魔帝國戦記~ムーアシア大陸編~

鈴木颯手

16・マーシャル連邦侵略戦争~滅亡と逃亡、会議~

国境都市の太守が王都方面の扉を抑えられたと報告を受けたのは大分経ってからの事であった。既に町は火で包まれつつありあちこちから怒声や悲鳴が聞こえており戦況が如何なっているのかは太守がいる城から出は全く分からなかった。
「いったいどうなっているのだ!この軍勢は何処から来たのだ!」
「恐らく陛下が仰っていた異形の化け物と思われます!」
「くそっ!まさかこんなにも早いとはな!兵の準備は如何なっている!?」
「奇襲を受けたため今だ揃っておりません!現在はこの城にいる三百の兵のみです…」
その報告に太守は兵を招集すれば良かったと後悔するも今更では遅いので急いで兵に守りを固めさせる。国境都市はプローア王国に対抗するためにかなりの防御力を持っているためそう簡単に落ちるとは思えなかった。
「急ぎ城の守りを固めよ!固め次第都市に散らばる兵をかき集め反撃に転じるぞ!」
「はっ!」
「それと陛下にもこの事を知らせよ!」
「そ、それが」
「どうした!?」
「陛下のお姿が、見えません!」
「なっ!?」
この報告には敵の襲来以上に衝撃を受ける。この都市を任されているとは言え所詮はハッドウ王国の一部でしかない。その国の王がいなくなったというのはハッドウ王国の滅亡すらあり得たのだ。現在国王であるディートヘルム以外に王を継げる人物はおらずディートヘルムが死ねばハッドウ王国は事実上消滅するのである。
「捜せ!何としても探し出すのだ!決して敵に討たせてはならんぞ!」
「申し上げます!新たに敵が現れました!その数約千五百!」
「何!?」
太守はさらなる驚愕で顔を歪めた。




















「…ハッドウ王国も終わりか…」
国境都市から程近く、プローア王国に唯一通じるムーアシア山脈の山道にディートヘルムはいた。ディートヘルムは燃えゆく国境都市を見つめながら呟く。
彼は襲撃がある前に太守の話を聞いており国境都市も持たないと判断。持てる限りの金とみずほらしい、旅人にしか見えない服装に着替えるとひっそりと街を抜け出してプローア王国に逃げようとしていたのである。
そして彼の予想は的中し彼が逃げてから少しして国境都市は襲撃を受け更には敵の本隊と思われる部隊が到着して国境都市は火に包まれたのだ。
「我が王国が一瞬で滅びようとは…。いずれこの借り、返してくれる!」
ディートヘルムは憤怒の形相で国境都市、そこで虐殺の限りを尽くす化け物たちに向かって叫ぶ。手は血が出るほど握り締め禍々しいオーラを吐きだしながら彼は復讐を誓うとプローア王国に向けて足を進めるのであった。
その後ろでは火に包まれ崩れ落ちる太守の城があるのであった。




















国境都市への襲撃から一夜が明けギル達は戦後処理という名の捕虜である女性への凌辱を行っていた。中にはギルに命じられて死体の処理や生き残った男性を奴隷にして街の復興を行わせてその監視を行っていたが大多数は欲望のままに行動していた。
その中で少数派のギルは幹部とともに今後の方針を話し合っていた。尚、話し合っているのはギル、ボブゴブリンとその副官二名のみである。しかし、テレパシーを用いてゴブリンキング、山本拓哉も参加していた。アルビーナは距離の問題で参加はしていないが。
「調べた限りではこの山脈の先はプローア王国と呼ばれる国へと続いている様です」
『確かマーシャル連邦に連勝している国だったな?』
「はい、調べた限りではゴブリンでも余裕で勝てるとは思いますが断言は出来ません」
「残念ナガラプローア王国ニツイテノ情報ハアマリ手ニ入リマセンデシタ。国境都市ノ城ガ燃エテシマッタノガ痛イデスネ」
「生き残りの住人に聞くところによるとプローア王国は年に数回、多い時は一月に一回は山脈を超えて略奪目的で攻めてくるようです。最後に攻めてきたのは一月前とのことですぐには攻めてこないと思いますが…」
『成程…分かった。ギルは一旦ウィティリックまで引き、残りのマーシャル王国の都市を攻めてくれ。そろそろ異変に気付いて兵を出して来ると思われるからな。ボブゴブリンはそのまま国境都市の防衛と維持を頼んだ』
「「了解しました(シマシタ)」」
『アルビーナにも進軍を指示した。目標はギルバート王国の王都タラワだ。ここを落とせばマーシャル連邦は組織だっては行動できなくなるだろう。隣の都市と連携くらいは出来るだろうがそのくらいでは人間に出来る事は少ないからな』
山本拓哉は楽しそうに言うがギルはその事に特に思う所はなく話を続ける。
「分かりました。捕まえた人間はどうしますか?今は国境都市の復興に使っていますが」
『あー、男は子供年寄り関係なくウィティリックを経由してこっちまでゴブリンを使って持って来てくれ。生きた人間は希少だからな』
これは侵略戦争の過程で奪った都市の大半の人間は殺されており生き残っているのごく少数であったためである。
『女は動かさずゴブリンの繁殖の為に使ってくれ。くれぐれも殺したりはするなよ?こっちは男よりも大切なのだから』
「分かりました」
『では、さっそく行動に移ってくれ』
山本拓哉のその言葉を最後に話し合いは終了するのであった。

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