つぎはぎの仮面で愛して

椎名


 人を観察するのが癖になった。
 きっかけは、驚くほど簡単で単純なこと。

「トモちーんっ!」
「トモちん言うなしー!」

 隣を歩いていた頭の軽い会計が、背後から掛けられた呼び声に反応し振り返る。

「あいっかわらずバ会計の周りにはバカっぽいのばっかり集まるよねえ。類友の説明にはバ会計の名前出しとけばいいねっ☆」
「ちょいちょい、しつれーっしょ書記ちゃん! なんだかんだでテストの点数いいのよ~? ボクちん」
「勉強はできる馬鹿、ていうタチの悪いのが世の中には存在するのですよ? バ会計くん」

 腹黒こえぇぇなんて大袈裟にリアクションを取っている会計に、天使と名高いにっこり笑顔をお見舞いしていると。

「やべー、トモちんウケる。まだ書記ちゃんにあだ名でですら呼ばれてないんだ。どんだけ嫌われてんの」

 全体的に笑いを含んだからかいの声がかけられて、一層笑みが深まった。

 ━━呼んでなんかやるもんか。トモと同じあだ名なんて。
 きらいだ。こんなやつ。

「そーなのよ。ほーんと書記ちゃんって冷たいよねー。はなちゃんとカイチョーにはおとなしいくせにさあ。天使な小悪魔様パネェっすわ」
「あれあれぇ? バ会計くんのお口は虚言癖があるのかなあ? うちに診察の予約入れとこうかあ? 今ならサービスでそこの君も一緒にしーっかり隅々まで調べてあげるねえ」
「「遠慮しますッ!!」」

 分が悪いと思ったのか、会計の友人は驚きのスピードで逃げていった。
 やだなあ、冗談なのに。

「もー、書記ちゃんったらあ」
「ぼくね、呪われてるんだあ」
「はえ?」

 会計の言葉を遮ってまでこぼれたそれは、僕の覚悟そのものだった。

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