、覚悟はできてたから」

 口を閉ざした会計は、珍しく心の底から『わからない』と表情に表し困惑していた。
 副会長の仮面が『無表情』ならば、会計の仮面は『笑顔』だ。
 わからないふりと苦しくないふりがとても上手な、道化の仮面だ。

「告白してきなよ」

 立ち止まった彼に、『仮面』はなかった。

「『言わない』と『言えない』はね、ちがうんだよ。苦しさがちがう。『言わない』とね、いずれ『言えない』になるの。時間は無限じゃないよ。だから、楽しいんだろうけれど」

 始まりがあって、そしていずれ終わるとわかっているから、人は限られた時間を精一杯楽しもうと思える。
 それを教えてくれたのは、『トモ』だ。

「……でも、やっとくっついたところじゃん。あの二人」
「そうだね。会計はバカだから、弱った所に付け込むこともできたのにバカ正直に励ましちゃうだもん。ほんとバカだよねえ」
「そんなバカバカ言わなくても!」

 調子を取り戻した会計が、再び仮面を繕い出す。

 そうだよね。知らないふりすれば一時だけでも楽になれるよね。でもね、━━逃がしてなんかあげない。

「京ちゃん、いつものところにいるよ。たぶん、会長もいるよ」
「……っ」
「いってきなよ」

 数分の沈黙。━━折れたのは、彼だった。

「━━~ッあーっ、天使様からのお告げもあったことだし、一発玉砕してくるかなー!」

 生徒会室へ向かう途中だった足を反転させ、悔しそうに駆け抜けていく彼の姿に、今度こそ腹の底から笑い声を上げた。

 一つ目の呪いは色彩のなかった僕に命を吹き込んだ。
 二つ目の呪いは背負い続ける覚悟を持たせた。

 ━━『永遠に終わらない初恋』を刻んでいったトモも、『二度目の恋と初めての失恋』をさせたトモも、ほんとにひどいや。

 だから、今日も僕は彼のように笑って呪いの言葉を呟くのだ。



「やっぱり、『トモ』なんて、きらいだ」

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