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ねこと一緒に転生しちゃった!?

十六夜 九十九

012話 質問してもいい?


 俺が死神と言う本を読み終えてから数十分後、玄関のドアが開いた音が部屋に響いた。
 カヤは誰かが近付いてきている事に気付いていたみたいだが、危険はないと判断したのかそのまま眠りについていった。
 カヤが一切の警戒も見せないと言う事は、玄関を開けたのはフィーでほぼ間違いない。

「ただいま戻りましたー」

「おかえりー」「にゃ〜」

 予想した通りフィーだった。
 彼女は買い物でもしてきたのか、両手で紙袋を抱えた状態で部屋まで上がってきた。

「今から夕飯を作りますから、カナタさんはお風呂を先に済ませてください」

「りょーかい」

 そういう事で、俺は風呂に入る事になった。脱衣場で服を脱ぎ、風呂場へと突入する。
 風呂から上がったらどんな料理が出てくるのか、少し気になる。
 多分だが、ネギ類は出ない。昨日あれだけ言ったのだから、これで出してきたらフィーはアホということになってしまう。
 しかしながら、フィーの作る料理は美味いため期待は高まる。やはり美味いご飯は人生を幸せにすると思う。
 そもそも、ご飯が美味しければそれだけで幸せになれる。女性がスイーツを食べて顔を誇ろぼさせるのと同じ事だ。

 俺は体を洗い、湯に浸かりながら、フィーの作る夕飯の献立を予想してみる事にした。
 紙袋の中にあったもので視認できたのは、様々な野菜だけ。それだけ見るとサラダとか野菜炒めとかそんな感じの見たままの印象を受けるだろうが、紙袋は思ったよりも大きかった。そこから推測するに、あの中にはまだ何か入っているはず。
 まあ、それが何か分からないのだから推測も立てれないのだが、想像するくらいなら別に減るもんじゃないしいいだろう。

 数分して、湯に浸かっていた体が十分に温まってきたくらいに風呂から上がる。さっぱりとして、ぽかぽかする。とても気分が良い。
 こういう風呂上がりは、ビールでも飲みながら枝豆を食べたい。地球に居た時はビールと枝豆は冷蔵庫に常備してた。この俺に抜かりはない。
 だが、果たしてこの世界にもビールはあるのだろうか。アルコールはあるかもしれないが、ビールとなると微妙だ。この世界に麦芽の元になる麦があるとは思えない。
 そうだとしても、ビールに近い飲み物でもあれば嬉しいのだが。俺が働き始めて、お金が入る様になったらフィーに聞いてみよう。

「ふい〜さっぱりした〜。……お、いい匂いがする」

 服を来て脱衣場から出ると、フィーが作っている料理のいい匂いが漂ってきた。ちょっとスパイシーな感じで、カレーに似た匂いだ。
 俺はその匂いに釣られる様に、リビングへと向かう。

「もう少しで出来ますから少し待っててくださいね」

「おう」

 フィーは、鍋でぐつぐつと煮込みながら、傍らで野菜を千切りにしている。
 俺からすれば完全にカレーとサラダというものなのだが、この世界でもカレーとかサラダと言うのだろうか。世界が違えば文化も違うのは当たり前なので、どんな名前になっているのか気になるところではある。

「フィー? 今、何作ってるんだ?」

「スープカレーとサラダですね。ついさっき買ってきたパンと一緒に食べようかと思って。あ、カヤにはスープカレーではなくて、ちょっとしたお肉を用意してるので心配しないでください」

「カレーとサラダってまんま一緒なのか……。じゃあ今日のお昼は……」

「スパゲッティですよ?」

「ですよねー」

 この世界。不思議な事だらけである。食文化、更にはその名称までもが地球と同じ。もしかすると、さっき懸念していたビールもあるかもしれない。

「……出来ました! カナタさんはスプーンとフォークを用意してもらえますか?」

「お易い御用だ」

 頼まれたスプーンとフォークを用意している間に、フィーはスープカレーをお椀に注ぎ、サラダをお皿に盛っていた。

「おー、美味そうだな」

「私の料理ですよ? 美味しいに決まってるじゃないですか」

「いや、知らんがな……」

 初めに会った時に思ったのだが、やっぱりフィーは俺の好みどストライクな訳で。彼女のちょっとした仕草が可愛く見えて仕方がない。
 髪を耳にかけたりとか、両手を上に上げて伸びてたりとかそんな感じ仕草がやばい。
 そんな仕草に俺のスティックが反応する事があるが、魔法使いな俺にはあんなコトやこんなコトは難易度が高い。
 同じ屋根の下、異性が暮らせばそういう気分にもなるかもしれないし、間違いが起きるかもしれない。
 しかし! 俺には右手という恋人が既にいるのだ! 魔法使いという事と相まって間違いなどありえない程に意思は頑丈である。

 と、こんな事を考えておかないと間違いを起こしそうなくらいに、自信満々に豊満な胸を張って威張るフィーは可愛いです。はい。

「じゃあ、食べましょうか!」

「そうだな。フィーが自信満々の料理だし、どんなものか楽しみだ」

 俺が理性を保つ為の戦いに勤しんでいる間に配膳が終了していた。テーブルの上には綺麗な盛り付けがされた料理が並んでいる。美味い料理は見栄えも重要と言うが、確かにそうかもしれない。
 フィーが席に着くのと同時くらいに椅子に座り、二人で手を合わせる。

「「いただきます」」「にゃ~」

 みんなで食事の挨拶をし、早速料理を楽しむ。
 カヤは、フィーの用意したお肉を美味しそうに頬張っている。とても幸せそうだ。
 俺はそんなカヤを見ながら、パンを一口サイズに千切ってスープカレーに浸した。スープカレーを吸ったパンは徐々に色を変えていき、光を黄金色に反射する。

「おぉ! なにこれすげぇ!」

「それ普通だと思うんですけど……」

「俺、ずっと一人暮らしだったけど自炊なんて全然出来なくてな。作れるのはもやしと肉を炒めて焼肉のタレをぶっかけた、特製『男のロマン』っていう料理しか作れなかったんだよね」

 焼肉のタレ以外にも、塩コショウで美味しく頂ける。その場合は『男の一撃』という料理名になる。
 その他、一回一味唐辛子を入れた事があったが、目分量で入れたせいでめちゃくちゃ辛くなった事がある。それ以降、一味唐辛子は封印している。懐かしい話だ。

「うわぁ……」

「ちょ! 引かれると悲しくなるんだけど!?」

「だって……」

「いや、言いたい事は分かるよ? でも俺だし」

「あぁ……納得です」

「フィーって大概酷いよな……。周りの人から当たりがキツいって言われない?」

「えっ、なんで分かるんですか!?」

「マジなのかよ……」

 別に俺だけに当たりがキツいって訳じゃなくて安心した。これがフィーの素みたいなものなんだろう。もっとも、この素がいい事なのかは別な話だが。

「まあいいや。冷めないうちに食べよう」

 俺は手に持っていたスープカレーに浸したパンを口の中に放り込んだ。
 広がるのはカレーのスパイシーな風味としっとりと柔らかくなったパン。パンの固さはこれまた絶妙で、俺の浸していた時間の良さが伺える。
 スープカレーの方は申し分ない程に美味い。どれくらい美味いかと言うと、ものすんごい美味い。

「んめぇ〜」

「でしょう? たんと食べてください」

 その言葉に甘える様に俺はフィーの手作り料理を平らげていく。
 彼女の手料理はお店を開けるレベルで美味しい。相当料理が好きなのだろう。でなければ、ここまで美味いものが作れるはずがない。
 母親の料理よりも美味いのだから間違いない。

「あっ、忘れるところでした。カナタさん、絵本ちゃんと読めました?」

 フィーは思い出した様に今日の勉強について聞いてきた。側につかない状態でしっかり読めたのか心配なのだろう。
 そう思い、素直に話す事にした。

「ちゃんとかどうかは分からないけど、割と読めたぞ。と言うかな『魔人語』がまんま日本語で『標準語』が英語みたいな感じだったから、文を読むのは簡単だった。単語は覚える必要があるけどな」

「そのニホンゴとかエイゴと言うのは分かりませんが、無事に読めたなら良かったです」

 フィーはほっと胸を撫で下ろしていた。
 まあ俺は地球での知識があるから読めるのであって他人がどうかは分からない。もしかしたら魔人語自体読めない可能性がある。
 地球でも日本語は一番難しい言語の一つとして数えられていたし、この世界でも日本語と全く同じ魔人語は難しい部類に入るだろう。

「そうだ。フィーに絵本の事について聞きたいことがあるんだけど、質問してもいい?」

「はい、大丈夫ですよ」

「この大昔しに起きた世界大戦っていうのか分からないけど、この戦いって本当にあった事なの?」

「はい。約二千年前の種族間戦争という世界規模の争いです。今よりも魔法が発達し、この時代にはない技術があった時代での出来事で、地球環境が変わる程の争いだったみたいです」

「なるほどな……」

 とりあえず聞きたい事は聞けた。これを聞かないと本当に聞きたい事が聞けないからな。
 それでは本題に入ろう。

「この絵本には、魔人の街に禁術を放ったって書いてあるけど、そこに住んでいた魔人達は死んだのか? これを読む限り魔人が住んでいた一番大きな街らしいじゃん? そこに禁術ぶっぱなされて魔人達が無事とは思えないんだけど。そもそも現代にどれだけの魔人が生きてるか知らないんだよね」

「そうですね……実を言うと魔人達はどこかに逃げ延びていたみたいなのです。ですが、どうやって禁術の事を知って逃げたのかは世界の謎です」

「へぇー。じゃあ今でも魔人は割と生きてるんだな」

「はい、その通りです。魔人達が、今は西の荒廃した地域で生活を送っている事は一般常識なので、覚えておいてください」

「りょーかい。で、後もう一つ聞きたい事あるんだけどいい?」

「ええ、もちろん」

「『死神しのかみ』って結局なんなんだ? この死神しのかみの件だけ、妙に現実味がないというか、御伽噺みたいな話なんだが」

 俺の気になった所はさっき挙げた魔人と、この死神しのかみだ。魔人についてはさっきの説明であらかた分かったものの、どこにも死神しのかみが関わる話はなかった。
 死神しのかみは種族間戦争の時に何をしていたのだろうか? 戦争後の荒れた世界を旅する事が出来るならばある程度の実力は持っていると仮定してもいいはずだ。
 なのに戦争に参加したという話や活躍したという話は一切ないときた。一体、死神しのかみとは何者なのだろうか。

「それですが、死神しのかみについては一切不明なんです。ただ言い伝えで残ってきた、『また世界が荒廃したならば、私は再び現れる』という言葉だけが残ってるだけみたいです」

「じゃあ種族すら分からないの?」

「そうみたいです。しかも、最近では文献にすら残ってないので、本当は空想の人物ではないのかと言われています」

「マジか。益々死神しのかみについての謎が深まってしまった……」

 一体死神しのかみとは何者なのだろう。
 荒れてしまった大地を修復させる術を知ってたり、荒れた所でも育つ作物の種を常備してたり、死人を蘇生させたり。
 尋常ではないスペックの持ち主のようだ。さぞかしイケメンなんだろうな。嫉妬するわ。

死神しのかみについて考えるのは何時でも出来ますし、料理が冷めないうちに早く食べましょう」

「……そうだな。分からん事を考えても堂々巡りするだけだしな。一旦死神しのかみについては忘れて、このめちゃくちゃ美味いスープカレーをおいしく頂くか」

「大袈裟ですけど、そう言ってくれると嬉しいです」

 フィーの女神の様な微笑みに心が浄化されていくのが分かる。なんと純粋な微笑みなのだろう。
 地球にいたいい子ぶりっ子してた女性の笑いとは全く違う。あの笑いは個人的に恐怖しか感じない。あんな満面の笑みに裏があると思うとゾッとする。
 ただ後輩だった佐倉にはそれがなかったから、割と付き合いやすかった。あの女性達と比べればだが。

「やっぱりうめぇーなー」

 そんな事を言いながら、俺はスープカレーを飲み干した。

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