ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

1章13話 判別不能のリアリティ(2)



 ルークは今度、女子学生6人組の話に聞き耳を立てる。
 そのグループは前後にも左右にも講義室の真ん中に集まっていた。

 その6人組が喋っていたのは、なぜ護衛が1人もいなかったのか、ということ。ルークも考えていたことではあるが、思い付いただけではなくそれをメインの話題として選択するあたり、女性ならではの視点を感じる。
 別に貴族の息子や娘であろうと、常日頃から護衛を傍に置いている学生は少ない。無論、四六時中、一緒ではないというだけで、傍に置く時は置くが…………ともかく、特に男子学生はその傾向が強いだろう。極論、トラブルを回避する一番の方法は夜間に外出させないことであり、それに護衛の必要性はないから。

 が、3人が発見されたのは酒場街と風俗街の路地裏だ。こうなってくると、いよいよ護衛の不在が異常としか言えなくなる。いくら被害届を提出していないとはいえ、現場なんてすでに特定された上で、他の貴族に知れ渡っていた。護衛はいました、なんて、今後、言えるタイミングは一回もやってこないだろう。

 とはいえ、事件の当事者のルークからしても、護衛の不在は不可解だ。

 子供が勝手に、親の知らないところで人攫いと野外売春を企んだ、という可能性は限りなく低い。
 なぜなら、あの袋小路にはバルバナスの一族が管理している酒場と娼館の裏口があるから。

 20個以上も鎖を固定する手すり、あるいは取っ手が壁面に打ち込まれてあったし、様々な効果を発揮するアーティファクトさえ準備されていた。
 親の仕事場の1つの裏側で子供が人身売買を1回や2回ではなく、常習的にやっていたはずなのに、親がそれに気付かないなんてありえない。

(――あれ? なんで裏口なんて便利なモノがあったのに、誰も助けにきてくれなかったんだ……? あの3人は悪党だけど優秀だし、人払いの設定を間違って、従業員さえその対象にしていたなんて考えづらいんだけど……)

 そこでルークは思い出した。
 裏口だけじゃない。何枚かは数えていなかったが、ガラス窓もいくつかあったはずだ、と。

(他にも情報を盗み聞きすればわかるかな……?)

 続いてルークが盗み聞きの対象にしたのは男子学生が4人、女子学生も4人の男女混合のグループだった。いわゆるカーストップに君臨するグループであり、ルークの後方、窓際の一番後ろに集団を形成している。
 この8人組が話題の中心に据えたのは、そもそも犯人は誰か、という謎について。

 ルークは昨夜、シャノンの圧倒的な実力、いや、あの妖刀使いは明らかに本気を出していなかったゆえに、実力の一端だけを垣間見た。
 だが、決してバルバナス、ディルク、マルコだって弱いわけではない。昨夜は比較する対象を間違えていただけであり、バルバナスは毎年必修の実践演習にて、入学してから4年半年以上、学年10位から転落したことなど一度もなかったし、ディルクはバルバナスより成績は20~30位程度劣っているものの、魔術の早打ちと詠唱破棄に関して言えば学年3位だ。マルコだって、実践演習における支援項目では学年7位、それ以外でもだいたい50位という上澄みである。

 そしてこの成績に貴族的な介入は滅多にない。
 ここは軍立の学院だから、入学者がエリート、つまり富裕層に偏ってしまう反面、だというのに富裕層特有の金やコネクションや特権を使えないのである。


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