異世界戦国記
第六十四話・気絶
「三郎様!?大丈夫ですか!?」
伊勢連合軍との戦いを終えて勝幡城に入城した俺を出迎えたのは真っ青な顔で今にも気絶しそうな雪だった。重傷の俺よりも死にそうに見える彼女だがその原因は自分の為何も言えなかった。
「雪、少し傷を負い過ぎただけだ。別に死んだりはしない……はず」
「はずって何ですか!?それで安心なんてできませんよ!」
今の俺がどれだけ傷を負っているのか分からないから具体的には言えなかったがそれが却って雪を心配させる結果になってしまった。真っ青な顔だった彼女は今では真っ赤な顔でプリプリ怒っている……。こんな状況だが「うちの嫁さんめちゃくちゃ可愛い」と思ってしまった。
「お、奥方様。怪我の治療を行うのでよろしいでしょうか?」
「はっ!そ、そうでしたね。直ぐに運んでください」
気を利かせて利昌がそう言ってくれたおかげで俺は治療用の部屋に運ばれて行き治療を受ける事になった。とは言えこの時代の医療は大分がさつと言うか酷いという言葉に尽きる。何せ傷口には糞尿をかけていたらしいからな。生理的に無理な上にそんな事をすれば感染症になってしまう。
……と思っていたのである程度の医療改革は行ってきたつもりだ。元々の知識の少なさのせいで大した事は出来なかったが少なくとも糞尿を塗りつけられる事はなくなったし傷を塗って清潔な包帯などで巻くといった事はするようになった。それでもまだまだだ。何せ麻酔がないから痛みに耐えるか失神するくらいしか出来ない。どういう物質が麻酔になるのかさえ分からないから手の出しようがない。
「信秀様。終わりましたよ」
そんな事を考えていると漸く治療が終わったらしい。まだアドレナリンは切れていないのか痛みはそこまで感じなかったが俺の体を色々弄っているという不快感や違和感はずっと感じていた。
俺は全身包帯だらけの体を起こして自分の部屋に向かいそこに敷いてあった布団に仰向けで寝る。隣には不安そうな雪がいる為彼女が敷いてくれたようだ。雪は俺の世話をなるべく女中を使わずに自身で行おうとするからな。
「三郎様、大丈夫ですか?」
「ああ、暫くは痛みが消えないだろうし起きれないかもしれないが死ぬ事はないだろう」
「そうですか。それは良かったです……」
俺の言葉に雪は安堵したように息を吐きそう答えた。先程までの雪の表情は何処か焦っている感じがしたが今は大分落ち着いている。アドレナリンが切れてきたようで痛みが少しづつ感じてきた。こうなると寝るどころではなく俺は脂汗をかきながら痛みでうめき声を上げる。
「ぐ、ぅう!」
「三郎様!」
「だ、だいじょう。ぶ、だ……」
「でもこんなに汗をかいて……!」
雪が布で俺の額の汗を取ってくれるが直ぐにあらたな汗が出てくる。額だけで困難感じだが全身似たようなもので布団はどんどん汗を吸い込んでいく。
それを見た雪は一旦部屋を出ていき直ぐに水の入った桶と布、女中を連れて戻ってきた。彼女一人では手が足りないと感じたのかもしれないな。
「三郎様。織田家はまだ予断を許さない状況にありますが今は体を休めてください。私が、傍にいますから」
「ふっ。それだけで俺は頑張れるよ」
俺は痛みをこらえて笑みを作り泣きそうな顔の雪に向けた。伊勢連合軍を退けたとはいえ未だ織田家は二つの敵と戦っている。東の戦況は分からないが笠寺城が抜かれれば松平軍は尾張に雪崩れ込んでくるだろう。信繫が頼りだな。そして北も同じだ。今のところ何も情報は入ってきていないが信康が上手くやってくれている事を願おう。
ふ、俺が動けるようになるまでに事態が好転している事を祈る事しか出来ないな。俺はそう思いながら気絶するように意識を失うのだった。
伊勢連合軍との戦いを終えて勝幡城に入城した俺を出迎えたのは真っ青な顔で今にも気絶しそうな雪だった。重傷の俺よりも死にそうに見える彼女だがその原因は自分の為何も言えなかった。
「雪、少し傷を負い過ぎただけだ。別に死んだりはしない……はず」
「はずって何ですか!?それで安心なんてできませんよ!」
今の俺がどれだけ傷を負っているのか分からないから具体的には言えなかったがそれが却って雪を心配させる結果になってしまった。真っ青な顔だった彼女は今では真っ赤な顔でプリプリ怒っている……。こんな状況だが「うちの嫁さんめちゃくちゃ可愛い」と思ってしまった。
「お、奥方様。怪我の治療を行うのでよろしいでしょうか?」
「はっ!そ、そうでしたね。直ぐに運んでください」
気を利かせて利昌がそう言ってくれたおかげで俺は治療用の部屋に運ばれて行き治療を受ける事になった。とは言えこの時代の医療は大分がさつと言うか酷いという言葉に尽きる。何せ傷口には糞尿をかけていたらしいからな。生理的に無理な上にそんな事をすれば感染症になってしまう。
……と思っていたのである程度の医療改革は行ってきたつもりだ。元々の知識の少なさのせいで大した事は出来なかったが少なくとも糞尿を塗りつけられる事はなくなったし傷を塗って清潔な包帯などで巻くといった事はするようになった。それでもまだまだだ。何せ麻酔がないから痛みに耐えるか失神するくらいしか出来ない。どういう物質が麻酔になるのかさえ分からないから手の出しようがない。
「信秀様。終わりましたよ」
そんな事を考えていると漸く治療が終わったらしい。まだアドレナリンは切れていないのか痛みはそこまで感じなかったが俺の体を色々弄っているという不快感や違和感はずっと感じていた。
俺は全身包帯だらけの体を起こして自分の部屋に向かいそこに敷いてあった布団に仰向けで寝る。隣には不安そうな雪がいる為彼女が敷いてくれたようだ。雪は俺の世話をなるべく女中を使わずに自身で行おうとするからな。
「三郎様、大丈夫ですか?」
「ああ、暫くは痛みが消えないだろうし起きれないかもしれないが死ぬ事はないだろう」
「そうですか。それは良かったです……」
俺の言葉に雪は安堵したように息を吐きそう答えた。先程までの雪の表情は何処か焦っている感じがしたが今は大分落ち着いている。アドレナリンが切れてきたようで痛みが少しづつ感じてきた。こうなると寝るどころではなく俺は脂汗をかきながら痛みでうめき声を上げる。
「ぐ、ぅう!」
「三郎様!」
「だ、だいじょう。ぶ、だ……」
「でもこんなに汗をかいて……!」
雪が布で俺の額の汗を取ってくれるが直ぐにあらたな汗が出てくる。額だけで困難感じだが全身似たようなもので布団はどんどん汗を吸い込んでいく。
それを見た雪は一旦部屋を出ていき直ぐに水の入った桶と布、女中を連れて戻ってきた。彼女一人では手が足りないと感じたのかもしれないな。
「三郎様。織田家はまだ予断を許さない状況にありますが今は体を休めてください。私が、傍にいますから」
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