ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~
2章22話 原理不変のアーティファクト(2)
「そ、それなら金とか銀を使わなくても、鉄とかアルミニウムで……」
「実際にそういう材質のアーティファクトもないわけではないですね。と、いうより、民間に比較的流通しているアーティファクトは、十中八九、鉄とかアルミニウムで製造されています。とはいえ、複雑な術式、効果が絶大な魔術を宿した戦略上、重要度の高いアーティファクトであればあるほど、壊れたり、誤作動を起こしたりすると困りますからね」
「? ?? ??」
ちなみに、マリアもアリス側の女の子だったようである。
レナードによって解消されたシーリーンの脳内のクエスチョンマークが再度、増殖を始めた。
「つまり姉さんが言いたいのは、繰り返し使う大切なアーティファクトになればなるほど、酸化や硫化――言ってしまえば、例え表面のみでも錆びるのを防ぐために、貴金属を使う必要が出てくるよね、ことだよ」
「な、なるほど……、錆びちゃダメなんだね……」
「特に金は展性と延性っていう項目に優れて、金属の中でも軟らかいのに、イオン化傾向は全金属の中で一番小さいからね。要するに、腐食しづらいのに加工しやすい、望んだ形状のアーティファクトにしやすい、ってことなんだけど、この性質を利用すれば万が一、術式の間違いが許容範囲を超えていた時でもリカバリーしやすいんだ。エラーが確認された前後まで局所的に時間を巻き戻す方法には正直関係ないけど、錬金術を使ったり、あとはもう究極的には、物理的に形を変えたりする場合だと」
「そうですわねぇ――、一例として、シーリーン様ご本人やロイ様、イヴ様、マリア様など、七星団学院の学生の中でも、寄宿舎生に渡される念話のアーティファクト、あれは鉄ですわ。アーティファクという魔術的機械はいわゆる技術料が発生しますので、どうしても高額の商品になってしまいますが、素材そのものは割と簡単に入手できますの」
「そ、そうだったんだ……」
「他には――金はロイ様が仰ったとおり展性と延性に長けておりますので――『極限まで作製失敗の可能性をゼロにしたい』『その上で、重要なアーティファクトになる予定だから、酸化や硫化を防ぎたい』――そういうコンセプトのアーティファクトに採用されますので、それこそ、先ほどアリシアが見せてくれましたポケット共有のアーティファクトが、見た目通り金で製作されていますわ。あれの内部には亜空間創造、空間拡張、空間共有、その他諸々の空属性魔術の術式が込められておりますので」
「う、うん……、リクエストによって素材が変わってくる、ってことなんだね……」
わざわざ初歩的なことを詳細に説明してくれたおかげで、なんとかシーリーンは以上の説明の全てを記憶できた。あとは復習するだけである。
と、ここまでで説明を終了にさせておけばよかったものの、アリシアとシャーリーがその応用知識をシーリーンに教えようとした。微妙に、善意からくる説明なのが厄介である。
「そしてルビーやサファイアなどの鉱物、まぁ、それぞれ決められた化学組成を持った物質の場合、実は装飾品としての価値とは裏腹に、あまりアーティファクトには採用されません。製造方法を考えれば当然のことですが、望む望まないにかかわらず、結果的に乾式製錬をしてしまうことになりますので。ルビーやサファイアなどでアーティファクトを作る場合、一流の錬金術師の協力が必要不可欠で、その分の費用対効果がどうしても落ちます。あくまでも私の個人的な感覚ですが、強いてランク付けするなら、10段階評価で6とか7、そのぐらいの有用性のアーティファクトに採用される傾向が強いです。とはいえ、逆に考えれば予算さえあれば素材として一級品ですので、七星団の上層部や、王室から支給されたルビーやサファイアのアーティファクトは非常に強力と覚えておいてください」
「最後――そしてダイヤモンドが一番重要で、あれは炭素の同素体だから、純度に程度の差こそあれ、基本的には炭素のみで構築されている。例えば、これはロイ様の記憶の中にあった知識なのだが、ルビーやサファイアなどのコランダムは酸化アルミニウムの結晶で、そこに不純物としてクロムが1%混ざればルビーに、鉄とチタンが混ざればサファイアになる。要するに、金や銀、銅や鉄と比較すると、製造に際して計算に入れなければならない要素が多いのですが――、では、ダイヤモンドの場合はどうかというと、やはり一流の錬金術師を起用することになるが、その物質としての性質上、国宝級、もしくは戦略兵器級のアーティファクトの素材になる傾向が強い」
「????? ?? ??」
わけがわからないシーリーン。
アーティファクトの製造方法さえほんの3分前に知ったばかりなのに、カガクソセーとかドーソタイとか言われても、理解が追い付くはずがない。正直、シーリーンにとってその2つは、生まれてから初めて聞く言葉だった。
「ハァ……、アリシア、シャーリー、一度にいろんなことを言い過ぎだ。シーリーン、とりあえず、アーティファクトの作り方と、ロイが言ったように、大切なアーティファクトほどその素材に貴金属が選ばれること、あとは、いちいち金属を液体にして詠唱しなければならないから、非常に効率が悪いことに、現段階では職人の手作りであること。この3つだけ覚えておけばいい」
「わわ、っ、わかりました!」
地味にエルヴィスが有能だった。
実は彼の場合、聖剣使いではあるものの、普通に特務十二星座部隊として必要なレベルの魔術を(自分が使えなかったとしても理論として)勉強し終わっている。が、しかし、そのような自分を基準にせず、アリシアとシャーリーよりも一般人の平均知識量を理解して、話す相手にあわせて基準を変えることができるのが彼なのだ。
「それとオマケ情報だけど、水を氷に変えてアーティファクトを作ることだってできるし、すごく頑張ってすごく冷却魔術を使えば、気体でアーティファクトを作ることも可能なんだよ!」
本当の本当にオマケ情報を明かすイヴ。
シーリーンはかなり混乱していたが、一先ずエルヴィスに言われた3つの知識だけは大丈夫だったので、もうそれ以降の情報については聞かないし、考えないことにした。
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