リバース・シリーズ

シオン@makia-to

『第3話 剣と刀と俺』

「あ、あのーイヴ王女……」
「ん?なぁにシオン?」

左の腕がやけに暖かい。馬車内の気温が高い訳では無い。かといって左腕をやけどしている訳でもない。
この手の異世界ものを少しでも読んだ方ならこの状況が大体想像つくことであろう。

「離れては…くださいませんか?そう掴まれていてはいざという時にすぐ出られません。」
「なぜです?私たちはもう夫婦同然なのですよ?それにまだ魔物の気配はありませんし。」
「いやそれはそうですが…まだ正式に結婚した訳でもないですし」
「それから!私の事はイヴって呼んでほしいと申しましたよね?王女などという堅苦しい呼び方はやめてください。」

なんだ?なんなんだこの生き物!?
俺が悪いみたいになってるけど俺が悪いのか?

「え、いやその…」

真隣を歩いている髭面騎士…もとい『ダン・クルシオ』が厳しい目線を向けてくる。

『わかってるよ…!そんな冷たい目線で訴えてくるな』


イヴからの告白を受けてからはや1週間。
イヴ達と会った場所から北にあるという王都へ俺たちは向かっていた。
途中魔物に襲われることは多々あったがなんなくと切り抜け気がつけばあと半日という距離にまで王都は近づいていた。


「あの、本を読みたいのですが…」
「構いませんよ?」
「いやこの状態ではとても読みに……」

ドンッ!

いきなり横頭部に衝撃が走った。これも何度受けただろうか…クルシオからの合図だ。王女殿下を邪魔扱いしたということについての…


『くっそ…あの髭面!マジ王都に着いたら制裁してやる!鞘で殴るとかマジおかしんじゃねぇの!』

涙目になりながら俺は隣においてある 自称神 からもらった本を開いた。

「その本…やはり私には読めませんでした。」

イヴは言う。先日この本に興味を持ったらしく開いてみたが中身はというとこの世界の文字を読めない俺のため日本語で書かれていた。
その後は解読魔法なるもので解読を試みたが上手くいかなかったようだ。

「それはそうでしょうね」
「この文字…我が王家に伝わる古代文字にそっくりだったのですが…」
「古代文字…?」

俺は疑問に思い聞き返す。ここまで来て古代文字のワードは一度もでなかったからだ。
それに古代文字とは……なんともマニア心をくすぐる

「古代文字とは各王国に存在が確認されている文字の事です。各魔術師が解読を試みていますが未だに成果は得られず暗闇に封印されたままの状態となっております。」

と、解説をしてくれたイヴの羊さん…もとい執事さん。名は『クランク・ロイゼン』。あの告白の現場にいなかったのは負傷者の手当に行ってたためだ。

「それってこんな文字だったんですか?」

そうして俺は開いたページをロイゼンさんに見せる

「んんー。たしかに似てはおりますが少々違う気も致します。私も現物を見ていましたから。ですがこのヘビがのたくったような字はそっくりです。」

そういい 『へ』 という字を指さすロイゼンさん。

『へ……。んー、やっぱ現物見ないとなんとも言えねぇしなぁ。やっぱ着いたらまずその〈遺跡〉に行ってみっか。』

「あのイヴ王女、ロイゼンさん。 王都に着いたらまずその〈遺跡〉に案内してもらえませんか…?
冒険者として…俺個人として気になるんです。」

ダメ元で頼んでみる…。このお願いに関してはイヴもしぶい顔をするしかないようだ。

「あ、やっぱダメですよね。すみません不躾なことを」
「いえ、そんなことはいいのです。ただシオン?あなたは全て・・読めるのですか?」

あ、しまった!2人がしぶい顔したのはそのせいか!

「あ、えっと。は、はい…。これは俺の両親から教えられた文字なんです。」

うん。嘘は言っていない!

「そうなのですか。失礼ですが御両親は…」
「考古学の研究をしていたそうです。今となっては2人はもういません。研究中の事故で…」
「これは失礼しました…。」
「いえ、もう大丈夫ですから。」

俺の両親は考古学の研究をしていた。母は休みとなると俺を呼び出し剣の稽古をつけ…同じく父も刀の稽古を俺につけてきた。当時はなぜ2つの剣術を俺に教えてきたのかよく分かっていなかった。
だがもちろん剣術の特訓だけではない。1ヶ月に1度は家族で旅行に行ったりもしていた。
それに学校が終わると俺は近くの友達や幼なじみとよく遊んでいた。
今思えばみんなと遊んでいたから寂しさを感じなかったのかもしれないな…
両親が死んでからは莫大な遺産が俺に転がり込んできた。そのため俺は両親が死んでしまってからも暮らしていくのに不自由はなかった。


「シオンは学校に行っていたのですか?」
「ええまぁ。俺の行ってた学校ではこの文字は必修科目となっていました。その国ももうありませんが…」
「シオンさんは辛い過去をお持ちだったのですね…すみません。また余計なことを…」
「謝らないでください。俺は別にもう気にしてませんから。あ、そうだ。学校…いや学園の話をしましょうか?」
「シオンの行っていた学校ですか?よければ聞かせてください。」

そうして俺は過去に行ってた学園の話をする。

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俺の通っていた学園は学び舎…というにはいささか語弊があるような所だった。                         
普通の学校で学ぶ科目の他にもうひとつ『デバイス』という科目があったのだ。
平和な考えならおそらくIT系の授業と思うだろう。
そこでは違ったのだ、デバイスと呼ばれる近未来型の兵器で戦いを15歳からの子供にやらせたのだ。
非戦争国家の日本にそのようなことをやらせたのは周りの国々の影響だった、
自衛のため。というのが表向きの理由だったようだが
実際にはいつでも戦争に出せるようにと訓練させるためだったのだ。          
日本に出現する他国のスパイを俺たちに  駆除  させるため俺たちはデバイスを預けられた。
俺が与えられたのは 『紅華 』と『アグネス』だ。
俺たちは必死で戦った。デバイスの授業は教育などという生易しいものではなかったからだ。
デバイスの授業で失敗をすれば拷問まがりなことをされ、戦いで失敗をすれば死がまっている。
子供にそんなことをさせるなんておかしい。と思うだろう。
ここに預けられた子供は皆生きていくのに必死な子供だったのだ。国はそのような子供を見つけては戦争の隊員に仕上げていく。
全てはお国のため。俺たちは従うしかなかった。

俺の通っていた学園はそんな所だった


話を終え数秒したあとイヴが口を開いた

「なんか…シオンが強い理由がわかった気がします。」
「そっか…それならよかった。」
「ロイゼン。シオンを王都に着き次第遺跡に案内してあげて」

と思いもよらない言葉をイヴが言う

「承知しました。」
「え、いいんですか?」
「構いません。どうせ誰も解読出来ないのですし…あなたに見てもらった方がよっぽど早いです。」
「あ、ありがとうございます!」
「いいのですよ…それよりロイゼン。後どのくらいで着くの?」
「あと1時間ほどでしょうかね…?それまでお眠りになられたらいかがですか?」
「そうね…そうするわ。ではシオン?膝を借りますね?」

そういってイヴは俺の膝に頭をのせる…。
いわゆる膝枕だ。

『うわ…めっちゃいい匂いするじゃん。
王女様ってこんないい匂いするんだ…』

ドカッ!

またクルシオが俺のことを殴る…

『俺悪くないよね!!』








小一時間ほどだろうか。
俺たちはようやく王都『イグニス』へと到着した。

「イヴ王女?着きましたよ?」

俺は膝の上で寝るイヴを起こす…

「ん…まだ眠いです…あと少し。」

こりゃ、朝に弱いタイプな人だな…さてどうしたものか。

「シオン殿…しばらくそのままお待ちください。もうすぐ迎えが来ますので。」

そう伝えてくるロイゼンさん。

「迎えって…あぁ騎士団とかのですか?」
「いいえ…シオン殿も驚かれると思いますよ?」
 
何故か含みのある笑をする老執事ロイゼン

「びっくりって…なにが?」
「ほら、来ましたよ?」

そういって俺側の窓の外を指す

「う、うそーん…やば。」

外には無数の騎士達が列をなしてこちらに向かってきている…。いわゆる騎士団だろうか。にしても軽く150はいるだろ!?しかも金ピカ女性多数。てか全員女性じゃね?!

「あ、あれって…」
「我が国が誇る騎士団の中でも七師団と呼ばれる最強の騎士団の一つ『色欲の騎士団』です。」

色欲って…あっちの世界では七つの大罪だったよな?だから七師団か。

「イヴ王女?『色欲の騎士団』が迎えにまいりました。お起き下さい」

そう耳元でロイゼンさんが呟くとイヴは立ち上がるように起きた。

「すぐに出ます」
「ではまず口元をおふきになっては?」

そういってイヴは顔を赤らめながら口元をふく

ドアを開けるとさっきの髭面騎士総員が膝をついた状態でいる。
それに道の真ん中だ。街の人々も『色欲の騎士団』に対して同じような姿勢をとっている。
子供は…まぁ出来るわけないか…。


「あ、ダメ!」

1人の母が道に飛び出した10歳頃の子供を引き止めるように言う。が子供は言うことを聞かない

「おい!そこの偉そうにしてるお前!俺と決闘しろ!」

子供は模擬剣を構えて馬にまたがる女性に怒鳴る

「ば、バカ!あの子供…!」
「もう助からない…」

街の人々は口々にそのようなことを言う。

『どういう意味だ…?』
「イヴ王女…。目を閉じていた方がよろしいですよ…。シオン殿も。」
 
「おい。そこの子供…騎士団の前で剣を抜くのがどういう意味を持つか知っているだろう。今なら不敬罪で許してやろう。剣を納めろ。」
「いやだ!お前らみたいな偉そうにしてる奴はみんな魔族にやられちゃえばいいんだ!」

その言葉を最後に先頭にいる女騎士は馬から降りて少年のもとへよる。

「…ひっ。」

少年の足を小刻みに震えている。

「ならば手加減はしない。」

刹那…女騎士は少年の模擬剣を手で払い除け少年のみぞに1発…拳をいれた。
続いて2発…そして3発。少年の口からは血が出ている。

「…!」

気がついた時には少年の意識はなくなっていた。おそらく最初の1発で気を失ったのだろう。気づいているのだろうにだが女騎士のその手は休まらない。
10発ほど殴ったあと女騎士は少年を地面に投げまた殴り始めた。

「………………ごめんイヴ。我慢出来ないわ。」
「えっ…?」

そう一言つげ俺は馬車を降りた

「これで最後だ…!」

そう言葉を発する女騎士の拳を俺はすかさずに止めた。そしてできる限り威嚇をする

「おい……やりすぎじゃねぇのか?」

女騎士は俺の登場に少し驚いたようだがすぐにまた冷静な表情になる。

「貴様。だれだ?貴様もこうなりたいのか?」
「それも悪くねぇかな?。だが俺はやられるよりやる方がいいね」

そうして拳をはなす

「今日はつくづく運がわるい。」
「そりゃ奇遇だな。俺も今日は運が悪い。」

そうして女騎士は剣を抜く。そしてその剣先を俺の鼻  数センチ前に向けた。

「貴様はどうも死にたいらしいな…。騎士団の制裁を邪魔するとは」
「あんたのは制裁の域をはるかに超えてんだよ。子供相手にこんなになるまで…」
のちに貴様もこうなるんだ。この私の手でな…ありがたいと思え。」
「…ふ。逆かもしれねぇぞ?」
「ありえんはなしだ。」

そして俺も刀を抜く。今回も俺が使うのは『紅華くれは』だ。
何故か…?見ればわかる。
女騎士の剣はいわゆる中世ヨーロッパの剣だ。
ならば打ち合うより一手で決めた方が効率がいい。

「また頼むよ…。紅華」

そうして俺は刀を構える。女騎士は見慣れない剣を見たせいか一瞬驚いたようだった。

『相手が戦闘不能になればいいか…』

「死ぬ準備はいいか?」
「そっちこそいいのか?そんな可愛らしい顔に傷をつけるような真似をして。」
「もとよりこっちは女であることを捨てた身だ!」

そのセリフと同時に女騎士は斬りかかって来た。
上からの一線おそらく俺が受けることを確信しての攻撃だろうが…甘い。

「如月流真剣居合い…                  波紋」 

中段からの斜め横一線…相手の剣を斬るために編み出されたと父からは聞いている。
刹那…女騎士の剣は半分から少し上俺の前を通り下へと落ちてゆく。
剣先はそのすぐあとに落ちてくる。

「そんな…馬鹿な!」

だが俺はそんな感想には興味が無い。

「おいおい…まだ終わってねぇだろ?てめぇは死ぬまでやるってことで納得したんだからな…?」
「な……」

俺は刀を鞘にしまいその鞘を構える。
まず突き…相手の胸元にあてる。
上半身の鎧は粉々に砕けその隙間から鞘が突かれる。

「カハッ…!」

胸骨の中心を突かれたことにより全身を若干な麻痺が襲う。

「そんでもう1発…」

俺はアグネスを鞘のまま取り出し横に振る。
女騎士は横に投げ飛ばされるように倒れそしてまた口を開く。

「き…さま…。な、なにもの…なんだ……」

その質問に俺は一瞬戸惑ったが応えることにした。

「エリュ・シオン     苦労人さ…」

そして俺は倒れている女騎士のみぞにアグネスを降ろした。

「…………………………………」

女騎士は声を発することは無くなった。

「さて…少年は…っと」

俺は少年の元により治癒魔法をかけた。

「『ハイ・ヒール』」

少年を暖かい光が覆う。
怪我がすっかり消え。少年の息も正常になった。

『目を覚まさないのか…なら。』

俺は続いて女騎士の方を振り向く。するとその周りにはほかの女騎士が治癒魔法をかけていた。
俺はそんなことは気にせず倒した女騎士の元に向かう

「な、貴様!それ以上近づくな!」

数名の女騎士が俺に剣を向けてくるが剣先が震えている。

「どいて…どうせあんたらの治癒魔法じゃこの怪我は治りそうにないんだろ?    いいからどけ!」

それでも俺の前に立ちふさがる女騎士

『めんどくせぇ…しゃあない。』
「そこをどきなさい!王女命令です!」

おぉ!ありがとうイヴ!俺が言おうとしたことをそのまま言ってくれた!

「シオン…お願いします。」
「わかってますよ。」

王女命令で女騎士達はやっとその場を離れる。

『正直こいつは治したくないんだよな…フラグになるし。まあ王女様が言ってんだしな…』

改めて女騎士を見る。金髪のショート…下半身は金色の鎧を纏っている。

「『エクストラ・ヒール』」

女騎士を少年よりも眩い光が覆う。

「これで怪我は大丈夫だ。あとはお前らが好きにしな。」

そうして俺はイヴの方をむく。
イヴはなにかをひたむきに隠そうとしている。

「イヴ王女…このまま馬車で城へ向かいましょう。」
「え、えぇ。そのつもりです。」




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