異世界日本の作り方

鈴木颯手

第弐話 少女、そして山賊

私の住む村があるところは小さな村がお互いに争っている地域です。
昔は一つの国としてまとまっていたそうなのですが今では村々で争っています。
私の住む村はこの辺ではあまり大きな村ではありません。その日その日を生きる事で手一杯の村です。しかし、それも今では昔のことです。
ある時私の住む村は山賊に襲われました。数は二十人ほどで村で戦える人数に比べれば大したことはなかったのですがいきなり襲われた事もありあっという間に村長は殺され村は山賊に占領されました。
その日から地獄が始まりました。
山賊は毎日大量に食べ物を奪い無理矢理大人の女性を奪った村長の家に連れて行きます。
飢え死にする人も増えて南にある森から食べ物を見つけないと生きていけないまでになりました。
農業が出来ない私は家で大人しくしているようにお父さんとお母さんに言われたけど私もお手伝いがしたくて黙って籠を持って森に出かけました。
でも予想以上に空腹だった私は森と村の中間ほどで倒れてしまいました。
私このまま死んじゃうのかな?
そう思いながら私は意識を失いました。

















「…ぱり…放…ない…」
「でも…追われ…?」
何だろう話し声が聞こえる。そう思って目を開けると見知らぬ人達がいました。私よりも大きい男の人と女の人は目を醒ました私に気付いたのかこちらを見ます。
「良かった。目が覚めたんだね」
「あ、あの…」
「どこか痛む所はないか?」
「い、いえ。大丈夫です」
男の人はそれを聞くと安心したようにうなずいて頭を撫でできます。男の人はまるで神様のような私や村の人とは違う何かを感じますが微笑む顔はお父さんに撫でられているような安心感を覚えます。
戸惑う私に男の人は「ああ、ゴメン」と言って頭から手を離します。少し名残惜しかったのですが我慢します。
「そう言えば陛下、この娘は日本語を喋っている様ですね」
「確かにそうだな」
女の人は男の人を陛下と呼びましたけどどこかの王様なのかな?それより日本語?
「君、えっと名前は…」
男の人は私の名前が分からなくて困っている様でした。そう言えば言ってなかったな。
「レナと言います」
「レナちゃんか。ここって何処かわかる?」
ここ?そう言えばお父さんが昔話してくれたなぁ。
「えっと、確かここはムサシと呼ばれている大陸です」
ムサシと言った時二人ともピクリと反応したけどどうしたのかな?
「…ゴメン、逆に聞くけど日本って言う国知ってる?」
二ホン?聞いた事ないなぁ。
私はそう思って首を横に振ると男の人は他にもいろいろな国を言いますがアメリカもイギリスも聞いた事はないです。
「それじゃあ君が住んでるところは何処の国か分かる?」
「あの、この辺に国はありませんよ?」
ずっと北に行けば国がるってお父さんが言ってたけどこの辺は小さな村が争っているから国はない。
その事を話すと男の人と女の人は真剣な表情になって何かを話します。ここから出はよく聞き取れませんが異世界とかパラレル何とかとか聞こえて来ます。
その時私のお中からクゥとなりました。男の人と女の人はこちらを見ます。うぅ、恥ずかしいです。
「はは、ちょっと待っててね。今友人が森で食べれるものを探しているから」
男の人が微笑みながらそう言います。その時森の方から「陛下ぁ」と聞こえて来ます。
男の人が手を振ってこたえています。今言ってた友人の人かな?























「そうですか。まさか異世界とは」
少女から聞いた話を纏めて森で食材を集めていた良太と健吾に話す。
「とは言えまだ可能性の話だ。単純にこの娘の村がどこにも所属してないだけかもしれない」
「だけど今時そんな村はないよな。国に属してない地域なんて北極か南極しかないだろうしやはり異世界の可能性があるって事か」
暮仁達は現代人らしくラノベをよく読み異世界についても何となく理解しているがまさか実体験するとは思っていなかった。
「とにかく今は腹ごしらえをしちゃいましょう」
そう言って良太と健吾は色々な木の実を出してきた。
「全部食えると思われる奴のみで試食済みですので安心して食べてください」
良太はそう言いつつ木の実を食べ始める。暮仁もそれに合わせて食べる。口の中に甘い味が広がった。
木の実は山盛りあったが皆空腹と言う事もありすぐに無くなってしまった。それでも腹は膨れる事が出来た。
「さて、さっそく出悪いけどレナちゃんの村に行ってもいいかな?」
このままではいけない為レナに暮仁は聞くが途端にレナは表情を暗くした。
「どうかしたのか?」
「じ、実は」
レナは話した。山賊に村が占領されている事。その日を生きるのに必死な事。親に黙って木の実取りをしようとしたところを倒れて暮仁に助けてもらった事を。
話しを聞いた暮人達は真剣な表情となる。
「これでは不味いな。恐らくこのままでは村は滅びる」
「山賊はイナゴみたいなもんだろうしな」
村を襲いその村のものを奪い奪い尽くせば他の村に。そうやって生きているのだろう。
「だが二十人となると俺達ではどうすることも出来ないな」
各個撃破すれば何とかなるかもしれないがさすがに山賊もその時には気づくだろう。そうなれば村人に死者が出る可能性もあった。
「…レナちゃん。俺達が村に密かにはいる事は可能か?」
「た、多分できると思います。基本的に山賊は村長の家に集まっているので」
「村人はおそって来ないと油断している可能性があるな」
よし、と暮仁は立ち上がる。
「早速村の解放に向かうぞ」






















『日本皇国はたった一つの村から始まった。山賊に占領されている村を救うために行動しなかったら今の皇国はもっと別の形になっていたのかもしれない。それがいいのか悪いのか私では判断できない。しかし、現代まで受け継がれている困っている人を助けると言う行為はこの時から始まったのかもしれない』(日本皇国とある政治家より)

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