ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~
3章16話 変態淫魔のバーレスク(2)
ロイが真っ先に疑ったのは色仕掛けと、女子トイレに向かった自分の判断ミスだった。
とはいえ、まだコミュニケーションによって現状を打破することは可能なはず。ロイはなんとか自然な微笑みを維持して返事をしてみることに。
「ご、御機嫌よう、エルゼさん、ユリアさん、ノーラさん」
「む?」「あら?」「ん?」
「? どうかしましたか?」
「いや……、差し出がましいようッスけど、個室、空いているッスよ? すませないんッスか?」
「 」
「シャ、シャノンさん……、エルがすみません……。無神経でしたよね……」
「こら、エル、そんなこと言っちゃダメです」
「痛っ! 淫魔とはいえ、いきなり頭を叩くノーラの方が、貴族としてどうかと思うんッスけど……」
「い、いえ……、こちらこそ突っ立っていたのは事実ですし。少しボ~っとしてしまって」
(ふむ、しまった。考えてみれば当然だったね。ボクがトイレに入ったのにトイレをしなかったら不自然だし、ということは、まぁ、音を聞かれるということと同義だろう。そして向こうだって一度入ったら、トイレしないと不自然だから……、……、うん、各々、隣に同級生がいる状態ですることは避けられない。しまった。本当にしまった)
相変わらず常識人のつもりだが、根本的には変人のロイ。
明らかにピントがズレた思考をしており、ツッコミ役が不在だった。
(どうしよう? 尾行について遠回しに訊いてみる? っっ!? いや! 待て待て。トイレに入ったのに遠回しな会話に花を咲かせる方が不自然だ! 性別を問わず、花を摘む方がよっぽど自然だと思う!)
羞恥心を捨てることを決定。
もとよりトイレ自体は最初からしたかったのだ。ここで男の娘状態なのに漏らしてしまう方が、よほど社会的に終わってしまうだろう。動揺している時に片付けを手伝わられたら、任務の方まで終わってしまう未来さえある。
が――、
そこでユリアが――、
「あっ、なるほど。もしかして貧血ですか?」
「えっ? あっ、はい、実は今朝から」
「大変ですねぇ。かなり重い感じですか? 本当に重いなら保健室に……」
「いえいえ、そこまで重症ではありませんので、ご安心ください」
「ならよろしいのですが……」
(よし! 向こうが勝手に勘違いしてくれた!)
ロイは心の中でガッツポーズを繰り返す。
実は状況が悪化していることに気付くことなく。
「えっと……、シャノンさん、あれは?」
「ノーラさん、そのぉ……あれ、とは?」
「その……、女の子の日に必要なあれです。貧血、なのでしょう?」
(あっ……、あっ……、そういう勘違い……)
別にロイは女の子のそういう日を侮っていたり、小馬鹿にしたりして認識しているわけではない。むしろアリスやマリアの様子を知っているので、自分にできる最大限の配慮をしてあげたいと思っていることが多い(シーリーンは種族の関係で、特に困っていなさそうだが)。
が、今だけは少し困惑してしまう。その勘違いは任務に支障が出かねない……、と。
「もしかして……、割と急にきちゃった、とかッスか?」
「大丈夫? 持ってきている?」
「ち、っ、違いますよ? ポケットの中に入っていますから!」
「えっ?」「ポケット? 直に?」「ポーチとかじゃなくて……」
(おっと、これはマズイ……)
状況に慣れてきたため、ロイは先ほどもよりも冷静に上手く演技できるように戻ってきた。
「その……、ポーチを持ってトイレに向かうと、男子が、その……」
「あっ、ご、ゴメンなさい……。そういうことだったんッスね」
「シャノンさん、今度そういうことがあったらわたくしたちに言ってくださいませ」
「えぇ、流石に、そういうのに爵位や派閥は関係ないわ」
「はいっ、ありがとうございます」
(我ながら、途轍もなく変態みたいな緊急回避しちゃったなぁ……)
なにはともあれ、これで大丈夫だろう。
ロイがそう安堵した、次の瞬間のことだった。
「でも、直にポケットに隠しちゃうのはダメだから、はい、これ。あげるね」
「 ぁ」
ノーラが持っていたポーチからロイに手渡した。
「シャノンさん?」
「いえ……、少し、自分が気持ち悪くて……。泣きたくなって……。情けなくて……」
「うん、わかる、わかる。大丈夫だから」
「どうするッスか? やっぱり保健室、行きます?」
「みんな似たようなものです。2日目の夜とか、わけもわからないのに涙が出ちゃいますし、自分が悪いわけでもないのにすごく痛いですし、吐き気もしますし」
(違う。そうじゃない。女の子の日は本当に大変そうだし、いつだって、なにかできることをしてあげたいと思うけど、今だけはその話題をやめてほしい)
ここでロイはなんとかして会話を中断させるための思考を加速させた。
結果、個室に逃げることに。
「あっ、すみません……、そろそろ……」
「ううん、こっちこそ」
再三以上になるが、向こうはロイがトイレに入る瞬間を見ているはずだ。
つまり、ここで個室に入らないと明らかに不自然。
これ以上違和感を持たれないために、ロイはやむを得ず女子トイレの個室に入った。
が、恐らく両隣と、片方のさらに隣に――、
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