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ねこと一緒に転生しちゃった!?

十六夜 九十九

035話 という事は!


「あの二人、何かしでかしてないでしょうか……心配です……」

 私はハピネスラビットのみんなと一緒に冒険者協会に向かいながら、カヤとカナタさんが買い物を無事に終えるのかの心配をしていた。この時は既に色々しでかした後だったらしいのだけど、今の私にそんな事を知る由もない。
 ハピネスラビットのみんなは、いつものように雑談をしていて、笑っていたり、落ち込んでいたりと様々。

 今日の目的は私と支部長を会わせることと、ウルフテンペスタについて話すことにあるらしい。
 後者はまだ分かる。私達が経験したウルフの進軍の後にハピネスラビットのみんなやクマの獣人さんが支部長と話し合いをした事を、私にも共有して欲しいという事で話すことがあるらしいから。
 でもそれだと、私が直接支部長に会いに行かなくても、ハピネスラビットのみんなが話してくれればそれでいいはず。それなのに直接会わなければならないというのは不思議な話だと思う。
 もしかしたら、そんな事頭にないのかもしれないけれど、そもそもそんな見落としをする人が支部長になれるとは思えない。

「あのー、なんで私は支部長に会わなければならないんでしょうか?」

 色々考えた末に、結局分からなかったので、みんなに訊ねてみた。

「それは、あの話し合いの後に支部長が『礼がしてぇからよ、フィーさんを時間がある時に呼んでくれねぇか?』って言ったからですね」

「お礼ですか? 私、何かしましたっけ?」

「あの戦いでの初撃だと思います。あの魔法のおかげで犠牲者がかなり減ったはずですし、協会としても犠牲者は少ない方がいいですからね。それに一番貢献したフィーさんに協会側からお礼がしたいんだと思います」

 なるほど。私が全力を尽くした攻撃が結果的には他の冒険者を救う事に繋がっていたのか。今までソロで活動してきたから、他人の事を考えてなかった。

「もうそろそろ協会に着きますし、詳しいことは直接支部長に聞いた方が早いでしょうね」

「そうですね」

 その話をしてからほんの数分後で協会に着いた。協会の中ではクマの獣人さんが私達の到着を待っていたようで、入口付近に立っていた。

「来たな」

「ちょっと遅かったか?」

「いや、問題ない。ほぼ時間通りだ」

「なら良かった。んじゃ、支部長の所に行こうか」

 クマの獣人さんと各々挨拶を交わして、支部長のいる所へ向かう事になった。
 支部長の所へ向かうには、協会の受付に要件を告げてそれが受理されるか、支部長に呼ばれなければならない。
 今回は後者なので、手続きは簡単。まずは受付にパーティ名、もしくは個人名を告げて、確認してもらい、書類にサインすればいい。
 もし前者なら、受理されるまでに少し時間が空き、受理されても必要な書類を何枚か書かなければならない。私はそんな経験はないけれど、ハピネスラビットの人達は何度かあるらしい。

 そんなこんなで、サインも終えて支部長室へ向かう。支部長室はコルンの協会と同じで、受付の裏に回った先の一番奥にある。

――コンコンコンッ

「ハピネスラビット様一行とジン様、フィー様をお連れしました」

「おーぅ。入れー」

 中から低い男の人の声が聞こえた。カナタさんより少し年上のような感じだ。
 私達はその声に従って、ドアを開け中に入っていく。
 それと、話は変わるが、クマの獣人さんの名前はジンと言うらしい。二、三週間経った今、初めてクマの獣人さんの名前を知った。取り敢えず、心に留めておこう。
 
「「「失礼します」」」

「お前らやっと来たか。ちっと遅くねぇか?」

「無茶言わないでください、ラーウェイ支部長。俺達も出来るだけ急いだんですから」

 支部長の名前はラーウェイと言うらしい。獣人の国なだけあって、支部長も獣人だった。ベースはネコ科だと言うことは分かるけれど、それ以上は分からない。
 それと予想していた通り、カナタさんよりも少し年上と言った感じで、冒険者としてはベテランに分類される年上と言った感じだ。

「わーってるよ、ったく。冗談じゃねーか。それで、フィーさんは連れて来たか?」

「あ、フィーは私です」

「……マジで強いと聞いていたから、どんな男かと思っていたら……お前、女じゃねぇかッ!? それにとんだナイスバディ! 俺と遊ぼうぜ!」

「殺していいですか?」

 反射的に掌に青い炎を出して威嚇してしまった。最近、こういう事が増えてきてるせいだと思う。だがしかし、言われたままって言うのも癪だから、このまま威嚇し続けよう。

「フィーさん落ち着いて! それめちゃくちゃ熱い! 私達溶けちゃうよ! 死んじゃうよー!」

「うぉっ!? 熱気やべぇなこりゃ。一人でパーティ以上の力を持ってるっつー理由が分かったわ。ま、そういうわけだ。怒らせてすまんな」

「そういう事ですか。言ってくれればこれくらいいつでもしますよ?」

「いやー、怒らせた方がそいつの性格、冒険者としての素質、力の度合いがいっぺんに分かるから楽なんだわ。その点で言えばフィーさんは、力の度合い、性格はいいが、冒険者としての素質はまあまあってとこだ。怒りをすぐ露にするのはあんま良くねぇな」

「うぐっ……」

 完全に支部長の手のひらの上だった上に、私の悪い所を一発で見破られた。自分でも思っていたのだけれど、頭に血が上るとすぐに行動に出てしまう。
 今度から気を付けて、頭に血が上った時は、カヤと遊んでいるところを想像するようにしよう。

「まあ、フィーさんは冒険者になって二、三年らしいじゃねぇか。まだまだ成長出来る余地はある。修練に励めば良くなるだろ」

「はい。頑張ります」

「おう。そうしろそうしろ。あ、それと、この前の戦闘のことなんだが、フィーさんのおかげで他の冒険者の犠牲者が予想より大幅に下回った。感謝する」

「いえ、私はただ全力で魔法を放っただけですし、何も感謝されるようなことはしてないですよ。でも、感謝されるのは良い気分になりますね」

「そうだろうそうだろう! ガハハッ!」

 コルンの支部長とは違って、豪快な支部長だと思う。こういう人には、したからついて来る人が多くいるんじゃないかと思う。

「あの、感謝は分かったんですが、話は……?」

「あぁ、そうだったそうだった。まあ、結論から言うと俺達の方から出向く事にした」

「えっ!? という事は!?」

「ウルフテンペスタを直接叩きに行く!」

 いつしかのスライムと同じような展開に、私の気持ちは昂り始めている。あの時は、こちらから出向かなれば倒せなかったという違いがあるが、ほとんど同じだ。
 そして、こういう決断が協会側から下された場合は……

「よって、協会側からこの俺直々に戦闘に参加する事になった! 大船に乗った気でいろ! ガハハッ!」

 そう! 支部長が戦闘に参加する事になる! 支部長は冒険者を統率、指揮し、その戦闘を必ず勝利に導かなければならない。
 ラーウェイ支部長は見た感じ、接近戦を得意としていそうだ。クマの獣人さんよりも秘めた力は大きく感じている。

「まあ、そういう事だ。何か質問は?」

「ラーウェイ支部長」

「なんだ」

「何故、そうなったのかの説明をしてません」

「あっ、そうだった。すまんすまん」

 ……大船に乗った気でいろ、と言っていたけれど、心配になってきた。こんな感じで果たして大丈夫なのだろうか……。

「フィーさんは何も知らんだろうし、初めから話すか。じゃあ、こいつらハピネスラビットとジンが来た時から話すか」

「お願いします」

「あれは、戦闘が終わってすぐの事だ。俺達協会が、戦闘が無事に終了して安堵していた時にこいつらが俺に会いに来た。要件は、ウルフテンペスタの報告と今後ってのだったな。こいつらはウルフテンペスタの危険性をあの戦闘で感じたそうだ」

「それは私も感じました」

「なら話が早いな。そのウルフテンペスタをあの流れで倒せなかった事で、更なる危険があると言ったこいつらは、俺に、直接こちらから出向き、ウルフテンペスタを討ち取るべきだと言った」

「……よくよく考えれば考えるそれが一番いいですよね。今まで攻められるだけで、次に攻めてきた時には対策もされているだろうし。でも、こちらから出向けば、奇襲にもなって、対策も不十分な可能性がある」

「俺も同じ考えに行き着いた。まあ、他にも、ウルフの数が今が一番少ないだろうという打算もあるがな。そういうわけで、その日は検討すると言うことで、収まったわけだ。そして先日、最終決定で、こちらから出向く事になったわけだ。それ以外は特に語ることもないな」

 こっちから出向くのはハピネスラビットのみんなとクマの獣人さんが提案してくれたおかげでというのもあるかもしれない。戦略として抜群にいい方法だと思う。

「さてさて。ウルフテンペスタ討伐隊を早急に組まなければならん。めんどくさい事この上ないのだが、久しぶりの戦いの為だ。頑張るか。お前達にも手伝って貰うぞ。あ、女の子達は受付嬢達と一緒にお菓子でも食べてな。こっちは男だけでするからよ」

「わーい! 支部長男前ー!」

「ガハハッ! 分かりきったこと言うんじゃねぇよ! 照れるだろぉ!」

「おだてやすい人なんやねぇ。ま、今回に限ってはいい提案してくれるやん。うち、嬉しいで」

「ガハハッ! そうだろうそうだろう!」

「なんで俺等が書類整理するんだよ。女子にもさせろよ……」

「本当ですよ。贔屓反対です」

「あぁん? なんか言ったかァ?」

「「いえ、何も言ってないです」」

「ジン、こいつらどう思う」

「ダメだな。後方に下げて支援させてた方がいいだろう。だが、こいつだけは戦闘に参加させた方が戦力になる」

「俺も同じ考えだ。流石だな」

「ふん。当然だ」

「「なんで、やる気出してんだよ!」」

「おっしゃ! さっさとやるぞ野郎共! 手抜きは許さんからなァ? 手抜きした奴には俺のキツいキツいお仕置きしてやっからよォ」

「「おっしゃ! バリバリ働くぞ!」」

「みんながんばれー!」

「うちらは邪魔せんよう、向こうに行こか」

「そうですね。ここは支部長さんのお言葉に甘えましょう」

 私達は、ひーひー言っていたり、やる気に満ちていたりする男達を置いて、受付嬢の休憩スペースへと向かった。

「あっ、そう言えば……順調に進んでれば買い物が終わってる時間……大丈夫でしょうか」

 そんな心配をしながら、受付嬢やハピネスラビットのみんなと一時の女子会を楽しんだ。



   ◇◆◇◆◇



「ぜーはーぜーはー……ようやく……買い物……終わった」

『カタコトだけど大丈夫?』

「俺……大丈夫……」

『大丈夫じゃなさそうだけど……』

「大丈夫……後は……家……帰る……だけ……」

『う、うん』

 なぜ俺がカタコトで、こんなにも疲れているのか。それは簡単な話。人に追いかけ回されたからだ。
 しかし、人と言っても、犯罪者や危険な人物などではなく、この街の冒険者にだ。体力の違いや走力の違いで何度も捕まりそうになったが、俺の頭の良さによって何とか逃げ切った。
 それに、しっかり買い物も済ませている。誰かこの俺を評価して欲しい。自己評価は五段階評価で文句なしの五なんだけど。

「でも、なんであんなに追いかけられたんだ……?」

『冒険者にしたいって言ってたよ?』

「なんで知って……ってカヤは耳がいいもんな。冒険者か……なぜだ?」

『あの切り口は只者じゃないって』

「あの腕の事か!? しかしなんで俺達だって分かるんだ!」

『可愛い女の子を連れた父親が犯人だって』

「くっ! 可愛い女の子なんてカヤしかいないじゃないか! それはバレる!」

『女の子の方も魔法使えるって。取り敢えず、二人とも冒険者に入れろって言ってる』

「なん……だと……!? 俺、何もしてないぞ! カヤはいいとして、俺が冒険者になったところで何も出来んし!」

『探せ探せってすぐ近くを走ってる。……あ、こっちきた』

「な、何ィィィ!? 逃げなければ、逃げなければ!」

 某アニメの『逃〇ちゃダメだ』というフレーズとは全く逆の展開になっている現在の状況。
 こんな時、どんな顔すればいいかわからない。取り敢えず笑っておこう。

「アハハ。アハハ。アハハハハゲホゴホォッ!」

『本当に大丈夫?』

「ゲホゲホッ! し、心配するな。問題ない」

 本当は問題しかないのだが、痩せ我慢というやつだ。取り敢えず、今は逃げなければ。あの冒険者達に捕まれば、しつこい押し売りもだまる程の勧誘を受けることになるだろう。
 もしそんな事になれば、押しに弱い俺はいやいや言いながらも、協会へ連れていかれ、書類に名前と判子を押し、晴れて冒険者に。……なんだこれ、連帯保証人にされる手口と一緒かよ。

『……おぶってあげようか?』

「それはっ……遠慮させてっ……貰う! プライドがっ……あるからなっ!」

『でも、もうそこにいるよ?』

「ぜひ、おぶって下さい! お願いします!」

 プライド? そんなのグシャグシャに丸めてドブに捨てたわ。
 プライドの欠片もなくなった俺は、俺よりも小柄なカヤにおぶられて、とてつもないスピードで駆け抜けて行く。移り変わる景色はまるで早送りされたアニメのよう。それくらい速い。
 その速さを体感して思った事が一つ。

 この世界、理不尽過ぎじゃね?

 ……まあ、理不尽には慣れてるからいいけど。

『撒いたよー』

「流石俺の相棒。俺に出来ないことはカヤが出来るな!」

『カナタが出来る事って、料理とお勉強だけ?』

「ぐはっ! カヤに心を抉られるなんてッ!」

『そんなことより、家着いたよ?』

「もう着いたのか。早いな。さっさと中に入ってゆっくりしようぜ」

『うん!』

「まずは風呂だな……一緒に入るか?」

『入る!』

「よし! じゃ風呂の準備からだな!」

 俺達は色々な騒動を巻き起こした買い物を終え、疲れ果てながら帰宅したのだった。
 あ、お風呂にはカヤと一緒に入ったぞ。猫の姿のカヤと。……うん。俺、知ってた。ていうか、猫って水嫌いなんじゃ……いや、カヤだし大丈夫なんだろうな。

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