ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

2章4話 可憐少女のセプテット



 約1時間後――、
 王城の廊下にて――、

「ゴメン、っ、ね……、リ……タ……ちゃ……ん。少……し動揺しす、ぎ……ちゃ、……、って……」
「まったく! 酷い目に遭ったぜ!」

「そ、れ、で、今ままで、ど……こに……行ってい……た、の?」
「10秒ぐらいで自力で脱出して散歩していた!」

 手加減されていたので鬱血うっけつなどはしなかったものの、自力で脱出後、鎖で縛られていた身体をほぐすためだろう。ティナが鎖を解除しようとした時にはもう、彼女はどこかに行ってしまっていたのだ。今はティナと合流してエントランスを目指している。

 彼女の隣、ロイと最後にたくさん遊べたらしいティナは少しだけジト目を向けていた。
 ちなみにそのロイは今、2人を無事に帰宅させるため、馬車の手配をしに行っている。

「で、……、っっ、も、リタ…………ちゃん、結……果オー、ラ……イだっ、たけど、す、っ、少、し、だ、け、……自、業自、得……」

「でもさ! それでもアタシについてきてほしいって頼んだの、ティナの方じゃん!」
「そ、それ、でも、虫さんは、ダ、メ、だと思う……な。その……、ムー、ド……的に」

「えぇ~っ! まぁ、それで? アタシを部屋から追い出したあと、2人でなにしていたわけ? だいたい1時間ぐらい」
「ふぇ!? そ、っっ……、んな……こと……訊く、の!?」

「ハッ、その反応、まさか!?」
「~~~~~~っっ」

 コク、コク、と、ティナは小さく首を縦に振った。
 その彼女の恥ずかしそうだけど幸せそう、嬉しそうな表情かおを見て、リタは思わず感慨に更け始める。

「そっかぁ、ティナももうお母さんになるのかぁ~。時の流れを感じるなぁ」
「ふぇえええええ!? りりりりりっり、リタちゃん!? なななななんあなん、っっ、なんの話!?」

「えっ? 子作りしてたんじゃないの?」
「しししししいいしし、ッッ、してない! よ!?」

 明らかな爆弾発言をリタは事もなげに言ってみせた。
 次いで、顔を真っ赤にしてティナは全力で否定する。

「あぁ、でもそっか。だよなぁ。流石に1時間以上もキスし続けるのは疲れそうだし」

「えっ?」
「えっ?」

「キス?」
「うん」

「リ……タ……ちゃ……ん、子供ってどうや……って出、産する、と思……う?」
「なんだっけ? テーオーセッカイ?」

「……他、に、は?」
「他に!? お腹から赤ちゃんを取り出すんだろ!? 医学的にお腹を開く以外って、もう魔術しかないじゃん!」

「リタちゃん自……、……、身が、っ、どうや……って生まれ、た、か、故…………郷で聞い、た……ことは……?」
「それこそアタシはテーオーセッカイだったはずだぜ?」

 ふと、ティナは改めてリタの全身、頭の上から爪先までを視界に入れた。
 リタの言うとおり帝王切開は腹部を切って、開いて、従来とは違う方法で赤子を産み落とす手術方法だ。

 だが、そもそも帝王切開するにはなにかしらの理由が必要なのだ。
 ティナにはその理由を具体的に挙げることができなかったが、ロイならすぐに「帝王切開をするケースといえば……常位胎盤早期剥離、子宮奇形、前置胎盤、あとは胎位異常とか性感染症とかかな?」と即行で答えてくれたことだろう。

 が、当たり前と言えば当たり前だが――、
 ――医学に全く詳しくないティナが少し視界に入れただけで、リタが帝王切開された理由なんてわかるわけもなかった。

「で? ホントはなにしていたの?」
「…………す、すごく、楽、しい、こと……」

 頬を乙女色に染めるティナ。
 別に隣を歩いているのはロイではなくリタなのに、思い返しただけで嬉しすぎるのか、ティナは瞳を再度、潤ませ始める。

「ほぅ、具体的には?」
「あ、あのね……? 額、に、汗、を、か…………いて。い…………け、な、いところを攻……めら、れちゃうと……、っっ、焦っちゃって。逆に攻め返…………すと先、輩……が黙り始め……ちゃっ……て。そ……、それ、で、終、わったあと……、何……回もド、キドキ……しちゃったの……に……、またしたい、な、って、そ、う、思っちゃう……こと」

 考えるリタ。
 しかし――(わ、っ、わからない! 一瞬、チェスかと思ったけど、あれって10分とか長くても15分で終わるもんだし!)と、なぜか1回答えに辿り着いたのに、それを否定してしまう。チェスに詳しくないことが災いしたか。

 数秒後、ティナの方は(流石にイジワルしすぎちゃったかな……?)(少し困っているようだし、そろそろ……)と、首を捻るリタに答えを教えようとした、ちょうどその時――、

「うぅ、ロイくん……、シィたちがせっかく、ティナちゃんと2人きりにしてあげたと思ったら……」

「これもう、夜になったらお仕置き確定ね!」
「朝方まで続けるのもやぶさかではありませんわ♪」

「アリスさん、そもそも夜まで待ってあげる必要はないと思うんだよ!」
「…………あはは……、わたしだけですかね? 年齢=恋人いない歴なのって……。あれですかね……? 理想が高すぎるのがダメなんですかね……?」

「ふぇ!? ま……さ……か、聞か、れ……」
「おっ! 久しぶり~っ! もう身体は大丈夫ですか~?」

 リタとティナが直進を続けようとした廊下、その十字路の左方からやってきた5人、シーリーン、アリス、ヴィクトリア、イヴ、マリアはもう、各々、ロイに対してなにかする気満々であった。
 いや、厳密にはマリアのみ、なぜか死んだ魚のような目をしていたのだが……。

「まままま、ぁぁ、待っ! て、く、ださい……っ」
「ぅん? ティナ、どうしたの? 微妙に顔色が悪いんだよ……」

「わ、わ、わ、っ、っ、ワタ、シ……、先輩、っ、とは……、チェスを、した、だけ、です……っ!」
「「「「「………………」」」」」

 なんとか誤解を解こうとするティナ。
 とはいえ、シーリーンもアリスもヴィクトリアも、イヴとマリアだって他人ひとの話をよく聞かない女の子ではなかったので――、

「あっ、そういえば、そういうふうに解釈することもできるね! 攻めるとか、焦るとか」

「わ、私……っ、もしかしていつの間にか、はしたない女の子になっちゃったの!?」
「最初からではございませんこと?」

「それはアリスさんじゃなくてヴィキーの方だよ……」
「まぁまぁ、誤解も解けたところで、早く弟くんのお部屋に行きましょう。まだ時間に余裕があるとはいえ、今後のことで話がありますからね」

 流石、ロイと長いこと一緒に過ごしている女の子たちである。
 誰一人として暴走するような子はいなかった。
 が、しかし――、

「なぁ~んだ、チェスだったのか! ティナがセンパイを押し倒したあと、アタシの存在を思い出して部屋の外に放り出したから、言われてみればそうかもな! チェスって静かなところで集中しないといけないらしいし!」
「リタちゃアアアアアアアアアア…………っっん!!!!!」


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