ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~
2章14話 解答保留のプロブレム(5)
「2人は拠点到着後、その現地の地図を作製してください。もちろん変装して。すでに私はそれを持っておりますし、先行部隊からの引継ぎリストにも載っていますが、それでも地図は最新版である方が好ましいです。既存の地図をベースに修正をお願いします。修正箇所が全くない場合は、そのことを私に報告を」
「「はい!」」
「地図作製後、2人には諜報活動の本命、情報収集を行ってもらいます。と、言いましても、いきなり軍事拠点に忍び込んで機密情報を盗め、なんて言いません。言えるわけがありません。なぜか6人は全員が全員、戦力として上澄みですが、訓練不足が否めない新兵ですし。差し当たり、私が指定したポイントに、もしくは人物に、とある何種類かのアイテムを設置していただく予定です」
「「はい!」」
「さらにレナードさん、あなたにはアスカロンを使っていただき、貴族同士の軋轢を表層化してもらいます。遅かれ早かれ爆発する火種ですし、今回、我々で利用してしまいましょう。貴族が勢力争いをしている間に、前述の4人が任務を遂行します。補足説明として、貴族の中には前述のレーヴァテインをほしがっている派閥もありますので、大なり小なり、ルークさんを中心に暗躍することもある、と、覚えておいてください」
「勢力争いの黒幕、か。わかりました」
「あと、女装の件、改めてお願いしますね? きっと違和感なんてないはずですから」
「…………か、確認、ですが……、誰が得するんですか……?」
「恥ずかしいのは充分に理解できますが、ここにいる全員にメリットしかないのでは?」
「………………」
「最後に私とイヴさんは――」
「う、うん!」
緊張しているものの、やる気は充分のイヴ。
アリシアは彼女の真剣な瞳から目を逸らさずに――、
「待機です、拠点にて」
「………………えっ?」
「外出禁止、引きこもりです」
大好きなお兄ちゃんの役に立ちたかったのに……、いっぱいお兄ちゃんに褒めてほしかったのに……、と、そんな感情がヒシヒシと伝わってくる大粒の涙をイヴは浮かべた。
実際、イヴが可哀想、泣きそうになっているか否かは置いておいて、ロイからしてもこれは意外だった。向こうでイヴが狙われるのは目に見えているが、アリシアなら、なんらかの手段を講じているはずだと考えていたばかりに……。これでは隊長であるアリシアを除いた場合の最大戦力を、1%も運用できていないことになる。
「……うぅ、わたし、かなり戦力になるはずだよ?」
「最後の破壊工作を除き、諜報活動に戦力、少なくとも大規模破壊力なんて求めていません」
「で、でもでも、戦闘以外でもやれること、多いよ?」
「重々承知の上です」
「がーん!」
涙目になったイヴはロイに抱き着いて傷付いた心を癒そうとする。
そんな妹の頭を、ロイはよしよし、と、優しく撫でてあげた。
「さて、ロイさん」
「はい?」
「再三の説明になりますが、ロイさんは厳密には、今回の任務の正規メンバーではありません」
「えぇ、国外追放されるわけですから」
「つまり、普通なら行えないような任務も、今回に限って言えば、書類として残す必要もなければ、それを七星団上層部に報告する必要もないでしょう。部外者がなにをしたところで、我々の邪魔さえしなければ誰にも咎められることはありません」
「…………っ」
「敵の領土のど真ん中だからこそ、できることもあるはず。特に、ロイさんの場合はそうですよね?」
アリシアがそれを口にした瞬間、シーリーン、アリス、イヴ、マリア、ヴィクトリア、クリスティーナの6人が少しだけ怯える。
また、ロイが酷い目に遭ってしまうのではないか、と。
だが、別段、その女の子たちの不安を気にせず――、
事実、裏ミッションとはいえ、本当に気にする必要がないから――、
「ロイさんの前世の知識、それを使って作れる物を全て作ってしまいましょう♪」
「なん……だと……っ」
瞬間、ロイの身体が歓喜に震えた。
錬金術があれば銃を作れる?
バイクや戦車も作り放題?
少なくともロイの場合、現実はそこまで甘くなかった。
まず、ロイ本人に錬金術の適性はない。そして自分が転生者ということも、心の問題で話せずにいた。ようやく話せるようになったと思いきや、七星団内部にスパイがいることが懸念され、アリシアとエルヴィスに箝口令を敷かれてしまうハメに。王族になったあと、アリシアかシャーリーに手伝ってもらえばなにかしら作れるとは考えていたが、工房と倉庫をどこにするか、という問題は避けられずにいた。誰かに亜空間を創造してもらい、その内部でやる、という案も考えていたが、圧倒的な魔力反応が感知されるし、それが魔術である以上、いつかは効果が切れる。その時、工房と倉庫の中に作った物が残っていたら最悪だし、それなのに、その場合、残っていない発明品が1つもないわけがない。
ゆえに、ロイは――、
嬉しさでもはや涙を流しながら――、
「グス……、えぐ……」
「えぇえええええ!? ろろ、ロイさん!? 私、なにかお気に障ることを!? あっ、まさか故郷のことを……」
「お姉様がロイを泣かせた……」
「アリシア、ロイに限らず、戦時中に故郷の話題はデリケートだと、あれほど……」
アリスがジト目でアリシアを睨み、エルヴィスは呆れたようにその発言を軽く責める。
「ろ、ロイさん。すみません……、私の配慮が――」
「――ボクの培ってきた知識が、役に立つんですね?」
「えっ? えぇ、はい……」
「――――」
「あっ、あの……」
「――――、こ――に――素――」
「えっ? こ? に?」
「こんなに素晴らしいことはありません! 拳銃だろうが無線通信機だろうが、カメラもレコーダーも自動車も、可能な限り! ぜひ! 全て教えさせてください!」
まるで少年のように瞳をキラキラさせるロイ。
それはまるで太陽のような輝きであった。
ロイが別に悲しんでいないことを理解すると、スッ、と、アリシアはアリス、次にエルヴィスに視線をやる。
……2人とも、無言のままアリシアから目を逸らしたが。
「理解――つまりロイ様の知識をもとに、知識豊富な魔術師であるアリシア様と、ロイ様と同郷のイヴ様が異世界アイテムを量産する、ということ?」
「そういうことです」
「質問だよ! その場合、倉庫はどうしますか?」
「これを使います」
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