ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~
1章18話 胸中秘匿のイレギュラー(2)
結局、そのように言われれば、信じられるか否かは置いておいて、深掘りすることはできなくなってしまう。
その手とやらを知りたいと思うのが人間の心理ではあるが、質問して、教えてくれない場合、シャノンは「流石にヒミツです♪」の一言で押し切れるし、素直に教えてくれた場合の方がさらに厄介で、ルークは後戻りできなくなる。
ただでさえ苦しい生活をしているのに、問題を増やすわけにはいかない。
シャノンだって自分のしたことの重大さを理解しているはずだ。つまり、功を奏するか否かはあずかり知らぬが、防衛策は本当に用意していると見て間違いないだろう。加えて、シャノンが具体的になにをするかは理解できないが、『覚悟』ぐらい、とっくに完了しているはずだ。
ゆえに、深掘りはしない。
次の質問に切り替える。
「次の質問ですけど……、3人の親はあの犯罪を……」
「知っているでしょう。と、いうより、親が指示していた可能性が濃厚です」
「なんで、そんな……」
「お金か、あるいは労働力になるからでしょう。人体実験やオークション。なにかをする時の捨て駒や人間爆弾。あと、売春やオークションでさえなく、臓器を切って運ぶ方の人身売買だって……、えぇ、可能性としては……」
「そんなことを繰り返しているなら、護衛を常に付けるはずだと思うんですけど……」
「付けたくても付けられなかったんです」
「…………えっ?」
理由がわからなかった。
意味は理解できる。明らかに非合法な営業をしていたのだ。護衛を付けたくても付けられない、そのような事態、避けられるなら避けた方が賢明だが、どうしても付けられないタイミングが存在する、というのは理解できる。
ゆえにルークが理解できなかったのは、そのどうしても護衛を付けられなかった理由、ではなく、より厳密には、護衛を付けられない夜のターゲットが自分だった理由だ。
そして、護衛が存在しなかった夜、たまたま、奇跡的に貴族にケンカを売る命知らずが現れたとは、どうしても考えられない。
けれど、ルークがそれをシャノンに質問するには、思考のために黙っていた時間が少しばかり長すぎた。
会話の流れからして当然だが、シャノンはルークの1つ目の疑問にだけ、言葉を続けないと不自然だから答えてくれる。
「昨夜、ルークくんに強要しようとした売春、あれは彼らの親が指示した売春スケジュールに載っていないモノでしたから」
「…………ッッ!?」
瞬間、ルークの鼓動がドクン……ッッ、と、一気に激化した。
手首の大動脈を紐で縛ると脈を自覚しやすくなるように、まるで心臓を鷲掴みにされたように。
思い当たる節があったからだ。
そして遅ればせながら察したからだ。金を出せ、酒を渡せ、虫の死骸を喰え、女子の前で自慰行為をしろ。それら全てが本命の恐喝を隠すためのフェイクであると。
十中八九、シャノンはその売春スケジュールとやらの詳細を知っている。
加えて恐らく、ルークが売春を強制されそうになった理由も。
「――つらい過去、悲しい現実を口にするようで申し訳ない気持ちでいっぱいですが、ルークくんの出自は知っております。奴隷階級出身で、本来、この学院に通えるような資産はないはずです。ですが、とある運命に選ばれ、優秀な人材を放置できないという名目で、事実上、魔王軍の管理下に置かれることになってしまった」
ルビーのように紅い瞳がルークを映す。
彼がその双眸から感じ取ったのは、憐れみでも、嘲りでも、そして意外なことに優しさでもなく、応援――、――、――、そういう感じのモノだった。
事実、きっとそうだったのだろう。
現実が理不尽に溢れていても、どうか負けないでほしい。
ルークがその想いを感じ取ったのを察すると――、
シャノンは静かに、穏やかに、和やかに――、
けれど逆を言えば聞き逃せない口調で――、
「――――ルーク・ノルトヴェスト・アハトドライノイン。魔剣、レーヴァテインの使い手として」
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