魔物を作って軍団を編成して挑むは世界侵略!

鈴木颯手

第十話

ヨ・ルムンガルドの魔法により即死したギギギャは不思議な空間にいた。
あの時、確かに死んだと感じられるほどの威力を見に受けたはずで今頃意識は既にないと思っていたが意識ははっきりしていた。
ここは何処なのか?知能が低いが幾度となく考えないといけない場面に陥ってきたためにゴブリンの中でも知能は高い方にあった。
尤も、ゴブリンキングやハイランクゴブリンを除けばゴブリンの知能などたかが知れているが。
ギギギャは回りを見回すが何やら黒い泥のようなもので囲まれていた。ギギギャは近づこうとするが脚は泥に埋まっておりどんなに力を入れても動くことは出来なかった。
「これでは何も出来ないな」
思わず呟くがそれを聞いているものはいない。
取り合えず何かしなくては、と考えたとき周囲に変化があった。
泥が頭に落ちてきた。
「グッ!?」
その泥は頭の中に入っていくのがわかったが振り払おうとしても別の泥が落ちてきた。
「くそ!何なんだ!?」
あまりのことに悪態をつくがやがて声が聞こえてくる。
低い声、高い声、呂律の回らない声、人の発するものではないような声。様々な声が聞こえてくる。
[屈せよ]
[我らが主にそのみをささげよ]
[ワレラハコマ。アルジノタメニツクスコマナリ]
[貴様は選ばれた]
[□◇△!屈せよ!◽※@%\$▽◇△ゑ〃さすれば最強の力を得ることが出来る]
[至高の御方に忠誠を!]
声はいっぺんに喋るため永遠と思えるほどに聞こえてくる。それと同時に心を何かが蝕む感覚に襲われた。まるで自分の意思が消えてそこに別の何かが入り込んだような、そんな不思議な感覚だ。
「ふ、ふざけるな!俺はそんなものは求めていない」
力を盾にゴブリンキングは多数のゴブリンを従えてきた。従わされてきたギギギャは力そのものにあまりいい思いを抱いてはいない。
[我らの意思に従え]
[それが至高の御方に仕えるものとしての責務なり]
[ハンコウハユルサレナイ]
「グァァァァァ!」
付け足されるように声が聞こえ、先程よりも蝕む勢いが増えてきた。その勢いはすさまじくギギギャはもうろうとする意識を無理矢理奮い立たせている状態であった。
「(ここまで…なのか?)」
薄れゆく意識の中でギギギャは自身の半生を振り替える。
ギギギャは今は亡きとある部族に支えた戦士であった。
親友のグギャギャと力を高め会う生活を送っていたがそんな生活も唐突に終わりを告げた。ゴブリンキングが統一戦争を起こし最後まで抵抗したギギギャの部族は統一戦争末期に滅ぼされた。ギギギャ、グギャギャと数名を残し統一戦争開始前までには百は越えていた部族はゴブリンキングの軍勢によって殺されてしまった。
ギギギャ、グギャギャはその類いまれなる武力を買われゴブリンキングの末端として行き長らえたが最後まで抵抗した部族の二人は冷遇されてきた。
そして謎の大蛇に殺され今なお訳の分からない目に遭っている。
「…ふざけるな」
そこまで振り返り浮かび上がって来たのは怒り。
「俺は!こんなところで死んでたまるか!」
ギギギャは力を四肢に込めていき一気に解放する。
しかし、それでも抜け出せない。
[無駄な抵抗はやめよ]
[我らの意思に従え。さすれば絶大なる力を得られる]
「そんなものに興味はない!俺は!ゴブリン最強の部族に仕える戦士!貴様らに俺の意思は渡さん!」
再びギギギャは力を込めていく。すると確かな感触があった。
[馬鹿な!?我らの意思に反抗するだと!?]
[アリエナイ。ワレラハシコウノオカタノマホウヲエンカツニススメテキタダケナノニ]
慌てる声が聞こえてくるがギギギャは力を込めて泥から脱出していく。
[◇△ゑ◯ゑ〃□:@&;:@(我らの意思に反するか)。◇△@ゑ(勿体無い)。◇△@ゑ%(勿体無いぞ)。◯◇△ゐヰ〆%:¥(やはり御主こそ至高の御方に仕えるに値するものだ)]
[なればこそ我々に従うべきだ]
[今の貴様では自身の意思と至高の御方によって作り替えられた肉体の誤差が出てくる]
[その時貴様では耐えることは難しい]
[シコウノオカタノノマリョクデデキタモンスタートナッタオヌシデハシコウノオカタノニハンコウスルヤモシレナイ。ソレデハホンマツテントウトイウモノ]
[それでも至高の御方なら誤差と考えるやも知れない]
[なればここは見守るのが適切か]
声は何かを伝えてきたがそのほとんどがギギギャでは分からなかった。ただ分かったことは先程まで起きていた蝕む感覚は無くなったことだ。
[ギギギャ。御主は一度死に至高の御方によって生まれ変わった]
[至高の御方の作りしモンスターは至高の御方に絶対の忠誠を誓う]
[オヌシモレイガイデハナイ。ソコニオヌシノイシハカンケイナイ]
[貴様ではその事に耐えることが出来ずに死に瀕するやも知れない]
[御主にその覚悟があるか?]
声の問にギギギャの言うことは決まっている。気づけば回りには泥ひとつなくただ黒い世界が広がっていた。
「俺はゴブリン最強の戦士!覚悟なら既に出来ている」
ギギギャは勇ましく言うが知能が低いギギギャは声の言葉を理解していない。だが、覚悟ならゴブリンキングの軍勢に挑んだときからできていた。
[ならばその意思を持って至高の御方を支えるがよい]
声がそういうと同時に世界が反転した。


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