呪いの痛み〜地球では報われなかった僕が異世界転生して世界の悲願を達成する譚〜

高梨 白

一章:アルダード/第2話:2人の自由天使


───森で『蜥蜴人リザードマン』に襲われていた少女を助けてから、気絶した少女を介抱するために森の外に出て見つけた小屋で、僕はその子を落ち葉で作った簡易ベッドに横たわらせ、改めて自分の持ち物を確認していた。

 「MPCとMPCのソーラー充電器はあるな。…教科書とノートは学校に置いていたけど、筆記用具と…財布もあるな。でもこの世界で貨幣として使えるのかな…。ん?なんだ?コレ」
 
 僕の学生カバンに見覚えのない手帳?のようなナニカが入っているのに気づいた。表紙には『通信用端末』と書かれてるけど…。
 
 開いてみたら手帳のような見た目とは裏腹に、内側は『ミカイル』と『ジブリエル』と書かれたボタンのようなものが2つあるだけの機械的な板が取り付けてあるだけだった。
 
 「……『ミカイル』って…、絶対あの人僕の荷物漁ったよね…コレ。ボタンを押すとミカイルさんに繋がるのかな?通信用って書いてあるし…。とりあえず押してみるか」
 
 別に、『押すなよ!お約束』と書かれている訳では無いが、ボタンがあれば押すのが人の性、と言うことで押してみた。
 
──ピッ…プルルルル…
 
 電話の発信音のような音が鳴り、しばらくしてから繋がって、
 
 『あら思ったより早い。無事だったんですね!どうです?そちらの世界は』

 と、のたまうミカイルさんが。
 ……この人、すっごい自由してるなぁ…。
 
 「えぇ、おかげさまで、腰が痛いですよ。それで、これはなんです?『通信用端末』ってのは。ミカイルさんがホログラムみたいに投影されてますが」
 
 そう、ミカイルさんと通信がつながった時からこの板の上に、ミカイルさんとその周辺の景色が浮かび上がっているのだ。
 
 『あぁ、それはですね、翠李さんがどのような世界に行ったのか気になりまして、そちらの世界のことを教えてもらうためにこの端末を荷物の中に入れておいたというわけですよ』
 
──そんなことだろうと思ったよ。この自由天使め。
 
 『そちら側では私が空間に小さく映し出されてると思うんですが、こちらでも同じように翠李さんとその周りが見えてるんですよ、なので、えっと…『ビデオ電話』と考えていただいたら結構です』
 
 「なるほど…ビデオ電話ですか…分かりました。あの、それでこの、『ジブリエル』さん?ってミカイルさんと同じ天使ですか?」

 と、さっきからずっと気になっていたことを聞いてみる。
 
 『あぁ、ジブリエルって聞くとしっくりこないですよね、ですが私の名前を知っているのでしたら『ガブリエル』くらいは知っていますよね?』
 
 …ガブリエルか、それなら知っている。ミカエルと同じ聖書に登場する七大天使のナンバー2だ。(ちなみにナンバー1は言わずもがなウリエルだ)
 
 『ジブリエルとガブリエルは同一天使なんですよ、表記の読み方が違うだけで。でも本人は『ジブリエル』って呼んでほしいそうで、『ガブリエル』って呼ぶとものすごく怒るんですよ…恐いですよ?』
 
 ……ま、まぁ名前を間違えるのは失礼だもんな。
 
 「…それで、なんでその『ジブリエル』さんにもつなげられるようになってるんですか?」
 
 『彼女は天界1の物知りでして、異世界の情報を集めてるんですよ。なのでその世界で起きたこと、発見したことを教えてあげれば、その世界について、知っている情報を教えてもらえるかも、と思いまして。まぁ言わば情報交換ガイドですね。小さなことでも異世界のことならなんでも聞いてくれると思うので、体良く扱っていればいいと思いますよ』
 
 …つまり、ジブリエルさんにこの世界の出来事をリアルタイムで教える代わりに、世界の詳細を聞いたりできるのか。
 
 「体良く扱えって…。でも、この世界のことを教えてくれる人がいるのは心強いです。何かあったら連絡してみることにします。…あ、この端末ってバッテリーとかは大丈夫なんですか?」
 
 『あー、その事ですが、カバンの中にあった太陽光発電式の充電器で充電できるようにしてます。勝手に荷物を漁ったのは申し訳ないですけど、その端末で許していただけると助かります』
 
 と、そう言って舌を出してテヘっ✧と言うミカイルさん。…………この人は…。
 
 「まぁ便利なものを貰いましたし、いいです。ではジブリエルさんにもかけてみますね」
 
 『はい、分かりました。あ、くれぐれも名前の間違いには気をつけてくださいね、それでは!』
 
──プッ…ツ-ツ-ツ-…
 
 まるで電話のような以下略。
 
 にしても、ジブリエルってあのガブリエルと同一天使だったんだ…。ガブリエルって確か知識の天使だよな…、なるほど、そりゃ異世界に興味があるのもわかるな。早速かけてみるか。
 
──ピツ…プルルルル…

 まるで(ry。
 
 『私だ。ジブリエルと呼んでくれ、さん付けでも構わない』
 
 芯の通った力強い声で通話に出たこの人がジブリエルさん?

 浮かび上がった容姿はミカイルさんと方向は違えどとても整っていて、イメージとしてはイケメン女子、というか、男性より女性にモテそうなお姉さん、のような感じだ。 

 それでも初見の僕は見とれてしまった…のだが、その、ミカイルさんも持っていたどこか残念な雰囲気がこの人にもあるような気がする…のは気のせいだろうか。
 
 「あっはい。僕は橘 翠李と言います。はじめまして!」
 
 『…ミドリ?あぁ、ミカイルの差し金か』
 
 僕の日本名だけでここまでの一連の流れを察した様子のジブリエルさん。前にもこのようなことがあったのだろうか、さすが知識の天使ガブリエル。
 
 「それでミドリ、私につないだということは何か知りたいことでも?そっちの世界について教えてもらえれば…うん?どうした?ミドリ」
 
 「あ、いえ、さすが知識の天使ガブリエルだなって…あっ!」
 
 『あ゙!?今ガブリエルと呼んだか?』
 
 つい癖で『ガブリエル』と呼んでしまった僕に対し、殺意剥き出しの目で問いかけてくる。…って殺意!?
 
 「い、いえ!間違いました!さすがジブリエルさんだなって思いまして!」
 
 必死に弁解する僕。だってこわいもん。
 
 『そうか、まぁいい。次はないからな?』

 …恐すぎじゃね?
 
──もう二度と、人の名前は間違えないでいよう、そう心に固く誓った。





リアル多忙につきまして1週間更新出来ませんでした…。

テストは絶対許さない(小声)

そもそも私のこんな作品に読者様がついて頂けてるかは分かりませんが、お待たせして申し訳ありませんでしたm(_ _)m 

このようなことが起こらないように、頑張ってまいりますので、もしよろしければ続編をお待ちください!

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