呪いの痛み〜地球では報われなかった僕が異世界転生して世界の悲願を達成する譚〜

高梨 白

プロローグ

──ラ・ラ・モール・トーツ・リード・私さえ消えてしまえば
ラール・アーレ・メイス・ルー人の憎しみは消えるでしょうか───

 これは、夜空に見える輝く星より更に遠くの、こことは違う世界の、古い言い伝え────

───深い霧の夜、「呪いの森」の奥深くに現れる古いお城には、姿を見た者全ての魂を抜き取り、その者の縁者にも数日で『変死』する呪いを掛ける、真紅色の血染めのドレスを纏った『呪いの魔女』が住んでいるという…。なので霧が出た夜は、何があってもその森に近づいてはいけないのだそうだ───────

 そんな言い伝えがあるこの世界に、1人の少年が地球から招かれた。

 少年の名はたちばな 翠李みどり、歳は16、生まれつき体が少し弱かったこと以外は、至って平凡な高校二年生である。

 翠李は生まれた時から肺が弱く、あまり運動ができる体ではなかった。

 彼の両親は2年前、既に他界しており、それからは親が残した家で一人暮らしをしていた。

 先に述べた通り、翠李は体が弱かったため、一人暮らしをするに当たってどうしても必要な生活費を稼がなければならなかったが、バイトに出ることが出来ない。

 そこで、彼は家で出来る内職などで生活費を稼ぎつつ、学校に通うという生活を送っていた。

 両親が残した遺産で学費などは賄えたのが不幸中の幸いであった。


 …しかし、そんな生活を続けていたある日、翠李がいつものように家を出て学校へ向かう途中、大通りの交差点で、信号を無視して突っ込んできた大型トラックに撥ねられ、病院へと送られた。

 翠李は病院で集中治療室に運ばれ手術を受けたが、元々虚弱体質だったこともあり、手術の負荷に身体が耐えられず、息を引き取ることとなった。

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