異世界戦国記
第七十一話・加納城攻め
土田政久の娘を側室に迎え入れると決めた数日後、俺は六千の兵を連れて出陣した。水野家も忠政殿本人が二千の兵を連れて向かってきている。俺達が向かうのは美濃国境に位置する加納城だ。そこを落とす事さえ出来れば稲葉山城まで一直線だ。
俺は数日かけて信康がいる黒田城に到着した。五年前にこの城に入った時には床は抜けるし壁は崩れるしで酷い有様だったが今では何度も改修され立派な城になっていた。
「兄上!」
「信康! 久しぶりだな!」
城の前で待っていた信康と再会する。かれこれ数か月ぶりの再会だ。十九歳となった信康は子供の面影を完全になくし立派な青年へと成長していた。織田家一門だからかかなりの美形で中世的というよりも漢前と言ったような感じだ。因みに俺は雪曰く「母親としても育てたい可愛らしい顔立ち」との事だ。初めて聞いた時はどう反応すればいいのか分からなくて苦笑いでごまかしたがな。
「信康、早速で悪いが兵を休ませたら明日にでも出発する。お前もついてきてくれ」
「勿論です! 五年前には和睦で終わった斎藤家との戦、今度は必ず勝利を掴んで見せます!」
「頼もしいな。頼りにしているぞ」
「はい!」
戦国時代には兄弟親子で争う事が日常的だったと聞くが俺達はそう言う事もなくて安心だな。信康も信光も、その下の子たちも俺を兄と慕い、織田家当主として敬ってくれる。信康のように武力があるわけでもない、信光の様な公家と付き合いが出来る教養はない俺だが皆支えてくれている。その事を思うと涙が出てきそうになる。
「……さて、斎藤家に何か動きはあるか?」
「いえ、今のところは。加納衆をそれだけ信じているのかそれとも別の思惑があるのか……。加えて、利政も朝倉家の方に向かったままで引き返すような動きは見られません」
「少し不気味だな」
信康が調べてくれたことを俺たちは話しあう。加納衆の兵はおおよそ千程。根こそぎ兵を集めれば千五百くらいにはなりそうだがそうすれば烏合の衆へとなり下がるだろう。
土田政久も兵を集め終えて加納城陥落と同時に稲葉山城を攻撃する準備が整っているとの事。娘の嫁ぐ準備も出来ているとも言っていたが正直今はどうでもいい。戦の時に婚姻だなんだの話は兵の士気を下げかねないし絞まらないからな。
「どちらにしろ稲葉山城を落とさないと始まらないな。こちらは連れて来た六千だ。この城には確か千程はいたか?」
「そうですね。半分ほどなら連れて行けますよ」
「大垣城にいる土岐頼芸の動きも気になる。こちらの主力がいないうちに尾張に攻め込んでくる可能性だってあるしな」
大垣城とその周辺を領有する程度の頼芸の動員兵力はおおよそ千五百。黒田城さえ抜ければ尾張で暴れる事は可能な兵力だ。とは言え頼芸の兵は連敗続きで士気は低いらしい。そんな奴らに抜かれるとは思えないが一応警戒するべきか。
そう思っていると兵が近づいてきた。伝令用の兵だ。
「失礼します! 清州の斯波義統様の兵が来ています!数は百」
「義統様の援軍か? 特に聞いてはいなかったが……」
「私もその様な連絡は受け取っていないですね」
俺と信康は首を傾げるが義統様の兵である以上無下に出来ないか。少し警戒しつつ迎え入れると率いていたのはあの織田三位だった。かつて信友に仕えていたやつで、和睦する際に使者となった男だ。清州織田家に仕えていた者は信友死後はそのまま義統様の家臣となっていたはずだ。つまり、こいつらは義統様の兵という事で良いのだろう。あまりいい気分にはならないがな。
それを感じ取ったのだろう。織田三位は若干苦笑している。
「信秀様の感情も分かりますが義統様のご命令なので……」
「どうせ斯波家の権威を高めたいのだろう」
「守護家なのに信秀様以下の権威と権力しか持っていないので不満なのでしょう」
義統様は”同じ守護の土岐家から奪われた美濃を盗り返すべく斯波義統が織田信秀に命令して奪還させた”と言う事にしたいのだろうな。とは言えそんな事をしたところで義統様の領地が増える訳でもないんだ。朝倉家との美濃を盗った後の会議には使者だろうと本人だろうと参加させずに恥をかかせてやるか。
俺は数日かけて信康がいる黒田城に到着した。五年前にこの城に入った時には床は抜けるし壁は崩れるしで酷い有様だったが今では何度も改修され立派な城になっていた。
「兄上!」
「信康! 久しぶりだな!」
城の前で待っていた信康と再会する。かれこれ数か月ぶりの再会だ。十九歳となった信康は子供の面影を完全になくし立派な青年へと成長していた。織田家一門だからかかなりの美形で中世的というよりも漢前と言ったような感じだ。因みに俺は雪曰く「母親としても育てたい可愛らしい顔立ち」との事だ。初めて聞いた時はどう反応すればいいのか分からなくて苦笑いでごまかしたがな。
「信康、早速で悪いが兵を休ませたら明日にでも出発する。お前もついてきてくれ」
「勿論です! 五年前には和睦で終わった斎藤家との戦、今度は必ず勝利を掴んで見せます!」
「頼もしいな。頼りにしているぞ」
「はい!」
戦国時代には兄弟親子で争う事が日常的だったと聞くが俺達はそう言う事もなくて安心だな。信康も信光も、その下の子たちも俺を兄と慕い、織田家当主として敬ってくれる。信康のように武力があるわけでもない、信光の様な公家と付き合いが出来る教養はない俺だが皆支えてくれている。その事を思うと涙が出てきそうになる。
「……さて、斎藤家に何か動きはあるか?」
「いえ、今のところは。加納衆をそれだけ信じているのかそれとも別の思惑があるのか……。加えて、利政も朝倉家の方に向かったままで引き返すような動きは見られません」
「少し不気味だな」
信康が調べてくれたことを俺たちは話しあう。加納衆の兵はおおよそ千程。根こそぎ兵を集めれば千五百くらいにはなりそうだがそうすれば烏合の衆へとなり下がるだろう。
土田政久も兵を集め終えて加納城陥落と同時に稲葉山城を攻撃する準備が整っているとの事。娘の嫁ぐ準備も出来ているとも言っていたが正直今はどうでもいい。戦の時に婚姻だなんだの話は兵の士気を下げかねないし絞まらないからな。
「どちらにしろ稲葉山城を落とさないと始まらないな。こちらは連れて来た六千だ。この城には確か千程はいたか?」
「そうですね。半分ほどなら連れて行けますよ」
「大垣城にいる土岐頼芸の動きも気になる。こちらの主力がいないうちに尾張に攻め込んでくる可能性だってあるしな」
大垣城とその周辺を領有する程度の頼芸の動員兵力はおおよそ千五百。黒田城さえ抜ければ尾張で暴れる事は可能な兵力だ。とは言え頼芸の兵は連敗続きで士気は低いらしい。そんな奴らに抜かれるとは思えないが一応警戒するべきか。
そう思っていると兵が近づいてきた。伝令用の兵だ。
「失礼します! 清州の斯波義統様の兵が来ています!数は百」
「義統様の援軍か? 特に聞いてはいなかったが……」
「私もその様な連絡は受け取っていないですね」
俺と信康は首を傾げるが義統様の兵である以上無下に出来ないか。少し警戒しつつ迎え入れると率いていたのはあの織田三位だった。かつて信友に仕えていたやつで、和睦する際に使者となった男だ。清州織田家に仕えていた者は信友死後はそのまま義統様の家臣となっていたはずだ。つまり、こいつらは義統様の兵という事で良いのだろう。あまりいい気分にはならないがな。
それを感じ取ったのだろう。織田三位は若干苦笑している。
「信秀様の感情も分かりますが義統様のご命令なので……」
「どうせ斯波家の権威を高めたいのだろう」
「守護家なのに信秀様以下の権威と権力しか持っていないので不満なのでしょう」
義統様は”同じ守護の土岐家から奪われた美濃を盗り返すべく斯波義統が織田信秀に命令して奪還させた”と言う事にしたいのだろうな。とは言えそんな事をしたところで義統様の領地が増える訳でもないんだ。朝倉家との美濃を盗った後の会議には使者だろうと本人だろうと参加させずに恥をかかせてやるか。
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