魔帝國戦記~ムーアシア大陸編~
14・マーシャル連邦侵略戦争~ハッドウ王国への侵攻~
「…え?」
一瞬であった。
バルドゥルは何が起きたのか全く分からなかった。あの時、バルドゥルが放った槍は敵の司令官と思われる化け物の心臓部分を的確についたのだ。
しかし、敵はそれにひるんだりダメージを受けた様子はなく上に武器を構えると一気に振り下ろしバルドゥルを縦に切り裂いたのだ。その威力はすさまじく騎乗していた馬ごと切り裂いたため薄れゆく意識の中バルドゥルは馬から放り投げられ敵司令官の後ろに飛ばされた。彼が最後に見たのは士気を上げる敵と絶望する味方の姿であった。
バルドゥルが死んだのを確認した敵司令官、ゴブリンキングのスキル【大繁殖】によって産みだされたボブゴブリンは一気に敵への攻勢を強めるように指示を出した。
ゴブリンキングはこの個体以外にも二体生産しているが一番で気が良くゴブリン千を率いる大将に任じられていた。彼はその務めを果たすべく自らも前戦に出て武器である鉈に似た武器を用いて敵を切り殺していった。
「…どうやら俺の出番はなかったようだな」
その様子をウィティリックの城壁の上から見ていたギルはそう呟き自身の主である山本拓哉にテレパシーを送る。
『我が主』
『ん?ギルか?どうした。何かあったのか?』
『東よりマーシャル連邦の残党と思われる勢力が攻めて来ました』
『おいおい、残党って…。まあいい、それで?倒したのであろう?』
山本拓哉の言葉にギルは下を見る。丁度掃討が完了し死体処理をしているゴブリン達の姿があった。
『今は倒した敵の処理をしておりますが数名逃がしてしまったのでこれから敵を追って行こうと思っています』
『そうか。そう簡単に負けないだろうが慢心して敗北するなんて事はないように』
『了解しました。死体はどうしますか?死体の中にはそれなりに戦える者もいましたが』
『なら死体は凍らせてこっちまで運んでくれ。現在材料が不足していてな。死体であろうと使わないといけないからな』
『分かりました。そのように手配します』
ギルはそれだけ言うとテレパシーを切り準備に入る。まずは先ほどのテレパシーの内容をゴブリンキングに伝え一部のゴブリンに死体を運ばせるように指示を出した後ゴブリンキングと五百名のゴブリンにウィティリックの防衛を頼みボブゴブリンに千五百名の指揮を任せキメラ全部を率いて敵が逃げた先と思われるハッドウ王国王都ベールナへと進めさせた。そしてギル自身はキメラを使いゴブリンよりも先に強襲させる様に指示を出す。更にキメラの背に一体ずつゴブリンを乗せ戦力を加えさせたのである。
かくしてギルに率いられたキメラとゴブリンによる王都強襲部隊約三百はベールナへと羽根を進めるのであった。
ディートヘルムが王都についたのは日が暮れる直前であった。ベールナの門兵は息も絶え絶えで現れた国王に驚きつつも急いで王城へと運んだ。
「陛下!?一体何があったのですか!?」
宰相のエゴンは急に戻って来たディートヘルムに事の次第を聞く。使用人から水を貰い一息ついてからエゴンの言葉に答えた。
「はぁ、はぁ、…ウィティリックを占領した敵は予想以上の勢力であった。バルドゥルが兵を率いて俺を逃がしてくれたのだ」
「何と…!」
「急ぎ王都の街から国境都市へと逃げるぞ。支度をせよ」
「はっ!」
エゴンは頭を下げると急ぎ準備に取り掛かった。
先ずはウィティリック方面の扉を固く閉じた。更には色々なもので扉をふさぎ簡単には入ってこられないようにもした。他にも町民の手を借りて道にバリケードを築き敵を足を少しでも止めるようにした。
それを完了すると町民に避難指示を出し国境都市へと向かうがその足取りは遅くなかなか前に進まなかった。それを見たエゴンは隣で町民に避難を指示するディートヘルムに言う。
「陛下は先にお逃げください」
「…私は兵士八百五十を見捨てて逃げて来た。それなのに今度は町民を見捨てて逃げるわけにはいかない」
「しかし陛下はこの国の王なのです。貴方様さえ生きていればこの国はいくらでも復活できます」
エゴンはそう言うとディートヘルムに微笑む。
「私は陛下のお父上の時代からこの国を支えているのです。今までも、そしてこれからも」
「…」
「ご安心くだされ。私もすぐに国境都市へと向かいます。それまでは暫しの間のお別れです」
「分かった。町民たちを頼む」
ディートヘルムはそれだけ言うと馬を国境都市へと走らせた。そして、それが二人の最後にあった瞬間であった。
ギル率いる王都強襲部隊がもぬけの殻の王都を見てさらに追撃してエゴン達を見つけたのはそれから一時間近くたった後であった。
~人物紹介~ディートヘルム・ツー・ハッドウハッドウ王国国王。35歳。歴代の王の中でも一二を争う謀略家でありマーシャル王国に変わり盟主になるべく暗躍していた。その一環としてウィティリックの太守と通じるも行動を起こす前にゴブリン達によって陥落し、奪還の兵すら屍の山を築くのみで終わりバルドゥルの意見に従い国境都市へと撤退する。
エゴン・ツー・バシュハッドウ王国宰相。62歳。ディートヘルムの父の時代から王国を支えてきた。ハッドウ王国への忠義は王国一高い。
バルドゥルハッドウ王国の将軍。マーシャル連邦最強の将軍として名が知れ渡っており負けてばかりのプローア王国に対して唯一勝利を勝ち取っている。しかし、あくまでも人間として。指揮官として優れていただけなので人間を軽く超えるゴブリンの軍勢やボブゴブリンには全く敵わなかった。結果として屍の山の一部となり山本拓哉のもとへと送られた。
一瞬であった。
バルドゥルは何が起きたのか全く分からなかった。あの時、バルドゥルが放った槍は敵の司令官と思われる化け物の心臓部分を的確についたのだ。
しかし、敵はそれにひるんだりダメージを受けた様子はなく上に武器を構えると一気に振り下ろしバルドゥルを縦に切り裂いたのだ。その威力はすさまじく騎乗していた馬ごと切り裂いたため薄れゆく意識の中バルドゥルは馬から放り投げられ敵司令官の後ろに飛ばされた。彼が最後に見たのは士気を上げる敵と絶望する味方の姿であった。
バルドゥルが死んだのを確認した敵司令官、ゴブリンキングのスキル【大繁殖】によって産みだされたボブゴブリンは一気に敵への攻勢を強めるように指示を出した。
ゴブリンキングはこの個体以外にも二体生産しているが一番で気が良くゴブリン千を率いる大将に任じられていた。彼はその務めを果たすべく自らも前戦に出て武器である鉈に似た武器を用いて敵を切り殺していった。
「…どうやら俺の出番はなかったようだな」
その様子をウィティリックの城壁の上から見ていたギルはそう呟き自身の主である山本拓哉にテレパシーを送る。
『我が主』
『ん?ギルか?どうした。何かあったのか?』
『東よりマーシャル連邦の残党と思われる勢力が攻めて来ました』
『おいおい、残党って…。まあいい、それで?倒したのであろう?』
山本拓哉の言葉にギルは下を見る。丁度掃討が完了し死体処理をしているゴブリン達の姿があった。
『今は倒した敵の処理をしておりますが数名逃がしてしまったのでこれから敵を追って行こうと思っています』
『そうか。そう簡単に負けないだろうが慢心して敗北するなんて事はないように』
『了解しました。死体はどうしますか?死体の中にはそれなりに戦える者もいましたが』
『なら死体は凍らせてこっちまで運んでくれ。現在材料が不足していてな。死体であろうと使わないといけないからな』
『分かりました。そのように手配します』
ギルはそれだけ言うとテレパシーを切り準備に入る。まずは先ほどのテレパシーの内容をゴブリンキングに伝え一部のゴブリンに死体を運ばせるように指示を出した後ゴブリンキングと五百名のゴブリンにウィティリックの防衛を頼みボブゴブリンに千五百名の指揮を任せキメラ全部を率いて敵が逃げた先と思われるハッドウ王国王都ベールナへと進めさせた。そしてギル自身はキメラを使いゴブリンよりも先に強襲させる様に指示を出す。更にキメラの背に一体ずつゴブリンを乗せ戦力を加えさせたのである。
かくしてギルに率いられたキメラとゴブリンによる王都強襲部隊約三百はベールナへと羽根を進めるのであった。
ディートヘルムが王都についたのは日が暮れる直前であった。ベールナの門兵は息も絶え絶えで現れた国王に驚きつつも急いで王城へと運んだ。
「陛下!?一体何があったのですか!?」
宰相のエゴンは急に戻って来たディートヘルムに事の次第を聞く。使用人から水を貰い一息ついてからエゴンの言葉に答えた。
「はぁ、はぁ、…ウィティリックを占領した敵は予想以上の勢力であった。バルドゥルが兵を率いて俺を逃がしてくれたのだ」
「何と…!」
「急ぎ王都の街から国境都市へと逃げるぞ。支度をせよ」
「はっ!」
エゴンは頭を下げると急ぎ準備に取り掛かった。
先ずはウィティリック方面の扉を固く閉じた。更には色々なもので扉をふさぎ簡単には入ってこられないようにもした。他にも町民の手を借りて道にバリケードを築き敵を足を少しでも止めるようにした。
それを完了すると町民に避難指示を出し国境都市へと向かうがその足取りは遅くなかなか前に進まなかった。それを見たエゴンは隣で町民に避難を指示するディートヘルムに言う。
「陛下は先にお逃げください」
「…私は兵士八百五十を見捨てて逃げて来た。それなのに今度は町民を見捨てて逃げるわけにはいかない」
「しかし陛下はこの国の王なのです。貴方様さえ生きていればこの国はいくらでも復活できます」
エゴンはそう言うとディートヘルムに微笑む。
「私は陛下のお父上の時代からこの国を支えているのです。今までも、そしてこれからも」
「…」
「ご安心くだされ。私もすぐに国境都市へと向かいます。それまでは暫しの間のお別れです」
「分かった。町民たちを頼む」
ディートヘルムはそれだけ言うと馬を国境都市へと走らせた。そして、それが二人の最後にあった瞬間であった。
ギル率いる王都強襲部隊がもぬけの殻の王都を見てさらに追撃してエゴン達を見つけたのはそれから一時間近くたった後であった。
~人物紹介~ディートヘルム・ツー・ハッドウハッドウ王国国王。35歳。歴代の王の中でも一二を争う謀略家でありマーシャル王国に変わり盟主になるべく暗躍していた。その一環としてウィティリックの太守と通じるも行動を起こす前にゴブリン達によって陥落し、奪還の兵すら屍の山を築くのみで終わりバルドゥルの意見に従い国境都市へと撤退する。
エゴン・ツー・バシュハッドウ王国宰相。62歳。ディートヘルムの父の時代から王国を支えてきた。ハッドウ王国への忠義は王国一高い。
バルドゥルハッドウ王国の将軍。マーシャル連邦最強の将軍として名が知れ渡っており負けてばかりのプローア王国に対して唯一勝利を勝ち取っている。しかし、あくまでも人間として。指揮官として優れていただけなので人間を軽く超えるゴブリンの軍勢やボブゴブリンには全く敵わなかった。結果として屍の山の一部となり山本拓哉のもとへと送られた。
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