異世界転生~神に気に入られた彼はミリタリーで異世界に日の丸を掲げる~

鈴木颯手

第十九話 パララルカ王国殲滅戦3

NO Side
「…酷いな」

二万の軍勢を見たアクラはそう評した。二万の軍勢のほとんどが平民であり騎士と思われるものは隊長格を除き一人としていなかった。

平民の兵士についても士気は低く見た限り死んだ魚のような眼をしていた。既にこの国に未来を見いだせないでいるようだ。

「この有様では勝てる戦も勝てない。全員整列させよ」

アクラは台座の上に立つと息を吸い込み一気に放つ。

「全!軍!注目せよ!」

心言響くアクラの言葉に兵士たちはアクラの方を向く。

「此度の戦、勝つのは難しい!最悪死体すら残されないほど厳しい戦となろう!」

アクラのその言葉に兵士たちの指揮はさらに下がるがアクラは続けた。

「これから向かう先は各都市だ!そこの軍勢を吸収する!…本来であればこのような戦に駆り立てたくはなかった。町に住み、商売をして買い物をして、平和に暮らせるはずだった。だが!私たちの不甲斐ないばかりに君たちを戦場へ送らねばならない!そのことは本当に申し訳ない!」

アクラはそう言うと頭を下げる。その行為に平民のみならず一部いた騎士も驚く。自分より身分が高いものに頭を下げるのであればともかく明らかに自分より身分の低い自分たちに誤り頭を下げているのだ。

「…しかし!今この国にはそれを脅かす危険が迫っている!既にわが軍の多くは敵の攻撃によりやられている!確かに敵の力は強大であるがだからと言って敵との戦いから目を逸らす事は出来ない!」

アクラの言葉にこの場にいる誰もが耳を傾け彼女の目を見る。

「諸君らの中には家族がいる者もいるだろう!私とて大事な父がいる!私がこの場に立っているのもその為だ!そう!大事な家族を!友を!守りたいがためである!」

アクラの言葉にハッとする者がいた。彼らにも愛する家族が居り彼らの無事の帰還を待ち望んでいるのだ。彼らの心に灯がともり始める。国の為でも、王の為でもない。大切なモノを守り抜くという意志は彼らの諦めかけていた心をよみがえらせた。

「私と共に!大切な人たちを守りたいと思う者は共に来い!」
「「「うおぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」

アクラの言葉を受けて二万の兵は雄たけびを上げたが、とうの本人は内心ため息をつく。

「(五年前のあれは日本帝国のものだった。あの時でさえ我らの被害は大きかった。いくら敵が進行中だとは言えこちらも全滅する可能性がある。それでも、この兵で何とかしないといけないのか……)」

質は最悪、練度も最低。士気は高いが連携は出来ない。対する敵は精強な騎士すら倒す事の出来る道の軍勢一万。唯一高い士気も敵と接敵すればすぐに瓦解する可能性があるなとアクラは冷静に分析する。

そうしている間にも進軍の準備は進みアクラを総指揮官とする二万の軍勢は王都を出発し南下してくる日本帝国を迎え撃とうとするのだった。














Ryouta Side
遂にアルバ島統一作戦、と言うかパララルカ王国殲滅戦が始まった。既に聯合艦隊の攻撃機部隊によって内陸や沿岸の基地を攻撃している。生き残った兵も南下する一万の兵によって止めをさしていく。降伏する者は武装解除させたのちに北に向かわせている。従わない者は殺していっている為最初のうちは良くいた反抗的な者もすぐにいなくなったようだ。一万の兵とは言っても相手はそれ以上の兵を未だ有している。そんな奴を相手するのに捕虜の抵抗なんてあってほしくはないからな。捕虜だって必ず必要なわけではないのだ。時には全滅させた方が楽な時だってあるだろう。

「総統!パララルカ王国王都より凡そ二万の軍勢が北上を開始しました。詳しくは分かりませんが平民主体の軍との事です」

「分かった」

通信兵の言葉を聞き俺は目の前の地図に目を通す。うちの軍勢は元無法地帯を通過した頃だろうか。そろそろ聯合艦隊の支援も出来ない状況になるから彼らだけで対処してもらう事になるな。この日の為に様々な準備を行ってきたがそれでも不安はある。90式戦車を10両配備しているがたかだが10両では数の前に負ける可能性がある。とは言え戦車に接近できるほどうちの軍隊が近づけるとは思えないけどな。野砲だってあるし銃だって最新式の物だ。彼らも召喚してから練度を上げてきて皆一流の兵だと俺は思っている。

それでも心配になってしまうのは総人口の約半数が出撃しているせいかもしれないな。

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