ドラゴン転生 龍帝誕生記(休載)

鈴木颯手

第弐拾話 侵略3

マグサ王国のスクラ領に侵攻したカールス中将率いる侵攻部隊は順調に各都市及び村を落としていった。既にスクラ領の半分以上は落とされているだろう。
そんな状態になってしまった辺境領主のスクラ・マッカーラーは直ぐに王室に連絡したが王室の返答はひどいものであった。
『援軍を送ることはできない。かといって撤退も許さないし降伏も許さない。少しでも時を稼ぐように』
この返答にスクラは絶望した。只でさえ既に半分以上は落とされているのに防ぎきれるはずがなかった。
しかし、王室のこのような返答には訳があった。
カールス中将の主力部隊がイガル山脈を抜ける少し前に海よりカウスマン帝国が侵攻してきたのだ。マグサ王国にとっても沿岸部は重要なため直ぐに艦隊を派遣するも全線撃滅してしまったのだ。更にフソウ皇国も侵攻してきて南西側の沿岸部は壊滅的打撃を受けてしまったのだ。
兵力がそこまでないマグサ王国はイガル山脈を越えてきたものは陽動と判断してスクラ領を捨て駒にして沿岸部奪還を目指したのだ。
何はともあれ絶望したスクラはこれより一時間後にカールス中将に降伏するのである。


















「スクラ・マッカーラーが降伏しただと!?」
マグサ王国国王のミネルバ・マグサはスクラの降伏に激怒していた。
ミネルバ・マグサは最近父から王位を譲り受けたが百年龍討伐で国力を失ったことにより人望は低かった。
「カウスマン帝国はスクラ領を完全に併合。今は進軍を停止しています」
「その代わりに海より攻めてきたカウスマン帝国及びフソウ皇国が上陸して沿岸部を併合されています」
「メルクス朝から援軍は来ないのか?」
ミネルバは重臣達にそのように声をかけた。
メルクス朝サクテルミーニはマグサ王国の東側に位置する国で東西に横長の領地を持っている。そしてメルクス朝サクテルミーニはフソウ皇国の同盟国家だったベルテルミーニ帝国を滅ぼした国でもある。結果フソウ皇国と敵対しておりフソウ皇国の同盟国家であるカウスマン帝国に対抗するためにメルクス朝とは同盟を結んでいた。
「メルクス朝からの使者の話ではフソウ皇国の船に沿岸部の圧力を受けており兵を出す余裕がないとのこと」
そしてメルクス朝という頼みの綱が消えた瞬間だった。
「ケリフト教皇はどうだ?カウスマン帝国に停戦の呼び掛けを」
「恐らくカウスマン帝国は止まりません。前年ケリフト教皇のいらっしゃるアルテミラ共和国から領地を奪っています」
ケリフト教皇のいるアルテミラ共和国は紀元前から存在している大国家である。一時期は帝国を名乗り西世界の代表格になっていたが今ではその当時の勢いはないがそれでも大国家に変わりはなかった。
「北東のモルクス共和国はカウスマン帝国と講和しているため当てになりません」
「ガリア連邦はどうだ?ブルタンイングラッド帝国も」
「両者は互いに中が悪くどちらかが援軍を寄越せば片方が妨害してきます。それに両者共に距離があります。たとえ援軍が来ても海にはフソウ皇国がいます」
世界最強の艦隊を持つフソウ皇国をガリア連邦はともかくブルタンイングラッド帝国が勝てるとは思えなかった。更に言えばガリア連邦はアルテミラ共和国と長年争ってきた仲のためガリア連邦に援軍を頼んでも陸が使えずブルタンイングラッド帝国に援軍を頼んでもガリア連邦が通さないということになっていた。
「南方諸国は今回は静観しています…と言いたいのですが一部の国家はフソウ皇国の支援に回ってます」
それは予想できたことであった。
フソウ皇国海軍の出没範囲はとても広い。その範囲は南方諸国のある半島と魔人大陸の海峡を超えてマグサ王国付近まであった。そのため南方諸国の一部とは有効な関係を築いていたのだ。
「…分かった。とにかく今は侵略してきたやつらを追い出すのが先決。急ぎ兵を集めよ」

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