ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

2章2話 獣耳少女のアフェクション(2)



 約2時間後――、
 星下せいか王礼宮おうれいきゅうじょう、ロイの自室にて――、

「ティナ・ケットシー・リーヌクロスさん! この度はお怪我させてしまい、誠に申し訳ございませんでした!」
「ふぇ……っ!? ぇ、っ、え~っ!?」

(よくよく考えたら、そりゃそうだな。アタシたちだけでいくら盛り上がっても、ティナがラブコメしようとした相手本人に、ラブコメしようって意思がないんだし。逆にあったらあったでヤバすぎるし。それはもう、センパイの偽物を疑うレベルで)

 黒の礼服を身にまとい、ロイは誠心誠意、ソファに座っているティナに対して頭を下げ続けた。
 その様子をリタは別のソファに腰掛けながら眺めている。

「そういえばセンパイ、ヴィキーと王様は?」

 ティナにこの状況を変えることはできないと断定し、リタは少しずつこの部屋での会話、発言の回数を増やそうと画策する。どのような内容であれ、無言状態よりは気まずくならないだろう、と。
 その質問に対してロイは頭を下げたまま――、

「……ボクはまた国民として復帰するつもりだけど、もうすぐ国外追放されるからね。国王陛下と王女殿下が外国人の謝罪に付き合うのはマズイ、という理由で、なぜかどこからか湧いてきた仕事の処理を」
「怖っ!? 政治って怖っ!?」

「あっ、っの……、な、ら、イヴちゃん、たちは……?」
「みんなは、ボクとティナちゃんの2人で会って話すべきだ、って」

 すると、ティナは珍しく恥ずかしい、照れくさい以外の感情を表に出す。
 拗ねている、という感情を。
 具体的にはどこか納得できない感じで頬を膨らませて。

「あの……、その……、頭……を、上、げ、て……く、だ、さ、い」
「…………っ」

「怒り、ま、すよ……?」
「――はい」

 ティナからの許しを得たので頭を上げるロイ。

 それにしても、意味がわからなかった。
 リタはティナがブラッディダイヤモンドのことを本当に、ウソ偽りなく気にしていないのを知っている。

 なのに今、彼女は怒りますよと口にした。
 それもロイに頭を上げさせるための方便としてではなく、割と真剣に拗ねている感じで。

「――コホン、先…………輩、あ、の時、あ、の場所…………で、言いました、よね?」
「――――――」

「悪いことをしてしまったけど、みんなに愛されたい」
「はい……、言いました」

 常に内気なティナがロイに対してジト目を向ける。
 結果、ロイは額に汗を垂らし始め、思わず目を逸らしてしまう。

「幸せにできるかどうかなんて関係ない。それでもみんなを好きでいたい」
「はい……、それも言いました」

 常に弱気なティナが、目を背けてしまったロイの顔を追尾アサルト魔術のように覗き込む。
 結果、ロイの冷や汗は背中にまで浸食を開始した。

「そ、っ、れ……、なのに、再、度……、……、ワ、タシに、謝罪するん、で、すか?」
「えっと……、その……」

「あ、れ? も……しかして……、……、謝……罪、す、る、って、先、輩、の……場、合は逆……に、反……省の色、な…………し、です、か?」
(す、スゲぇ……っ! ティナがあのセンパイを尻に敷いている! 一生に一度、お目にかかれるかどうかの大事件だ! まさかセンパイが女の子相手にタジタジになって、しかもその相手がティナなんて!)

 野次馬根性丸出しのリタ。
 そんな彼女の目の前では、今もティナがロイをある意味、一種の言葉攻めに処していた。

「こっ、これ、っ、は……」
「? これは?」

「~~~~ッ、お仕、……置、き……が必、要です……ね?」
(ティナ! しているしている! 無自覚かもしれないけど、センパイの罪悪感を利用している! 気付いて! あっ! いや! 待って! 別に気付かなくてもいいや! 往け! そのまま往けるところまで往っちゃえ!)

 なお、確かにロイの罪悪感に付け込むなんて考えはティナになく――、一度許したのにまた謝罪された! もっと距離を縮めたい! それと単純に寂しい! 好きな先輩に触れてみたい! た、っ、建前を用意しなくちゃ! という思考を本人はしていた模様。
 流石にリタはそれに気付いたが、なぜか当の本人たち2人がそれに気付くことはなく――、

「わかった。それでお仕置きって、ボクはなにをすればいいのかな?」
(き~す、き~す! は~ぐ、は~ぐ!)

「あ、っっっ、の! その……ッッ!」
(往け、ティナ! キスしたら赤ちゃんができちゃうらしいし、それでチェックメイトだ!)

 リタもリタで微妙におかしなことを思っていたが――、
 他人の心の声が聞こえるわけもなく――、
 ティナはロイに――、

「ゆ、っっ、ゆゆ、指! を……繋いでく、ださい!」

「…………」
「…………」
「…………」

「ゆ、指? 手じゃなくて?」
(ティナああああああああああああああああああああッッッ!!!!! キスすればセンパイの赤ちゃんがああああああああああああああああああああッッッ!!!!! 既成事実がああああああああああああああああああああッッッ!!!!!)


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