リバース・シリーズ

シオン@makia-to

『1話 俺の行く末』

「ーーーやぁ…君。名前は?」

突然だった。

「君の名前を教えて?」

全身にひどい痛みを感じながら目の前の女の声を俺は聞いていた。
自分は地面との間に赤い液体があることに気がついた

「……君。私のものになりなさい。そうすれば死なずにすむよ?」

何を言っているのだろうか。こいつは?
俺はただ、恋人を守るために戦っていたなかこの女と出会い。そして命を奪われそうになっている。

「ダメかな?」

その女の瞳からはただただ欲望に満ちた目をしていた。
嫌な目だ…

「お…れは……シャルを…はぁ…シャルを…助けねぇと…て…めぇに、てめぇなんかのものに…はぁ……なる…わけ…ねぇだろ!   はぁ…はぁ…」

体はとっくに限界を迎えていると悲鳴をあげていた。
この掠れてとぎれとぎれの声がその証拠だ

「そう…それはざんねん…だったら死ぬしかないね。」

殺される…そう思った。だが不思議と恐怖はなかった。刀で腹を一突きにされていたからだろうか。
それとも今までの人生でこんな体験をしすぎたからだろうか。

「はぁ…やれるもんなら…はぁ…やってみやがれ…!」

刹那…刀は振り落とされた。死ぬ    そう思った瞬間にはもう俺は意識が飛んでいた。











「ーーねぇ!起きてよ…ねぇ!!ねぇってば!」

妙にリアルなこの声を俺はどこか上の空で聞いていた。なにがどうなったのだろうか。
横たわっているのは分かるが、いかんせん地面の感覚とは違う。すごく柔らかい。そしてなにか甘い匂いがする
    
「泉都〈せんと〉!?   泉都!?   」

俺のことを呼ぶ声が聞こえる…
答えたい…でも喉から声が出ない。
ならば手で知らせよう…でも力が入らない。
ならば目で…でもまぶたが重い。
                                           
「みなさま…この度は  『如月 泉都』キサラギ セント様のご不幸。大変お悔やみ申し上げます。」

ご不幸…?   あぁ。てことは俺死んだのか。

「これより 泉都様は49日の旅路を終えたあと、天界へと召されます。みなさま、どうかもう一度泉都様へお近づきになり、一言二言でも言葉を伝えてあげてください。」

はぁ…俺の人生が終わったのか。悔いしか残ってねぇ
もっと腹いっぱいに肉たべたかったな。

「泉都…シャルちゃんは無事だよ。泉都は…ほんとに。ほんとにシャルちゃんを愛しているんだね…?」

「泉都。いっつも無茶ばっかやって…うちらにまで心配かけて…ほんとに…ほんとにバカ…バカバカバカ!!」

バカバカ連呼すんなよ…。でも…はぁ。良かった。シャルは無事か。よかった…

「それではみなさま。泉都様をこれより学園より火葬場までお送り致します。みなさま方はここにてお待ちになっていただきます」

ーーーおい…いま火葬って言ったか!?    やだよ!?火葬って焼くってことだよね!?ヤダヤダやだ!!

「ではみなさま…棺を台の方へ。」

まって!?連れてかないで!!  ちょっと!?ちょっとまって!!ねぇ!?話せばわかる!ちょっと!!


そう思って体に力を込める。     ピクッ
おっしきた!


「ガタンッ!」

音と同時に下に衝撃がはしる。

まって!?         グッ。
きたきた!


「ではこれより泉都様をお連れ致します。みなさま合掌ください。」

クソ…!?右手だけ。右手だけなら!!!


うぉぉぉぉりゃ!!!


バコン!!


右手で棺を破る!


「えっ…!?     え。」


右手を急激に動かしたからだろうか?
身体に力が戻ってきた。


「お…い。    俺は…俺はまだいきてるぞぉぉぉ!」


これ以上にないほど怒鳴った。





とまぁここまではいい…ここまではいいんよ。
でもさぁ……あのね?なに。運ばれてるからまだ屋内かいたとしても車の中だよね?
なんで俺小鳥のまう青空見上げれてんの…
いつの間にか下からのガタガタというような衝撃は無くなっていた。


恐る恐る体を動かす。先程のようなだるさなどはなく
むしろ先程より軽いような感覚もする。

「…な、なんだこれ……」

外を覗いた。
適切な回答でいえば今俺の目の前に広がる光景はまさに『異世界』という名が相応しい。
周りにはコンクリートで出来ている道はなく。かといって電線などもない。家もなければ周りには人の気配もない。周りは広い草で覆われていた。

「どこだよここ…。俺はたしかにあいつらの声を聞いていたはず……。って。おいおいおい…」

なぜだ。今の今まで寝ていたはずの棺は…?

「はぁ。なにがどうなってんだよ…。」

途端に俺はそこにうずくまった。

『…い。おいお前さんや?』

途端に声が聞こえた。漫画によくある脳に語りかけてくるようなやつだ。

「だれだよ。こちとらちょっと疲れてんだ。…あとにしてくれ。」
「ほほー…ならばこの儂が全てを知っているとしても?」
「ーーーなに?」

途端の思いもよらない言葉に俺は反応した。

「だから儂が全てを知っていると言っているのだ。君のことも。そしてその世界のことも。   だ。」

その世界…?てことはここは日本じゃないってことか。

「その通り。そこの地は君のもといた日本という国ではない。そこの世界の名は『イグニス』と呼ばれておる。」
「イグニス…」

何故だろうか。この言葉に妙な愛着がある。
が声の主は話を進める

「そこの大陸にある1番大きい国だ。軍事力、経済力においては君のいた日本も上回るじゃろう。 」
「いやマジかよ……。めっちゃ強えじゃねぇか」
「だが…じゃ。あくまで軍事力は人の数の話じゃ。兵器などを入れればその国は豆粒のようなものじゃがな。」

豆粒って……ひでぇな。

「豆粒よりも小さいかもしれんぞ?」

さっきから俺の考えてることに反応してっけどもしかして…いやまさかな…

「そのもしかしてじゃ。儂は君の考えてることは手に取るようにわかるわい。」
「……あんた誰だよ。」
「ようやく一番大事なことに気づいてくれたな。
儂の名は『ゼル』まぁ神様じゃな。」

だから俺の考えてることがわかるのか…この変神様は

「おい。変神へんじんとは無作法なやつじゃな。」
「だってそうだろ?人の頭ん中覗いてる変人?」

もとい神様じゃなかった。

「儂も怒る時は怒るぞ?」
「今俺を殺すのはまずいんじゃねぇのか?」
「どういう意味じゃ?儂が本気ともなれば君など跡形もなく…」
「できねんだろ?俺はその手の小説なら日本で嫌という程読まされた。俺がここに呼ばれたってことは魔王かなんかを退治してくれってことなんだろ?」
「……………………」
「さらに言えば…だ。たぶんあんたは俺の知らぬ間に【スキル】でも与えちまったんだろ?だから迂闊には俺を殺せない。」
「お主…なかなかの洞察力じゃな。その通り。君を呼んだのはその世界『イグニス』を救ってもらうため
そして儂は君を殺すことはできない。正確には君に手を出せないのじゃ。」
「手を出せないってそりゃどういうことだ?」
「儂が君を召喚する時。何者かが召喚の義を邪魔しに来たのだ。幸いにも君には【スキル】を与えてあったからいつでも召喚できる体制にあった。だが少々手荒な召喚になってしまったがな。そしてその世界に我々神の手はくだすことができんのだ。」
「召喚する時……それって俺があっちの世界の記憶を見ていた時のことか…なるほどな。」

大体のことは把握出来た。てことはこの後、強制イベントがあるんだろうな。

「わかった。その任は受けてやる。だがひとつ足りやしないか?」
「足りない?なにがだ?」

神様でもやっぱわかんないことはあるんだな。

「報酬だよ…。タダで人に死ぬようなことさせるわけじゃないよな?」

数秒の沈黙。
そしてゼルは話しだす

「ーーふ。フフフ…なるほど。やはりアヤツ・・・らの……。よかろう何が欲しいんだ?」
「別に欲しいもんはねぇ。だが俺が魔王を討伐したら俺の願いをひとつ聞いてもらう。」
「よかろう。では君にはこの世界の知識をまとめた本を送ろう。それと武器が必要じゃな…ほれ。」

そういって俺の目の前にひとつの本と刀二本がが落ちてきた。

「…変神様よ。あんたなかなか良い奴だな?」
「当然じゃろ?あと儂のことはゼルと呼べ」
「はいはい。」
「はいはいって。お主…次言ったらって…おぉい!話を聞かんか!」

もう俺は変神様の声など無視していた。目の前に置かれた本の隣…俺が向こうの世界で共に命をかけて戦っていた愛刀【紅華】ともう一本。日本刀とは相反する剣【アグネス】だ。

「なぁゼルの爺さん。こいつらをどうしたんだ?」
「あぁ!?この子らは君が死んだ後君の墓の前に置かれていたのだ。だから魂をこちらの世界に呼んで君と一緒に戦ってもらおうと思ったのじゃ!」

やけに自称神様とやらは気がたっているらしい。誰のせいだよ。

「なるほど…な。【紅華】【アグネス】また宜しくな…前みたいに死ぬのはゴメンだ。」
「ーーよかったのう!この子らは君にまた、会えると期待してそちらに行ったのだ。これからも大事にしてやるのじゃぞ?」
「あたりまえだ。爺さん。ありがとな?」
「例には及ばん…それとな?お前の【スキル】についてじゃが儂が椀飯振舞してやったからチート級に強くなってるはずじゃ。今のままでも魔王と互角に渡り合えるはずじゃ。」
「そりゃありがと。」
「さて、時間じゃな。落ち着いたら教会に来るのじゃぞ?約束じゃ…」



そういって…ゼルの声は消えた。


コメント

  • シオン@makia-to

    ごめんなさい。
    初投稿なもので『ルビ』を間違えてしまいました。
    読みにくいとは思いますがこれから少しずつ直していくので応援よろしくお願いします!

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