ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

2章5話 姉妹開示のアンサー(1)


「ご主人様はティナさまと、本当にチェスをなされていただけでございます。わたくしもお傍にて待機という建前で観戦しておりましたので、間違いございません♪ あっ、もちろんご主人様とティナさまのお許しはいただいております!」

 というクリスティーナの証言により、ロイの身の潔白は一瞬で証明された。

 そしてリタとティナを改めて、今度は王城の門扉まで見送り――、
 自室に戻って、十数分後――、

「ではこれより、来るべき任務に向け、第1回、第562特殊諜報作戦実行分隊の会議を始めさせていただきます」

「はい、お姉様」
「はい、アリス」

「…………なぜ、お姉様は幼女に?」
「………………」

 会議開始早々、ロイの自室は沈黙に支配された。

 会議に参加しているのはロイ、アリス、アリシア(幼女バージョン)の他に、シーリーン、イヴ、マリア、ヴィクトリア、クリスティーナ、そしてレナードとエルヴィスの合計10人。
 言わずもがな全員、ロイとイヴが転生者という事情を共有している者たちである。なお、今回の会議は【土葬のサトゥルヌス】対策の一環で、七星団本部の会議室ではなく前述のとおりロイの自室で行われているため、クリスティーナ以外の全員が(目の前に上官がいても。と、いうより、そのアリシア本人に命じられたから)私服であった。

 ローテーブルを囲む6人掛けのソファ2脚と4人掛けのソファ2脚。
 上座、4人掛けのソファにヴィクトリアとアリシアとエルヴィスが座り、3人から見て右側のソファには、手前からイヴ、ロイ、シーリーンの順番で、左側のソファには、手前からマリア、アリス、レナードの順番で、各々、腰を下ろしていた。そしてクリスティーナは立ったままなにかしらの用命を待っている。

 ローテーブルの上にある物といえばクリスティーナが淹れたコーヒーと、各々の筆記用具のみ。当たり前と言えば当たり前だが、会議に必要のない物はみんな持ってきていないか、きちんとしまっているようだった。
 ただ、隊長であるアリシアの足元にのみ、少し大きめな彼女のカバンが置かれている。なにかしら会議に必要な物が入っている、ということは想像に難くない。

「一応、このような姿はギャグにしか思えませんが、かなり深刻な理由です。他言無用でお願いします」
「わかりました」

「端的に言えば、一度、魔王と殺し合い、敗北し、封印を受けてしまった、これに尽きます」
「なっ……、お姉様が、魔王と!?」

「実力をかなり封印され、一時的にそれを解除するためにも、誰かとの戦闘中に一定の術式演算処理能力を捧げる必要があります。本来の状態ならロイさんが1000人前後いても、目を閉じた状態、戦闘開始地点から半径2m以内のみ移動可能、時間制限は余裕を持って30分、これでも余裕で勝てますが、今の状態だと、1000人のロイさん相手にハンデを与える余裕はないでしょう」

「おい、アリシア、わかりやすく言え、わかりやすく。ロイは戦闘力の単位じゃない。今の実力は本来の実力の何割程度だ?」
「だいたい10~20%でしょうか? 魔術適性の数値に変動はありませんが、わかりやすい表現を使うと、頭が回らない。だから本来使える魔術が使えない。そんな状況、感覚です」

「えぇ……、逆にお姉様、普段はどれだけ頭の回転が速かったんですか……?」
「あら、良い質問です、アリス」

 するとアリシアは一度、深呼吸したあと――、
 ゆっくりとそこに座っている全員の顔を確認して――、

「――――私の固有魔術、【無限遠点、セルブスヴェルト:至るべき無尽アウスゲリファート・アン・の幻想奇跡ディ・ミュートロギィ】の能力を説明しておきたいと思います」

 瞬間、ロイの背筋に名状しがたい絶望が奔った。
 なぜなら――、

「あ、っ、あの!」
「はい、ロイさん、どうぞ」

「アリシアさんの固有魔術って、【絶滅エクスキューション・ディス・福音エヴァンゲリオン】か【神様の真似事アドヴェント・ツァイト】か……、もしくはその両方だったはずでは……」
「あれは現時点で私しか使えない魔術です。過去に使い手は数人とはいえ存在したはずですし、今後、使える魔術師が現れる可能性もたぶんあります。それと確認されていないだけで、魔王軍側の魔術師、それこそ魔王が使える可能性も」

「わ、わかりました。会議を中断してしまい、申し訳ございません」
「いえいえ、質問があるのはいいことですから。他のみなさんも、疑問質問があれば、その時点でぜひ。例え会議を中断したとしても、発言のタイミングを逃すということは絶対にしないようにお願いします」

 と、ここで咳払いするアリシア。

「私の固有魔術、【無限遠点、至るべき無尽の幻想奇跡】は一言で言うと――――頭が良くなる魔術です」

 チラッ、と、ロイとアリスは本人にバレないように、こっそりシーリーンのことを確認する。
 予想通り、シーリーンは(シィ、その魔術覚えたいかも……)と瞳をキラキラさせていた。

「もちろん、この頭が良くなる魔術を使うためには、自分で言うのもあれですが、死に物狂いで勉強しなければなりませんが」

 再度、シーリーンのことを確認するロイとアリス。
 シーリーンは明らかに落ち込んでいた。

「能力の具体的な説明ですが――ロイさん」
「はい」

「パラレルワールドと量子力学、この2つの言葉に聞き覚えは? まぁ、前者はともかく、後者は普通ないと思いますが。量子力学は非常に敷居の高い学問ですし」
「「あっ」」

 ドヤ顔というほどではないが、かなり自信満々な感じのアリシア。
 瞬間、ヴィクトリアとレナードの微妙に間抜けな声が重なる。

 そういえば彼女はロイの前世の知識を受け継ぎ、それを魔術に組み込んだシャーリーの戦闘、その凄絶さを知らなかった、と。
 恐らく、ロイならそのヒントだけで答えに辿り着く、と。


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