ねこと一緒に転生しちゃった!?

十六夜 九十九

021話 ヤッてしまってもいいですか?


 今日からコルンでの依頼をこなしていくことになった。具体的な依頼の内容は、町の北側にいる魔物の掃討、並びに調査とそんな感じ。
 ハピネスラビットの人達は宿の廊下で会った時には、準備を済ませてこれから仕事に向かうところだった。やけに早いなと思ったけれども、戦闘で必要になりそうな物を買ってから外に出ると言っていたので納得した。
 ただ、昨日の出来事でお付き合いをする事になった二人は寝不足で辛そうにしていた。なのに、どこか幸せそうなオーラを醸し出していた。それを見た時に悔しい想いと共にやるせない気分になった。何故私には彼女達みたいな幸せが訪れないんだろう……。

 それはともあれ気を取り直そう。いつどんな時でも平常心を保つ事が大切だ。これくらいのことで落ち込んでも仕方がない。
 取り敢えず気を取り直した私は、宿から出される朝食を取ろうと思い、宿の食堂へ向かった。
 食堂にはぽつぽつと言った感じで人が居た。やはりこういうところに町の過疎が見て取れる。

 そんな食堂の一角に、妙に大柄な男達の集団が集まっていた。大声で話しながら食事を取っているようだ。
 目立つその男達をよそ目にバイキング形式の朝食を装う。と、男達の中の一人に見覚えがある顔があった。昨日、恥を晒して帰っていった男だ。
 その男もこちらに気付いたようで嫌そうに眉をひそめていた。恐らく私も同じような顔をしてるだろうと思う。もしかすると、私の方が嫌そうな顔をしているかもしれない。

 向こうも同じ事を思ってたのだろう。私に向かって何かを言った事が分かった。距離が離れてた事で聞き取ることは無理だったが、口の動きから『クソ女』と読み取った。
 すると、男達の方で何か不穏な空気になった。私の方を指差している事から、大方クソ女とは誰なのかという議論がなされてるのだろう。

 私はそんな男達など早々に無視して食事を取るために席に座った。朝食は質素なものだが美味しそうだった。頂きますと食事の挨拶をして、料理を口に運ぼうとした時、机が強く叩かれた。
 その方を見ると、屈強な男がそこに仁王立ちしていた。一体どうやって机を叩いたのだろう。

「オレの大事な子分が世話になったそうだが、おめぇで間違いねぇな?」

 男は私を睨みつけながら威圧して言う。正直、この男も弱そうだ。自分を強く見せようと仁王立ちしたり威圧したりしているのがいい証拠だ。
 ただ、こういう輩は怒らせると後々面倒臭い。どうにかして向こうに行ってほしいけれども、この様子じゃ無理っぽい。

「子分と言う方がどなたなのか分かりませんが、昨日協会であった事ならそうだと思います」

「ほぅ……じゃあおめぇだ。先手ぇ出したんはおめぇらの方だからなァ。どう落とし前付けんだ?」

「落とし前も何も謝る前にあちらの方から喧嘩を仕掛けて来ましたよ?」

 私は何も間違った事は言ってない。ただ、謝る前に痛いって言っただけで、それに因縁を付けられたに過ぎないからだ。

「あァ? 嘘こくんじゃねぇ。俺らはなァ泣く子も黙る『暴れ牛』っつーパーティだぞ? 嘘こけばどうなるかは言わなくても分かるよなァ?」

「嘘でも嘘じゃなくてもどうでも良くないですか? どうせあなた方は強引に要求を飲ませようとするのでしょうし」

「ほォ分かってんじゃねぇか。じゃ、おめぇは俺等のオモチャな。あいつらも偶には遊ばせてやんねぇと――」

「――はい? 嫌ですけど。何勝手に私が要求を飲んだみたな話をしてるんですか? 勘違いも甚だしいです。あなた方みたいな、明らかに馬鹿で自分の事しか考えない様な人達に弄ばれる私ではないです。第一あなた方全員弱そうじゃないですか。そんな人達に私をどうこう出来るとは思えませんよ」

「んだとゴラァ! ケンカ売ってんのかクソアマがァ!」

「そういう直情的なところが馬鹿みたいと言っているんです。あなた方も冒険者ならもう少し節度ある行動をした方がいいですよ。でないと――」

「説教たれてんじゃねぇ! おめぇみえてぇな女は男の上で腰でも振ってりゃあいいんだよ!!」

 その男は強行手段に出てきた。
 私の腕を大きな手で強く掴み、無理矢理に引き寄せる。仮にも冒険者の男だ。力は冒険者に見合ったものがあり、掴まれている腕は痛かった。
 そして男の顔は完全に私を舐めたものだった。既に勝負はついていると思っているようだ。

「甘いですね……こんな人達が本当に冒険者なのでしょうか……ハピネスラビットの人達の方が冒険者として強いですよ全く……」

「あァ? 何言って――」

「その手、早く離した方がいいですよ?」

「――アニキィ! そいつから離れてたくだせぇ!」

 私は掴まれている方とは反対の手から青い炎を発動させ、腕を掴んでいる男の手に近付けた。
 本当は焼いてしまいたい気持ちだったが、横槍が入ったせいでそれは叶わなかった。けれども、男に恐怖は刻み込む事は出来た様なので良しとしておこうと思う。

「怖いですか? でも本当はこれ以上の事をしたいところなんですよ? 感謝して欲しいくらいです。ですが、これ以上私に関わってくるようなら容赦はしません。それでも私に向かってくる勇気はありますか?」

「……チッ! おい! 行くぞお前ら!」

「「「ウッス!!」」」

 男に少し脅しをかけるたら、子分を引き連れて食堂から立ち去って行った。大きい体の割には根性がない。
 これならカナタさんの方がまだ強い。彼はいくら言っても、どれだけお説教しても改善する気配が全くない。むしろ、お説教の穴を突いて『俺、言われた事は守ってるぞ』みたいな顔をするのが腹ただしい。何故カナタさんはあそこまでエッチになれるのか私には分かりません……。

「さて、あの人達も行った事ですし気を取り直して朝食を食べますか」

 この時、私は既に間違っていた。あそこで、あの男達を行かせるべきではなかった。暴行を受けたとして、この町の衛兵にでも突きつけるべきだった。
 この判断ミスが後々、私の首を絞める事になる。



   ◇◆◇◆◇



「仕事はこれで終わり!」

 コルンに来て約二週間経った。既に日は半分程沈んでいる。
 この二週間は懸念していた暴れ牛とかいうパーティの干渉もなく、魔物の討伐も難なくこなせた。
 ハピネスラビットの人達とは偶に会って話をしたり、買い物をしたりと中々に楽しい日々を過ごした。彼女達も魔物の討伐は難なくこなせているようで安心した。
 そして、今日の仕事がつい先程終わった。この仕事で全ての仕事は終了したので、明日には我が家に帰ることになる。
 早くカヤに会って、あのふわふわの毛を撫でたい。それとカナタさんが変な事をしていないかの確認をしたい。

 そんな気持ちを抱きながら、私はコルンの町へ戻り宿を目指して歩いていた。既に辺りは暗くなっており、空には綺麗な星々が煌めいていた。

「ふんふ〜ん♪」

 少し浮かれているのか、気付いたら鼻歌を歌っていた。自分で思っているよりも我が家に戻れる事が嬉しいみたいだ。

 けれど、その浮かれた気分がいけなかった。
 背後から忍び寄る影に気付かず、頭を鈍器のようなもので殴られた。
 強い衝撃が私の頭を揺さぶり、意識が朦朧とする。そして私が気を失わないと知ったのか再度頭を殴られ、遠くに人影がある事を確認したのを最後に、私は気を失った。



   ◇◆◇◆◇



 目覚めるとそこは檻の中だった。まるで籠の中の鳥になった気分だ。それに身体を縛られており、二度も殴られた頭が痛いこともあって、最悪の気分だった。

「よォ、ようやくお目覚めかァ?」

 今ので最悪の気分ではなくただの嫌悪感しか感じなくなった。聞きたくもない声を聞いてしまった。
 取り敢えず、気を紛らわす為に辺りを見渡した。壁にはドアも窓もなく上に登る階段が一つだけしかないことから、何処かの地下室のような場所だと言うことが分かった。これでは助けを呼んでも助けに来てくれる事はまずないだろう。

「オレの事、覚えてるよなァ? 忘れたとは言わせねぇぞ」

 しつこく話しかけてくる男。何か返事をしなければ永遠と話しかけて来るのだろうか。そんなのは嫌なので、返答をしてあげる事にした。

「忘れるわけないですよ。そんな気持ち悪い声」

「ケッ! そんな事を言ってられんのも今のうちだ。おめぇはこれからオレ達のオモチャになんだからよォ」

 私を閉じ込めている檻の外側から下卑た目を向けてくる男達。

「自分がやられたからって、こんな犯罪行為に走るなんて情けないですね。それでも男ですか?」

「はん! 強がるのもこれっきりだ。おい、お前らヤッていいぞ。ただし、下は俺が先だ。分かったな?」

「「「ヨッシャー!!」」」

 男達は檻を乱暴に壊し、私に迫ってくる。
 男達全員が、鼻息を荒くし目が血走っていて、もう手がつけられない状況だ。正しく、彼らは暴れ牛だ。多分、パーティ名はこんな状態をたとえて取ったのだろう。……だとしたらこの男達は何度もこんな事をしているという事になる。

「……こうやって女性を強姦するのは何度目ですか」

「あァ? んなもん三十を超えた辺りから数えてねぇよ」

「この外道……!」

「そんな事言ってるとヤられるがいいのか?」

 男達の魔の手が迫ってくる。縛られて思う様に動けない私は逃げる事も出来ない。
 こうなったら奥の手を――

「フィーさんをッ! 返せぇーッ!!」

 ――そう思った時、大きな声と共に一人の女性がこの地下に走り込んできた。

「なんだてめぇ!!」

「私はフィーさんの友達! 友達が危ない事に巻き込まれているから助けに来たの!」

「おいおい、私じゃなくて私"達"だろ。俺らを忘れるなよ」

 その女性に遅れるように四人の男女が地下室へと入ってきた。

「あ、ごめんね。フィーさんが危ないって思ってたらふつーに忘れてた」

「パーティメンバーくらい忘れないようにしようぜ……」

「なんなんだよてめぇらは!?」

「私達はハピネスラビット! 誠実さをモットーに最強のパーティを目指してる冒険者の一角! 私達を相手に勝てるならかかってきなさい!」

「……誠実さをモットーにしてるんだから、サラッと最強目指しているとか嘘つくはダメだと思うんだが?」

「もうっ! そんな細かい事はいーの!」

 予想もしてなかった、ハピネスラビットのみんなの登場に場の空気が止まった。斯く言う私の動きも止まっている。純粋に驚いているのだ。
 ここは地下で、私は助けを呼んでいない。そうそう見つかるはずがない。なのにハピネスラビットのみんなはこうやって助けに来てくれた。

「みーんな、不思議そうな顔をしとるけど簡単な話やん? ただ、フィーさんが捕まるのを偶然うちらが見とっただけで、どうせなら一味ごと潰そうってなっただけやし。けどまあ、取り敢えず――」


「「「友達攫った罪は重いぞ?」」」


 全員が声を揃えて、男達を睨みつける。雰囲気がいつもの和気藹々としたものではなく、獲物を捉えた獣のようなものへと変わっていく。
 彼女らハピネスラビットは、幸せを周りに与える為に誠実さをモットーにしていると聞いた事がある。誠実であれば少なくとも、誰も気分の悪いはしないし、それ以上に人と接する事が出来れば、周りにも幸せを与える事が出来る。そういうことだろう。
 事実、私はこの遠征で彼女らに出会えてよかったと感じている。一緒にいて楽しいと思える。これを幸せと呼ばずして何と呼べばいいのだろうか。

「みなさん……」

「フィーさん、ちょっと待っててね。こいつらぶっ飛ばすから」

 それを皮切りにハピネスラビットのみんなは戦闘を始めた。持ち前のフットワークの良さを遺憾無く発揮し、暴れ牛を次々に伸していく。
 彼女らは剣の柄や峰で確実に急所を突く事で、暴れ牛を行動不能にさせているのだ。

「ひっ!」

「あー! あの時のおっきい男の人だ! という事は逆恨みでこんな事したんだ! 元々許す気ないけど絶対に許さない!」

「やめっ――」

 怒りを顕にした彼女は遠慮など一切せずに思いっきり溝尾を剣の柄部分で殴り飛ばした。痛みに悶絶する男はその場に蹲り、顔を上げることが出来なくなっている。

「いやー、やっぱりみんなすごいですよね。僕なんて全然で……あ、縄解きますね」

「ありがとうございます」

 唯一、あまり戦闘を得意としない男性に縄を解いてもらった。これで私も思う存分動ける。

「では、私も戦闘に参加を――」

「イヤイヤ、フィーさんが参加すれば俺等も巻き込まれる可能性あっから止めてくんね!?」

「ですが私も鬱憤が溜まってるんですよね」

「それは分からなくもねぇが、全員伸した後で良くね!? お願いだから今は抑えてくれ!」

「………………分かりました。今回は我慢します」

「えらい間があったが分かってくれたようで結構だ! さーてお前ら! すぐ伸してやるから待ってろ! こちとらフィーさんが怖ぇんだよ!」

 私が怖いとは失礼な。ただ、自分の気持ちに素直なだけなのに。

「それはフィーさんに失礼だぞ。お前達にはもう少し礼儀というものを教える必要があるな。こいつを倒してから、みっちり三時間教え込んでやる」

 三時間という言葉に震え上がる男性陣。大男を前にして三時間という言葉の方に震え上がる彼らは、暴れ牛など取るに足らない相手であると感じてるのだろう。
 しかし、先程の言葉に反応を示した男がいた。暴れ牛のリーダーだ。

「俺を倒すだァ? フン、笑わせんなよ。てめぇみてぇなヒョロい奴に何が出来る」

「誰が一人でって言った? お前やっぱり見るからに馬鹿だな。どうせ頭に行く養分が体に全部いったせいだろうな。不憫な事だ。それだから闇夜に紛れて攫おうとするが、目立つ大通りで攫って俺達にみつかるんだ。目の前で攫っていくのを見た時、こいつらアホかと思ったからな」

「ゴチャゴチャうるせぇんだよォッ!!」

 大男は拳を男性の顔めがけて振り下ろした。だが、男性はそれを読んでたかの如くさらりとかわす。

「感情的になるからこうやって俺に攻撃を読まれるんだ。冒険者は盗賊とも戦う事あるから知ってるだろ? 常に平静でいろって。これ鉄則だろ?」

「うるせぇっつてんだよッ!」

「あぁ……親切に教えてやってるのに……やっぱり馬鹿だったか……」

 変なところに落ち込む彼はそれでも大男の振りかざされる拳をするりとかわしていく。しかし、かわすだけで何もしない。ただ、言葉で挑発し後ろに下がっていくだけ。

「もうそろそろいいか。じゃ、ここでお前は倒れてな」

「なっ――」

 大男は対峙していた男性以外の四人に囲まれる形になっていた。
 驚く事に彼は攻撃を避けながら、四人が散って戦っていた場所のちょうど真ん中へと大男を誘導していたのだ。そして、四人が暴れ牛の男等を倒し終わるキッカリの時間にど真ん中へと誘導しきったのだ。

「やっぱり流石ですね。その嫌味なまでの罵倒とその相手を見透かしたような目。僕には真似出来ませんよ」

「それは褒めてるのか褒めてないのかどっちなんだ……そんなことはいいや。やっちゃってください」

「……フンッ、たかが四人に囲まれたところで何も変わっちゃいねぇんだよォッ!!」

 雄叫びを上げて、対峙していた男へと突撃をしようとしたその時だった。

「ほーら、四人だって思ってるから足元を掬われるんだ」

「――あァ?」

 大男は宙を舞い、何が起こってるのか分からないような素っ頓狂な声を上げて壁に激突した。頭からぶつかったので一応死んではいないだろうが、確実に気絶はしてるだろう。

「今まで犠牲になってきた女性を思うともう少し痛めつけたいんですけど……ヤッてしまってもいいですか?」

「ダメダメ! これ以上やると本当に死んじゃうから! ただでさえさっきの風魔法も危なかったんだから!」

「…………でも――」

「ダメなものはダメです! フィーさんは少し落ち着いて下さい!」

「はぁ……分かりました……」

「フィーさんって本当に凄いねー! まさか風魔法まで使えるなんて思ってもみなかったよー! あの男の変な声、思い出しただけで笑えてきちゃう!」

 彼女は心底可笑しそうに笑っていた。純粋な心を持っているというのは羨ましい事だと思う。彼女だけはこの男達がしてきた事を知らぬまま過ごしてもらいたい。

「なぁ、こいつらあれじゃね? 俺達の他に遠征にきたってパーティ。人数多いから東西に分けて魔物の討伐してたんじゃねぇの?」

「確かにナーブ支部長がそう言っとったなぁ。やけど、うちらそんな人影見てないよ?」

「どうせ、遊んでたんですよ。ほら、見るからにそんな格好じゃないですか? あそこの人なんて下半身が見えてますし。あはっ、ちっちゃいですねぇ」

「女性は見てはいけない! これは男の沽券に関わる!」

「あわわッ! で、でもアレって人によって大きさって違うんだねぇ……」

 手で目を覆うが指の隙間からバッチリあれを捉えてる彼女は、そんな事を言った。見られた男は哀れだと心の底から思った。

「それはあれとちゃうん? 女の子の胸がおっきいかちっさいかと同じ事や〜って思おとるけど」

「なるほどね! 私とフィーさんみたいな感じかぁ。なんでかな……悲しくなってきたなー」

「うちはあそこの人と誰のアレを比べたのかは気にせんといてあげるわ」

「けれど、そうは言っても、大体の予想はつきますよね。どうかお二人とも末永くお幸せになってください」

「フィーさんありがとー!」

「あ、ありがとうございます……ってちがーう!」

「「「えっ?」」」

 私も含めて、彼の違うと言う叫びに疑問符を突き立てた。みんな一体何が違うのか教えて欲しいという顔をしている。

「今、俺達がしなければならないのはナニの大きさの話とかではなく、この男達をどうするかって話だろ!」

「「「そういえばそうだ」」」

「本気で忘れてたのか! お前達には時と場合という言葉をみっちり教え込んでやる必要がありそうだな?」

「そ、それだけは堪忍してや。あんたのそれめっちゃキツいんよ?」

「でもそれって真面目にやればいいだけの話だと思わない?」

「ぐぅの根もでーへんわ……」

「ま、とりあえず衛兵にでも突き出せばいいんじゃねぇの? こっちには被害者のフィーさんもいるし、泣く演技でもしてもらえれば一発だろ」

「そうだね。それが一番早いだろうね。じゃ、早速行こうよ。あの男が起きる前に衛兵呼んであのちっちゃいの晒してあげたら、もう悪さしようと思っても出来ないだろうし」

「お前えげつない事考えるな。だが俺は賛成だ。こういう時は遠慮してはダメだからな」

「じゃあグズグズしてられないね! 衛兵さんを呼びに行こー!」

「うちは残ってこん人達の監視しとるわ。それとフィーさんも残っててや。ここで衛兵が来るまで泣き真似の練習や」

「分かりました」

 話は何とかまとまり、私は泣く演技の練習をする事になった。衛兵が来るまでの時間でものに出来るように頑張って、この男達に厳しい判決が下るようにしよう。
 こうして、暴れ牛の起こした騒動は一応の収束を見せたのだった。

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く