ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

2章13話 解答保留のプロブレム(4)



「それでようやく本題ですが、ロイさんとマリアさん、2人には偽物の戸籍と学籍を用意しますので、軍立の学院、具体的にはルーク・ノルトヴェスト・アハトドライノインと同じ軍立第35騎士及び魔術師育成学院に通ってください」

「えっと……、もしかしてボク、女装して……」
「――早速話は逸れますが、数年前、シャノンという女子学生のご家族が夜逃げすることになりました。理由は借金です」

「あぁ……、買い取ったんですね、いろいろ」
「はい、こちらの条件は借金を肩代わりするから、娘の戸籍と学籍をください。費用も出すから遠くに引っ越してください。あっ、シャノンさんに罪はないので、こちらで安全なところに匿わせてください。だいたいこんな感じです。私も報告書を読んだだけですが」

 ふと、ロイがもしやと思い、自分の任務が記載されているページを確認すると、そこにはシャノンという女子学生の写真が掲載されていた。
 当然、シャノンの直近と当時、その両方の身長、体重、趣味、特技、得意科目、苦手科目、話し方の特徴、身体の動かし方の癖、そしてスリーサイズやほくろの位置までもが赤裸々に綴られている。無論、トドメと言わんばかりに、彼女の過去も。

「敵国にお金を流したんですか?」
「偽造硬貨です。あと、その返済の様子をアーティファクトで記録して、その闇金を運営していた貴族をよく思っていない貴族、次に警邏庁の順番で通報。最終的には家宅捜査で闇金の他に硬貨偽造の罪で没落エンドを迎えました」

「シャノンさんは今……」
「こちらに迎え入れたあと、メチャクチャお風呂に浸かっていただき、美味しいディナーを食べていただき、可愛らしい服を献上させていただき、落ち着いた頃にまとまったお金と、地方の町のそれなりの家を渡しました。もう魔族領には戻れない! 戻りたくない! グーテランド、サイコーっ! と仰っており、この間、1人目のお子さんが生まれたそうです。魔術を使い調べたところ、ウソは吐いておらず、知っていることは限られていましたが、それでも自分の情報を全て吐いてくれました。軍立の学院に通っていたのも、愛国心からではなく、卒業後、即行で宿舎に移り、お金をもらいつつ親元から自立するためでしたし」

 と、ここで、ロイに代わってレナードが質問を開始する。

「こういうことはあまり言いたくねぇが……処理、しなかったんですか?」
「私の方もこういうことをあまり口にしたくありませんが……積極的な捕虜、ということです」

「口と腹が増えると思いますが?」
「ですので、こちらに迎え入れたシャノンさんに限らないみなさんには、例外なく農業や牧場を営んでもらっています」

「毒を仕込まれる可能性については?」
「魔族領なら危険ですが、ここは普通に王国内部です。検査の魔術は使いたい放題ですし、本人に毒見だってさせています。加えて、王族や七星団の食堂には提供されません。もちろん、こちらは本当の本当に身の安全どころか、家とか服の初期投資もしておりますので、毒を仕込まれることなんて滅多にありませんし、それによる死者は戦争開始から今年のダイヤモンドの月の時点で、本当にまだ0人です」

「本人たちでさえ無意識のうちに行動や思考に、なんらかの支配が及んでいた場合については?」
「保険は当然、用意してあります。そしてシャノンさんに限らない積極的な捕虜、彼らの村なり町は、仮に魔王軍の軍人が単体ではなく軍勢として攻め入った際、いくつかのパターンが想定されますが、基本的には王都に辿り着くまでの道中にありますので……、まぁ……、いざという時、救援が間に合わない場合は、彼らごと……。コホン! 無論、個人的には、使わないまま戦争が終わってほしいものですが」

「わかりました、ありがとうございます」
「いえ、必要な質問でした」

 レナードは数秒間、アリシアに頭を下げる。

「さて、もう一度本題に戻りますが、ロイさんにはある意味、ルーク・ノルトヴェスト・アハトドライノインの護衛担当をお願いすることになります。彼を中心に暗躍、裏工作、グロースロートのエリア20を引っ掻き回しますので、要するにこれ以上、彼が面倒事に巻き込まれないためのお目付け役です。不確定要素は少ないに越したことはありませんから、学院内では常に監視して、毎日の報告を怠らないように。聡明なロイさんならすでに察しているとは思いますが、ルークさんの護衛は結果のための過程にすぎません。状況次第では、彼が面倒事に巻き込まれた場合、護衛と中断し、それさえも利用する、ということもありますので悪しからず」
「えぇ、すでに割り切れています」

「次いで、魔術を使う必要はないですが、シンプルな話術による彼からの情報収集。最後に、これは正真正銘のオマケで、無理をする必要、欲張りすぎる必要はありませんが、可能ならこちら側に、と。ロイさんに引き際をいちいち説明する必要はないと思いますが、それだけはくれぐれも間違えないように。以上、まずはこの3つです」
「……先輩みたいな質問をしますが……、その……、どうにかする、そんな必要は?」

「ありません。彼はレーヴァテインに選ばれただけで、軍人としてはかなり弱い部類です。魔剣本体のスキルは無視できませんが、使い手本人の剣術、魔術、体術は相当酷いらしく、なにより自分は戦場に立つんだ、という覚悟ができていません。彼を処理してしまうと、レーヴァテインが次の持ち主を選び始める。それが魔剣である以上、王都に持ち帰るのも困難を極める。彼を殺害することに対し、死体の処理に費やす労働力が割に合わない。本人ではなく魔剣の方の重要度に起因するモノですが、こちらの存在を発見されやすくなる。面識のない人を下に見た言い方かもしれませんが、戦う意志のない者に魔剣を持たせておいた方が、こちらとしては上策でしょう。それに、我々が帰還したあとに、彼がどうなるかはわかりませんし」
「了解です」

 思うところがないわけではないが、ロイはそこで質問をやめた。
 感情を大切にすることも大切だが、今はその時ではない。
 それぐらいのことがわからないロイではなかった。

「次にマリアさんですが、2人が潜入する予定の軍立第35騎士及び魔術師育成学院、ここの卒業生が件の研究施設の研究員です。厳重に存在を隠匿されているヤツがいない場合、全年度あわせて総勢32人いるのですが、この卒業生の卒業論文を写してきてください。それが終わり次第、それ以外の論文も。情報と技術を制する者は戦争を制しますので」

「はい。しかし、と、いうことは、わたしは高等教育の方で、弟くんは中等教育上位、ということでしょうか? 研究職と聞くと、向こうでも高等教育の卒業が必須条件だと推測できますので」
「えぇ、流石に同じ学年ではありません」

「確認ですが、戸籍と学籍の方も?」
「当然、用意してあります。詳しいことはやはり資料に」

 マリアは自分の分の資料、さらにその自分に大きく関わる項目を確認した。
 ロイには女装して潜入する用のシャノンの学籍と、変装はするものの男子として潜入する用の学籍の他に、用務員、事務員、学内パン屋の店員、そのパン屋の配達員の戸籍などなど、かなりの潜入方法の候補があった。並びに、どうやら自分の方にも3つの学籍の候補が用意されてあったらしい。さらに言えば、マリアの方にも在学生としてではなく、別の手段で潜入するパターンも一瞥しただけでは把握できないほど記載されてある。

 恐らく、本隊にロイやマリアが配属されることが決まったのは最近、少なくとも去年だ。それなのに先行部隊は何年も前から魔族領に滞在している。畢竟、どのような性別、年齢、体格の同胞がきてもいいように、かなりパターンを確保しておいてくれたのだろう。
 気が遠くなるような話である。

「続いてアリスとシーリーンさん」
「「はい!」」


「ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

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コメント

  • ノベルバユーザー270971

    某スマブラにもいるダンボール傭兵見たく 潜入 偵察 即ボッカーン!!じゃなく 相当な年月かけて進めるんですね 後 主人公君は「大将と同等以上の知識」を有しているにもかかわらず 魔法に関して成長が(今のところかつ書かれている部分では)ありませんよね それはやはり適正が大きく関わっているからでしょうか

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