ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~
3章1話 アリシア、死神と殺し合う。(1)
満天の星々という言葉は多々王国の小説でも使われる。
では、その比喩表現でも誇張表現でもない数千億にも至る星々が、成層圏のほんの数kmまで落ちてきたらどうなるか? 仮に百億歩譲り引力や熱量など、その他諸々の影響を最大限都合よく考えて皆無にしたとしても、この惑星に生きる者が空を見上げた瞬間、紛うことなき星芒の霹靂とでも言うべき、失明さえ可愛く思える暴力的なまでの光輝が視界を、そして空の端から端を覆い尽くすはずである。
まさに宇宙が落ちてきた、とでも言うべき現象。
そんなどこか神性を宿す現象さえ連想させる2人の死闘、それこそは正真正銘の地獄の具象化だった。天空に先の比喩にも匹敵する焔が煌々と奔り、洪水のごとき魔術の光が溢れ続ける。
爆ぜるは死神の霊魂の断片で、流れるは圧倒的なアリシアの魔力、そして激突し相殺。
嗚呼、これを地獄と言わずになんと言おう。
否、より厳密には、死神が鎌を振るい四方八方に撒き散らす死滅の焔もまさに地獄。一方で、【金牛】のアリシアが轟々と放出する超高難易度、及び超高出力の光属性魔術もまた、弱者が見ればウソ偽りなく地獄。それが、例え国民を救う魔術だったとしても、怖いものは怖い。あまりの迫力に味方の魔術と理解していても、有象無象の小さき者の生存本能は根源的な恐怖を覚える。
即ち、これは地獄対地獄の鬩ぎ合い。勝者と敗者の違いによって、国民が救われるか否かの差異は無論あるものの、圧倒的、絶望的ゆえに、人もエルフもドワーフも、しょせん動物としての本能が恐怖を告げ、最終的に死闘のあと、地獄が残った、という感想を抱くのは変わらない。
要するに、どちらが勝者でこの死闘が終焉を迎えたとしても、復旧には長い年月がかかるだろう、ということ。
ゆえに地獄。
ゆえに死滅の神と絶滅の魔術師の死闘。
だからこそ最強対最強の殺し合い。
「さて――、手数を殺して威力で攻めるか、威力を殺して手数で攻めるか」
10秒間で数百にも到達する殺人攻撃の乱舞応酬の中であっても、アリシアは優艶と微笑み、次の一手を思考する。
大火力を誇る魔術を撃ったとしても、相手の力量を考慮すれば、躱される可能性、及び防御される可能性も充分にある。翻り、手数を重視したところで、数割の魔術は着弾するだろうが、百発百中というわけにはいかない。
つまり、どちらを選んでも流れ弾の可能性は介在してしまう、ということ。
なら、地上で行われている魔術師たちによる建造物保全の魔術的取り組みを考慮して、大火力魔術ではなく――、
「では――
【燦爛緋色殺戮世界:灼熱以って焦土広げる情愛大剣】
【壮麗黄金蹂躙世界:霹靂以って戦場散らす歓喜長槍】
【雄偉叢雲荒廃世界:陣風以って血煙舞わす苦痛重槌】
【尊厳地平狩猟世界:隕石以って心臓撃抜く無念速矢】
――各々、トゥウェンティ・フィフスキャスト。つまり、これを総じ束ねてハンドレッドキャスト」
ただ一言で言うなれば、それは絶技。
ただし、それはただの絶技に非ず。脳内にストックを用意している状態でもないのに、詠唱破棄で3桁の魔術を顕現。百億歩譲ってここまではいい。
問題視すべきは、その威力と規模。察しのとおり【燦爛緋色殺戮世界:灼熱以って焦土広げる情愛大剣】は【炎斬の剣】の、【壮麗黄金蹂躙世界:霹靂以って戦場散らす歓喜長槍】は【雷穿の槍】の、【雄偉叢雲荒廃世界:陣風以って血煙舞わす苦痛重槌】は【風打の槌】の、【尊厳地平狩猟世界:隕石以って心臓撃抜く無念速矢】は【土刺の矢】の、それぞれ最上級上位互換である。
そして【燦爛緋色殺戮世界:灼熱以って焦土広げる情愛大剣】にはただの火炎ではなく、太陽よりもさらに燃え盛っている宇宙の彼方の恒星、その周辺で燃え盛っているレベルの業火を使用。【壮麗黄金蹂躙世界:霹靂以って戦場散らす歓喜長槍】の各々1本には本物の落雷約100本分のエネルギーを詰め込んで、【雄偉叢雲荒廃世界:陣風以って血煙舞わす苦痛重槌】のやはり各々1丁には竜巻50つ分の破壊力を凝縮。そして【尊厳地平狩猟世界:隕石以って心臓撃抜く無念速矢】の硬度は金銀宝石さえも圧倒的に凌駕。
リタの体躯竜域の強みだって、同一の魔術だからこそハンドレッドキャストできたというのに、アリシアは余裕綽々で4つの魔術のハンドレッドを為してみせた。
常軌を逸しているにも限度がある。
【尊厳地平狩猟世界:隕石以って心臓撃抜く無念速矢】を除き、他の3つの魔術は炎、電気、風、といった本来無形の物を剣、槍、槌といった形に留めておく必要がある。少なくとも、どこかに着弾するまでは。
つまり、たった10mの剣、槍、槌に、恒星の周辺で燃え盛っているレベルの業火なり、本物の落雷約100本分のエネルギーなり、竜巻50つ分を押し込めているということ。
普通に考えて、制御できるなんてあり得ない。
だというのにアリシアは微笑む。
そして彼女は考えたはずだった。手数を殺して威力で攻めるか、威力を殺して手数で攻めるか、を。
つまり、彼女にとってこれは手数重視の攻撃であり、威力に関してはそこまで重視して顕現させていない代物。
だというのに、この魔力の胎動。
再度になるが、それはただの絶技に非ず。絶技さえ超越する絶技の極限と言っても過言ではなかった。
「――――、一斉射出」
刹那、轟音が響き王都の空が爆発した。それはもう、空で爆発が起こったのではなく、空そのものが盛大に爆散したといっても、思わず信じてしまうレベルで。
アリシアの射出の号令とほぼ同時に爆発。
即ち、それほどまでにアリシアの魔術の速度が疾かった、ということ。
端的に言ってバケモノ、どう取り繕っても、それこそが真にアリシア・エルフ・ル・ドーラ・オーセンティックシンフォニーに相応しい渾名でしかなかった。
が、しかし――、
「 ァッッッ!!!」
疾!!! と、横一線に振り払った鎌により晴れる黒煙、その中から姿を見せた無傷の本体。
爆炎の中より音の速度にも迫るほどの超々々高速で死神はアリシアを肉薄した。
けれども――、
「実に想定内。本能でしか動けない獣の扱いはイージーですわ」
実力差は拮抗していても、体躯の差は歴然。死神の方が巨大で、いくらバケモノ染みていると言っても、アリシアはしょせん160cm台なのは自明のこと。
が、だからといって死闘に関し劣等ということは一切ない。
自身の体躯の小ささを生かし、猛然と迫る死神の鎌、そして霊魂死滅の焔を神速で躱し、本気で自分を殺しにきている一種の神様の懐に入り込むアリシア。
作戦遂行、穿つは最強の敵兵。
刹那、彼女は凄絶に嗤いゼロ距離で――ッッ、
「――【絶滅の福音】30%――」
――森羅消滅、万象絶滅のS級魔術を撃ち込んでみせた。
しかもロイに撃った時のように、アリシアの全力の5%しか実力がない分身が撃った30%の出力ではない。正真正銘、彼女本体が誇る全力の30%だ。
瞬間、神話の時代、天使が鳴らした世界の端から端まで木霊す終焉のラッパ、それさえ彷彿とさせる神秘的な轟音とも形容すべきそれが、王国全域に、嗚呼、やはり木霊した。
その衝撃はまさに存在の拒絶。
その魔術はまさに世界からの排斥。
特務十二星座部レベルの実力を誇る死神が、まさに塵芥同然で王都の城壁の外へ撃ち飛ばされていく。
それを確認すると、アリシアはポケットからアーティファクトを取り出して――、
「さて――、――、セシリアさん、聞こえますか?」
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