ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

3章3話 情報確認のティータイム(3)



 素直にロイはそう思った。
 むしろ彼の方からすれば、なぜグーテランドの国民であるマリアが、たった1回の説明で理解、少なくとも概要の暗記ができるのか信じられないレベルだ。

 自分が持っている知識をマリアに教え始めているとはいえ、明らかに、それ以外の時間にも自習しているのだろう。
 言わずもがな、マリアがそこまで頑張る理由は弟と妹を守れるようになるためであり、その弟に率直に褒められた彼女は――、

「ほ、本当ですか!?」

「えっ? うん、いくら原子論が確立されていると言っても、まだ蒸気機関レベルの技術力の国の住民でこれを理解できるのは、本当にすごいことだと思うよ? 前世の記憶がなかったなら、絶対にボクなんかじゃ太刀打ちできない」

「~~~~ッッ、ふ、ふ~ん……、そ、っ、そうなんですね……。ありがとうございます……」

 一瞬、嬉しすぎて身を乗り出してしまったが、すぐに姉としてマリアは子供っぽさを封印し、できる限り大人びた態度を取ってみせることに。
 頬はほんのり乙女色に染まっているし、瞳は微妙に熱っぽく潤んでいるし、ロングヘアーの先端を指で弄るし、正直、まるで大人の対応というか、落ち着いた対応なんてできていなかったが。

「おやおや~? お姉ちゃんの顔が真っ赤になっているんだよ!」
「な、っ、なな、っっ、そんなことありませんからね!? 弟くん! 違いますからね!? 決して、弟くんに褒められて嬉しいとか、照れくさいとか、っ、決して……、そんなんじゃ……、うぅ……」

 珍しくシーリーンやイヴのように、ぐぬぬ……、と、言いかける。
 実際に声に出さなかったのは姉としての見栄だろう。

「さて! ところで! どうですか、弟くん。お友達として、貴族の屋敷には潜入できそうですか?」
「うん、順調だよ。アリシアさんに報告して許可が下りたら、もうその日か次の日のうちに、友達としてお邪魔しようかな、って。実際、今日だって理由を付けて断ったけど、何人かには誘われたし」

 スパイだからといって全ての貴族を根絶やしにするわけではない。
 腐敗貴族が目立って記憶に残りやすいというだけで、こちらにも真っ当な貴族は存在する。逆に、グーテランドにだってジェレミアのような貴族の子息が存在しているのだ。それを認めないことは決して聡明とは言えないだろう。

 ゆえに、処理する必要がなければ、得られる情報を得て、あとは近くもなく遠くもなく、適切な距離で帰還するその時まで接するだけだった。
 加えて、予定にない貴族の殺害は自分たちの存在を露見しやすくする。感情的に考えても合理的に考えても、不必要な殺し合いは避けるべきだった。

「あ~あ、見てみたかったよ、男子にモテモテのお兄ちゃんを」
「えっ?」

「「えっ?」」
「いや、男性にはなぜか2人からしか誘われなくて、残りは全員、女性だったんだけど……」

「「は?」」
「なんでそんなに迫真な声を……? だ、だって! ボクは今、女の子として通学しているんだし、むしろ異性として認識されていないぶん、女の子に友達として誘われるのは当然だと思うんだけど!?」

 なにを言っているのかサッパリわからないけど、とにかく衝撃的なことを言われた。
 そんな気がするイヴとマリアは、えっ? なんで女装しているのに女の子に囲まれるの? 理屈はわかるけどなにかがおかしくない? 喰い違っていない? としか思えず――、

「女たらしだよ! わたしという女の子がいるのに!」
「痛い痛い! 割と本当に痛いんだけど!?」

 言うと、イヴはロイの頬を割と強めにつねりながら引っ張った。
 翻りマリアの方は――、

「……ふん、弟くんの周りには女性がたくさんいるようで、よかったですね……」

 拗ねていた。
 が、マリアは自分が拗ねているのは認めたが、嫉妬までは認めなかった。

 イヴがロイと結ばれた。
 それによって『弟と付き合えるわけがない理由』が失われたことに、マリアはまだ、どう向き合うのか決めかねていたようである。

「それにしても、なんだか意味深なんだよ」
「? なにがですかね?」

 珍しいわけではないが、常日頃の彼女らしくない感じで、イヴが神妙になにかを訝《いぶか》しむ。
 対して、マリアは今までの話を聞いて、特になにも違和感を覚えなかったので、キョトンと首を可愛らしく小さく傾げて訊いてみた。

「流石に昔、不登校だったわたしでも、音や光がなにかを媒体にした波ってことは知っていたんだよ」
「あれ……? 媒体と、波って……」

 瞬間、ロイは察した。
 彼と、並びに彼と同じように『とある事実』を察したマリアに目で答え合わせを求められ、イヴは頷く。

「うん、この世界では初等教育の時点で習うよね? 『3つの媒体』と『3つの波』を。その復習は王都で学院に通い始めてからも、間違いなく何回もしたし」
「空気と、電磁波と、魔力……。そして音と、光と、魔術……ですよね?」

 それをキチンと明言しておくマリア。
 続いて、ロイはそれを聞いた瞬間、また別の事実を思い出す。否、思い出すのではなく、普通に覚えていた情報との関連付けに成功する。

「っっ、そういえば、去年、アリスと一緒に受けた占星術の講義で……」

 いつも真面目に講義を受けていたのが功を奏したか。
 ロイはトパーズの月の13日85話目、その占星術の講義のことを確かに覚えていた。具体的には――、

「――占星術の教授も、間違いなく講義中に、共鳴って現象について語っていた」
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、たぶんそれって」
「えぇ、偶然ではないでしょうね」


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