ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

2章9話 潔白証明のリコレクション(2)



 言うと、声の主――私服姿のシャーリー・ドーンダス・クシィ・ズンはあろうことか、ロイのベッドの下から姿を現した。この部屋には(誰かに感知されることが前提で、大掛かりな魔術を使えば話は別だが)ロイとヴィクトリア、他にはシーリーン、アリス、イヴ、マリアの6人のうち、誰かの許可がないと入室できなかったため、アリシアもエルヴィスも少々油断してしまっていたのだろう。
 ちなみにロイのベッドは夜に行うとある事情によってかなり大きかったため、身長175cm、バスト99cm、ウエスト57cm、ヒップ94cmでIカップのシャーリーでも、特に窮屈というわけではなかったらしい。

「シャーリー、本当に失礼だな、お前……。いや、まぁ、なんとなく理由はわかるが……」
「シャーリーさん……、一時的に追放されるとはいえ、そのベッド、王族のベッドなんですが……。いや、あなたが現れた時点で全てを理解しましたけど……」

「自明――アリシア様がいるのに魔術で隠れるなんて愚の骨頂。となればもう、物理的に隠れるしかありえない」

 彼女の年齢が何歳なのか、ロイたちにはわからなかったが、まるでドッキリに成功した初等教育の子供のように、シャーリーはそれはもう、自信満々な表情かおをしていた。
 が、一応すぐに気持ちを切り替え、次いでシャーリーはまず、なぜかメイドであるクリスティーナに近付いてみせる。

「自己紹介――実を言うと、この場に集まっている人で面識がないのは貴方様だけ。特務十二星座部隊、星の序列第4位、【巨蟹】のシャーリー・ドーンダス・クシィ・ズンです。以後、お見知りおきを」
「お初にお目にかかります。わたくし、ロイさま、イヴさま、マリアさまのメイドを務めております、クリスティーナ・ブラウニー・ハローハウスロウと申します。何卒よろしくお願いいたします」

 自己紹介が終わると、シャーリーは自分が本来部外者ということを考慮してか、ひとまず1人分のスペースが空いていたシーリーンの隣に腰を下ろす。
 無論、隣にすごい人が座ってきてアワアワし始めるシーリーン。自分が部外者ということには考慮したのだろうが、シーリーンの緊張には配慮できていなかった。

「指摘――ライツライト様は以前からこう考えていたはず。アリシアの闇属性魔術に対する適性は10だったな、と」
「肯定だ。もちろん、アリシア本人には言わなかったがな」

「再度指摘――翻りアリシア様の方も、ライツライト様に疑われていることを自覚していたはず」
「当然です。私の魔術適性は七星団の書類に記載されていますし、闇属性魔術の適性がマックスとなれば、私だって私を真っ先に疑います。それで?」

「――――」
「――『証明』は、できそうですか?」

 ロイ、アリス、マリア、ヴィクトリア、レナードの頭の回転が速い組は今のやり取りで全てを理解した。
 一方、自分が危機的状況に陥らないと本領を発揮しないシーリーン、才能は圧倒的だが計算タイプではなく感覚タイプのイヴ、この2人は説明を求めるようにアリシアとシャーリーの間で、視線を行ったり来たりさせている。

「提示――これを確認してください」

 言うと、シャーリーは私服のポケットから4枚の写真……に限りなく近い紙を取り出す。
 そこに映っていたのは――、

「素晴らしいです、シャーリーさん。ありがとうございます」
「ついでにオレの分まであるのか。流石だな」

「紙一重――いくら私めでも、あんな強敵を相手にしながら2人を探して目視するのには苦労した……。しかもできる限り、記憶を現像げんぞうした時にブレないようになんて……」

「ろ、ロイくん……。どういうこと……?」
「お、お兄ちゃ~~ん……、お姉ちゃ~~ん……」

「シャーリーさんが【土葬のサトゥルヌス】の殺し合っていた時、【ワァ絶対アブソルート・零度テンパラートゥーラー・世界ヴェルト】で時間の流れが止まっていた」
「つまり、シャーリー様が【土葬のサトゥルヌス】と戦っているのにアリシア様とエルヴィス様を肉眼で確認できた、ということは、アリシア様とエルヴィス様は【土葬のサトゥルヌス】ではない、ということですね♪」

「追加情報――こっちの特殊加工を施している方の2枚の写真。これはロイ様の前世のサーモグラフィー映像を参考にして、温度を測る魔術で視える世界を他人にもわかりやすくしたモノ。結果、この2人は時流の停止した世界で完全に静止していた。当然、分身を生み出す魔術も使っていない」

 シャーリーが事もなげにさらりと言う。
 ロイ様の前世、というキーワードを混ぜた説明を。
 瞬間、一番に動揺したのはイヴだった。

「シャーリーさん、それ、明かしてよかったの!?」
「肯定――かまわない。必要性の高い行動をしたとはいえ、この2人なら、ブラッディダイヤモンドの後処理を私たちめがしたことをすでに理解している。断言できる。だから私めは今日、このタイミングでわざわざ姿を現した」

「そうだな。ブラッディダイヤモンドのあとに起きた奇跡。局所的に物質の時間をあそこまで戻せるのはシャーリー、お前ぐらいだ」
「それに、ツァールトクヴェレでロイさんが裏切り者によって負傷した際、ヒーリングを担当したのはあなたでしたし。ロイさん本人になにか抵抗できたとは思いませんが、だからこそ、ロイさんの記憶を覗くのも容易だったはずです」

「追加――そして私め本人は【土葬のサトゥルヌス】と殺し合っているし、その開始の様子はロイ様が、終了の様子はルディ・セント様が肉眼で観測している」
「よって、アリシア、シャーリー、ロバート、エルヴィスは完全に潔白、ということですわね♪」

 ヴィクトリアが再度総括して、シーリーンとイヴはなんとか全てを理解する。

「――正直、情けないです。自分の潔白は自分で証明するべきでしたのに」

「――――」
「シャーリーさん、ありがとうございます。任務の前に証言してくださり」

「問題皆無――仲間なら助け合って支え合うのが当然です。それに、このタイミングで貴方様の疑惑を払拭しておかないと――」
「――えぇ、私が黒だった場合、第562特殊諜報作戦実行分隊は全滅。グレーを維持したままだったとしても、それはただの問題の先送りでしかありませんし」

 自分の無能ぶりに溜め息を吐くアリシア。

「お姉様は……ご自分が疑われていたことに、その……」
「怒っていません。それで怒るなんて筋違いです。むしろ、私は自分の情けなさに嘆いてさえいます」

「――――」

「アリス、潔白なのに疑われて、それで怒る。その感情は理解できますし、むしろ人間やエルフとして健全な反応です。ですが、今、我々がやっているのは戦争です。国民の命がかかっています。疑わしい者全てを罰せよ、なんてことは断じて言いません。ですが、疑わしい要素があるのに仲がいいから疑わない、目を逸らす。一般市民ならともかく、七星団の団員にそれは許されません。実際、エルヴィスさんも疑っているものの、罰することはなく、裏で証拠集めとかをしていたはずです。ねぇ?」

「そうだな。証拠を集めるということは聞けば当たり前のように思うかもしれないが、黒であることを証明できるだけではない。無実であることも証明できる。まぁ、今回はシャーリーに尻拭いをさせた結果になったが」

 マリアがロイとイヴに劣等感を抱いているのと同様に、アリスもアリシアに劣等感を覚えてしまう。
 まだ、自分は感情を理性で制御できていないのかな、と。

「でも、そうですねぇ」
「? お姉様?」

「私も……、っ、そろそろ撤回させていただきたいんですよ……っ!」
「な、なにを、ですか……?」

 あれ? ほんの数秒前に理知的なことを言った割に、お姉様、なにかに苛立っている? と、アリスは頬を引きつらせた。
 一方、ほんの数秒前、アリスに徹底したロジカルな七星団の団員であることを見せつけたアリシアは――、

「――いい加減! 強いだけの無能とか! 肝心な時になにかしでかすとか! 雑魚専門家とか! そういう評判を撤回したいと思います! さぁ! いくらなんでも、そろそろ作戦会議を始めましょう!」


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