異世界帝国戦記

鈴木颯手

第二話 転移

「…転移ですか」
金橋総理大臣は海軍からの報告からそのように推察した。
総理の名を受けて調査を開始した海軍は日本領から先が全く別の世界になっていることを突き止めた。
まず、北方には本来あるはずのカムチャッカ半島などのロシア領が存在せず中国、モンゴル国境の先は海が広がっているだけであった。さらに南方にはフィリピンがなく代わりに本土と小笠原諸島の間に四国と同等の島がいくつか発見されており今は調査団が調べていた。
この報告を受けてよくあるファンタジーのような状況と推察して日本が何処か知らない場所に転移したと思われた。
「これは国民に伝えるしかないですね」
金橋総理はすぐさま記者会見を行い現状の報告をした。
「…よって我々は現在どこか知らぬ場所に転移したと思われます」
「総理!地球ではないのですか!?」
「地球には存在していない植物が近くにある島で発見されております」
「総理!これからの方針はどうなるのですか!?」
「各方面に軍を派遣しつつこの世界について詳しく調べるために既に各方面へと調査を行っています。従って国民の皆様には政府に多大なる支援を…」
総理からの記者会見はその後も熱中し、会見が終了したのはだいぶ先の事であった。

















中央大海洋暦1543年世界の中央に存在する巨大な海は長年制覇する存在が現れなかった。その事に目を付けたのが中央アシアに領土を持つバールチナ共和国である。中央大海洋の覇者となるために領土を広げたバールチナ共和国は遂に中央アシア中部から北部にかけて制服を完了し念願だった中央大海洋に海軍を派遣しようとしていた。
「中々壮観な眺めですな」
眼下に広がるバールチナ艦隊を見ながらそうつぶやいたのは共和国防衛大臣のフルール・ベントナーである。今年で五十を迎えるもその眼光はすさまじく睨みつけられたら大抵の人間は恐怖に包まれるだろう。
「中央大海洋の覇者と成るべく領土拡張を続けて既に十年が経った。これまでは大した敵もおらず順調に進んだがこれからもそうであるとは限らない。だが、そのような脅威は中央大海洋には存在していない」
共和国大統領ハルッセ・カーランである。
「…唯一の懸念はドルーガ王国であるが」
「そこはすでに手を打ってあります。ドルーガ大陸の東側に存在するドットル島を最前線にします。あそこはかなりの防衛陣地を築いているため問題なく撃退できます」
「そうか。それを聞いて安心したよ」
「大統領。出撃準備が整いました。出陣式をお願いします」
そこへ兵士から準備が整ったと報告が来たため大統領とフルールは出陣式の舞台へと歩みを進めるのであった。

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