異世界転生~神に気に入られた彼はミリタリーで異世界に日の丸を掲げる~

鈴木颯手

第四十四話 防壁

Asaka Side
 私は元大陸総督府の一室にてシアーリス半島にいる日本帝国の有力者を集めた。全員が集まった事を確認して私は会議に開始を宣言した。議題は半島の防衛計画の作成です。

「朝霞大将、やはりこの険しい山岳を利用した陣地形成が無難かと思います」
「私も賛成です」
「私も」

 一人の佐官の言葉に賛成の言葉が出る。私としても反対する理由はなかったが一応反対というか懸念も出ました。

「ですが、それだと我々の技術がガルムンド帝国に露見する事になりませんか? 山岳部を利用するという事は国境部に近づく事になります」

 その言葉に私は納得します。確かに佐官の言葉だとガルムンド帝国との国境に大きく近づきます。重機を使って短時間で作るため我らの作業はガルムンド帝国には丸見えになります。その懸念を抱えている者も複数いる様でこちらを見てきます。
 ですが、その答えは既に閣下から貰っています。

「それに関しては既に閣下から答えを貰っています。”上陸戦で揚陸艦隊を用いた以上ガルムンド帝国にこちらの技術が露見している可能性が高い。今更秘匿するよりも防御性能を考えよ”との事です。その為、ありとあらゆる重機を用いて最短で終わらせます」
「成程、分かりました。でしたら私はこの案に賛成します」

 懸念を示した者も納得して引き下がった。その後、いろいろな案が出たが結局最初の案を用いる事になった。今回作る陣地はガルムンド帝国の侵入を防ぐ目的のものだ。その為、塹壕よりも城壁のようなものを作る必要があります。

「防壁は5メートルにしましょう。その後方に砲撃陣地を作り防壁の前には堀を作りましょう」
「それを二重に作る、余裕があるのなら第三、第四と制作する。……とてもじゃないが二つ作るだけで精一杯かもしれないな」
「ガルムンド帝国が何時侵攻してくるのか? それとも攻める気はないのか分からないからな」
「だが、備えは必要だろう。仕方ないとは言え逃げようとする使者を殺そうとする程だ」

 参加者達は様々な案を話し合いながら意見を纏めていきます。結果、防壁は二重に作りそれ以外の防壁は完成後に随時行っていくと決められました。

「それと、近いうちに閣下がこの半島にいらっしゃいます。ラーシィに聯合艦隊用の軍港を作るそうです」
「……今更だが閣下に作ってもらう訳にはいかないのか?」

 私の言葉にふと、一人の佐官がその様な事を言ってきました。確かに、彼の言う通り閣下の能力を用いれば簡単に出来るでしょう。閣下はそれだけの能力を有しています。私にも閣下の能力の全貌を知っているわけではありません。ですが、私にとって閣下は神にも等しい方です。私を含む多くの臣民を生み出し、何もない所から様々な物を作り出す事が出来ます。
 ですが、閣下の能力は魔力という物を使うようで連発はできません。臣民一人を作るだけで空になってしまう程だそうです。食料などの消耗品ならともかくそれ以外はあまり頼むわけにはいきません。軍港の件だって半島に一つは会った方が良いと判断したからです。

「閣下の力には限りはあります。それに、閣下の能力に頼りきりになるのは日本帝国の破滅を招きかねません。我らで出来る事は出来るだけ我らだけでやるべきです」
「ですが、日本帝国の総兵力は約二万、この半島には八千程しかいません。本来ならパララルカ王国にすら劣っている兵数何ですよ。それなのにパララルカ王国を超える大国という事は動員兵力は予想もつきません」
「それは分かっています。我らは急速に成長しすぎているという自覚はあります」

 日本帝国は急成長をした結果、ありとあらゆる物が足りていない。閣下の生み出す物資に頼りきりになっている現状では閣下への負担が大きすぎます。日本帝国とは”急速に成長した新興国”ではなく”たった一人の能力に依存する中身スカスカの張りぼて国家”と言う評価が正しいです。

「取り敢えず、計画に沿ってすぐに行動しましょう。この一分一秒がもったいないです」
「そうだな、閣下の負担を減らすのも我らの役目だ」
「張りぼてなら今からでも中身を作ればいいだけだしな!」
「俺たちで出来る事をやっていこう!」

  私の言葉に参加者達はやる気を出していく。この調子なら何とか行けそうですね。……他の国々ならパララルカ王国の国民を徴兵するなりして兵力増強をするのでしょうが我らの扱う兵器はその辺の一般人を徴兵した者達では扱う事は難しいでしょう。軍学校もすぐには育ったりはしません。
 軍学校に入るパララルカ王国の元国民も多いようですが忠誠心がどれだけあるかは分かりませんがそちらにも気を付けるべきでしょうか。
 はぁ、せめてガルムンド帝国がすぐに攻めて来ない事を祈るしかないですね。

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