ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

1章16話 心証固定のペルソナ(2)



 魔術師志望の模擬戦のあとに騎士志望の模擬戦、そして先に2桁勝利した学生から休憩に入れるこのルール。どうやらあの木陰はもう、終業の鐘が鳴るまでただの社交場でしかなくなったようである。
 なお、ルークはこの講義の担当教官に「好きな相手とペアを作れ! なお、同じ相手との模擬戦は1回までとする!」と言われた瞬間に全てを諦めた。騎士志望の学生の人数は今朝、シャノンが復学した時点で奇数になったし、模擬戦なんてそれぞれ終わるタイミングがバラバラで、最終的に終業までに10勝すればいいわけで、入学初回の実践演習からこの日まで、彼の出番=講義全体の最終戦のみというのがもはや常識である。

「シャノンさん、すごくお強いですね! どこで剣術を学んだんですか!?」
「父と祖父が師範をお招きして、個別の稽古を付けていただいているんですっ」

「なんで騎士志望なんですか!? せっかく綺麗な肌なのに、もったいない……」
「ありがとうございます。実は父も祖父も、お兄様の方に芸術家としての活躍を求めたようで、わたしにはそれとは違う名誉、栄光を勧めてくれて――、それでこの学院に入学したんですよね。お恥ずかしながら、魔力の適性は平均以下でしたので、では騎士に、と」

「ウソ!? それってきっと5歳とか6歳の話でしょ!?」
「いえ、もう記憶は曖昧ですが、母はわたしに、シャノンは3歳の頃から素振りとランニング程度はしていたわよ、と、以前教えてくれました」

「すごい! 3歳の頃から魔術じゃなくて剣術を!?」
「魔術ならともかく、3歳児に肉体的稽古をなんて!?」
「シャノンさん、すごい!」

 よく貴族の娘を相手にあそこまで仲良くなれるなぁ……、と、ルークは複数ある集団の全てからかなり離れた木陰で感心半分、呆れ半分の視線をシャノンに送った。流石に距離がありすぎるので、向こうはこちらに、全然気付いていないようだが。

 親同士の仲の良さは子供にも影響を及ぼすが、貴族は特にそのレベルが段違いだ。
 今朝の朝礼前、ルークは3つの集団に対して聞き耳を立てたが、その全ての集団が各々の父親や祖父の関係性を、そのまま反映していると言っても過言ではない。

 最初に盗み聞きをした男子学生5人組の親は、最後に盗み聞きをした男女混合8人組の親を恐れ、しかし虎視眈々と下克上を狙っていたり――、
 2番目に盗み聞きした女子学生6人組の親は、男女混合8人組の親に取り入りたいので、娘に男子学生5人組とは必要以上に接点を持たないように教育し、かつ、爵位が違うから過度に男女混合8人組にも近付かないように教育したり――、
 男女混合8人組の親は基本的に保守的な傾向にあり、どこかの子供が向こうから話しかけてこない限り、相手にするな、と、命じたり――、

 その点、シャノンの家庭はいろいろと楽なのだろう。

 貴族ではないので家督争いとも勢力争いとも恐らく無縁。
 なにかの商会や連合の上層部の娘というわけでもないから、やはり競合相手がいるわけでもない。

 シャノンの父と祖父にライバルのような芸術家がいても当然だが、少なくともルークたちのクラスメイトの家族にはいないはずなので、よって憂慮に能わない、というわけだ。

「でも安心です。シャノンさん、お身体がどこか優れないわけではないんですね」
「はいっ、休学といっても、戦争難民となった親族の移住を手伝っていただけですので。それもそれで大変なことでしたが、わたしの身体のどこかが悪いとか、そういうわけではないです」

「まぁ、大変でしたわね……」
「えぇ、けれど全員の生存が確認できていますし、もう移住も終わり、これからは精一杯、勉学に励もうと思います♪」

「そういえばシャノンさん、シャノンさんご自身のお住まいはどちらに?」
「第7居住区の4番ストリートを少し脇道に入ったところにありますよ。えっと……、正直、父と祖父のせいでかなり散らかっていますし、2人とも、かなり気難しい性格ですので、その……」

「いえいえ! お気になさらないでください!」
「ご都合がつきましたら、ぜひぜひ招待してくださいね?」

「ですけど、気難しい性格と聞くと、いかにも伝統と拘りを貫くプロフェッショナル、って感じがしますわよね!」
「シャノンさん、ご自宅が難しいようでしたら、逆に私たちの屋敷にいらっしゃってください。ぜひぜひ、歓迎させていただきます!」

「はいっ、光栄です!」


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