トリック・スターの何でも屋~その願い叶えましょう~

鈴木颯手

完了!はじめての依頼

    「さて、これはどうしたもんか」
    トリック・スターは頭をかきながら目の前で眠る少女を見ていた。
    場所はトリックの私室。あれから30分がたっていた。
    「起きないな」
    少女はいまだに眠り続けている。
    「仕方ねぇ、そろそろ昼だし飯でも作るか」
    そう呟くと部屋から出ていった。
















    う、う~ん。私はいったい何をしていたのでしょう?そしてここはどこでしょうか?
    目を覚ましたらトリックさんのお店ではなくどこかのお部屋のようです。いつの間にここへ来たのでしょうか?
    そう考えていたとき部屋の扉が開きました。きっとここの部屋の人なのでしょう。
    「あっ、起きたんだ。大丈夫?」
    そこにいたのはトリック・スターさんでした。どうやらここはトリックさんのお部屋のようです。そのトリックさんはスープの入った器をトレーにのせて持ってきていました。トリックさんのお昼ご飯でしょうか?
    トリックさんはそのトレーを私の寝ているベットの近くにあるテーブルに乗せて椅子に腰かけました。
    「いきなり気絶したから心配したんだよ?どこか具合が悪いところはない?」
    どうやらかなり心配をかけてしまったようです。何から何までトリックさんに迷惑をかけてばかりです。
    「あ、ありがとうございます。それに具合が悪いところはないです。ご心配をかけてすみません」
    私は心から謝ります。これはお母さんがいっていたことですが相手に迷惑を掛けたら心を込めて謝罪と感謝しないといけないそうです。
    「いや、大丈夫だよ。それより俺に用があるって言ってたけどそれは大丈夫なの?」
    そうです!忘れていました。お母さんの病気を直してほしいのでした。
    「あ、あの実はお母さんが病気でお医者様に見てもらっても原因がわからず日に日に弱っていくのを見ていることしかできませんでした」
    「そこで何か効き目のある薬がないかここに来たって訳か」
    途中から言いたいことを言われてしまいました。でも私の言いたいことを分かってくれたようです。
    「…よし!丁度いい薬があるからすぐにでもいこう!」
    「あ、ありがとうございます。で、でもこれは…」
    私の指差す方向にはテーブルにおかれたスープがあります。先程トリックさんが持ってきたものです。
    「あ~、忘れてたな。それは君のぶんだ。食べるといい」
    私は驚きました。まさか私の食事を用意してくれるとは思っていなかったのです。
    「君は見たところ俺と同い年くらいだ。だが、歳の割には体重が軽い。普段余りいいものを食べていないのだろう?」
    「…」
    私は驚きの連続です。流石にそこまで知られると怖くなります。
    確かにトリックさんの言うとおり私は普段栄養のある食べ物は食べていません。もともと私の家は貧しかったのですが、お母さんが病気で臥せってからはお金は入ってきません。そのせいでお医者様の所に行っても満足な治療ができないのです。
    「遠慮しないで食べていいよ。それは依頼とは別の親切さ」
    そう言ってトリックさんは部屋を出ていきました。
    私はテーブルの上におかれたスープを見ていました。お母さんが病気で今も苦しんでいるのに私だけこんなことをしていていいのでしょうか?そんな思いが心に響きます。
    しかし、突然お腹がなってしまいました。恥ずかしかったですが幸いなことにトリックさんは既に部屋から出ています。
    「…いただきます」
    私はスープをいただくことにしました。
    そのスープはとても温かく、心が落ち着きました。

















    その後トリックさんは約束通り私の家にいってお母さんの病気を直してくれました。
    これにはお母さんや近所の方も驚いていました。
    何て言ったってお医者様が直せないといった病気を直してくれたのですから。
    そしてトリックさんのお店は行列ができるほど賑わっているらしいです。
    私はトリックさんのお店が落ち着いてからお礼に向かうつもりです。
「完了!はじめての依頼!」完

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