ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~
2章8話 潔白証明のリコレクション(1)
「ロイは今、脳内検索信号、という言葉を使ったが、話の流れ的に恐らくそれは――」
「――はい、エルヴィスさんの推測どおり、かいつまんで言えば、記憶を思い出すための信号です。これを自分の意思で自由に操作できれば、恐らく、記憶の覚醒による廃人コースは免れるはずでしょう」
「ロイ、オレも詳しいことは知らないが、いわゆる完全記憶能力者、魔術もスキルも特に使わず、生まれながら本人の個性の範囲で、経験した記憶を全て保持できる人もいるんだろ?」
「はい、カメラアイのことですね」
「イヴの記憶容量がパンクする可能性はないのか?」
「まず、イヴは10万年以上生きていますけど、カメラアイではありません。特に大切ではない情報、出来事なら、忘れることも普通にあります。その上、自らの記憶に干渉できるなにかしらの魔術があるなら、都合よく思い出すことと同様、都合よく完璧に忘れることも不可能ではないでしょう。そしてなにより、イヴの肉体、言い換えれば頭脳は、転生のたびにリニューアルされています。いずれきちんと調べる必要はありますが、パンクの心配はないのではないか、というのが暫定的とはいえボクの答えです」
「……今度は哲学ゾンビの問題に発展しそうだな」
「イヴは最初の世界のソウルコードを今日、この日まで、徐々に整形してきたとはいえ引き継いできましたから、哲学ゾンビの可能性もないと考えます」
「なるほど、確かにそのとおりか。流石ロイだ。オレもまだまだだな」
「いえ、エルヴィスさん。ボクの方こそ反則技を使っているだけですので」
エルヴィスは静かに瞑目し、ロイは本当に謙遜ではなく、自分の方こそ真に未熟だ、と、言外に語る。
そんな2人のやり取りを見て――、
(ロイくん、すごい! 流石、シィの最愛のロイくん♡♡♡ 好き好き大好き♡♡♡)
(シィ……、今のロイとエルヴィス様の会話、まるで理解していなさそうね……。あとでフォローしてあげなくちゃ……)
(じ、自分のことなのになに1つ理解できなかったんだよ!?)
(よし! 今! わたし! 弟くんとエルヴィス様の会話の内容! 全て理解できましたね!)
「ハァ……、クリスティーナ、会議終了後、アリスとマリアに胃薬でも用意してやれ」
「かしこまりました、レナードさま」
ここでロイとエルヴィスの会話が終了する。
次いで、改めてエルヴィスは襟を正し正面を向くと――、
「さて、オレは今回、第562特殊諜報作戦実行分隊の任務に同行しない。それなのにここに座らせてもらっている理由は1つ。情報の共有をしたかったからだ」
「魔王軍最上層部、黒天蓋の序列第6位、【霧】のゲハイムニス、そして悪十字の序列第5位、【土葬のサトゥルヌス】の2名。この両方を目視したのがロイさんのみ。ゲハイムニスのみがエルヴィスさんとフィルさん。【土葬のサトゥルヌス】のみがシャーリーさんとロバートさん。残念ながら、私はどちらも確認できませんでしたが……」
「加えて、セシリア、イザベル、カレンの3名は【色彩放つ光輝瞬煌の聖硝子】を展開していた。それも3人で集まって、な」
「となると、【土葬のサトゥルヌス】である可能性が高い、とはあまり言いたくありませんが、相対的にどうしても疑ってしまうのは――特務十二星座部隊に限定すれば、第1位のエドワード、第7位のカーティス、第8位のベティ、第11位のニコラス――この4名ですわね」
アリシアとエルヴィスの意見をヴィクトリアが総括する。
が、しかしこの時、エルヴィスが非常に高度な悩みを解決しようと必死だった。
エルヴィス自身はフィルと一緒に、シャーリーはロバートと一緒に、そして結界担当も結界担当同士で一緒に行動していた。
そしてエドワード、カーティス、ベティ、ニコラスだって、自分と実力が拮抗している者が近くにいなかったとはいえ、アリバイそのものは普通にある。特にニコラスなんかは一時的に死神討伐の指揮官をしていたぐらいだ。
だが――なら、アリシアはどうなる?
今、自分の隣に座っている闇属性魔術の適性が10のオーバーメイジは?
「窮地――お困りのようですね、ライツライト様」
「? この声は――」
「失敬――こんなところから本当に失礼する」
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