ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~
1章9話 第1特務執行隠密分隊、初任務に挑む!(2)
スパイの名前はクリストフ、男性、34歳。七星団に所属している魔術師でクラスはマリアと同じくアークウィザード(マリアの場合は女性だからアークウィッチであるが)、少なくとも王国には嫁や子供はいない。父親も母親もすでに他界していて、兄弟もいない。
七星団内部の評価は平均よりも少し上で、任務にはかなり真面目だが、一方で、他人と関わることを避ける傾向にあり、任務に支障が出るというほどではないが、上官とのコミュニケーション不足が否めない。
シーリーンたちには名前を教えられていなかったが、『とある男性』のかなり信憑性の高い情報をもとに探りを入れてみたところ、まさにビンゴ。クリストフは魔王軍のスパイであったことが発覚。
クリストフは七星団の団員ならほぼ無料で使うことができる寮を、「自分1人の時間と空間がほしいので……」という理由で使わず、王都の、こことは違う地区に部屋を借りていた。
しかし、数年前から、たった今、シーリーンたちが見張っている宿の一室を繰り返し借りるようになり、宿屋の主曰く、その際にはかなりの大荷物を背負ってやってくる、とのこと。また、本当に時々だが、2泊3日することもあったのだが、その際には決まって、掃除などのルームサービスは不要、と、かなり強く念を押してきているらしい。
(宿屋さんがスパイって気付かないってことは、クリストフさんは少し怪しまれたかもしれないけど、立派なスパイ、っていうこと。むしろ、何年にもわたり王都に潜伏していて、そして無事に暮らし続けている、ということは、スパイの中でも特に優秀。なのに、七星団はそれを看破した。クリストフさんが無能じゃない、ということを踏まえると、敵とはいえ、その優秀な人を上回るぐらい、七星団ってすごい組織なんだよね……。そんな組織にシィなんかが……、うぅ……、お腹が痛くなってきた……)
七星団の制服の上から、お腹を優しくナデナデするシーリーン。
その時だった。
まるで脳裏に電気が走るみたいに、シーリーンは過度に緊張する。
しかし、一度深呼吸して、緊張はほどけなかったが、緊張したままでも充分に頭を回せる冷静さを取り戻すと――、
「…………っ、マリアさん、ターゲットから魔力反応が」
「情報、ありがとうございます、よく落ち着いて報告できましたね。コホン、アリスさん、こちらマリア。至急反応をください、どうぞ」
『こちらアリス、どうぞ』
「敵に魔力反応あり。イヴちゃんに魔術防壁の準備をさせてください、どうぞ」
『了解、通信を終了しますね? どうぞ」
「了解、通信終了」
そして、通信が終了する。
その時、シーリーンは狼狽した様子でマリアに告げた。
「マリアさん! たった今、クリストフさんの魔力が底上げされました!」
「…………っ、それって――!?」
バッ、と、マリアはアリスとイヴが隠れている宿の一室に視線を向ける。
別にシーリーンの報告が愚鈍だったわけではない。本当に運悪く、マリアの通信が終わったそのタイミングで、クリストフに異変が起きたのだ。
一方で、シーリーンが見たのはクリストフの方だった。宿の前にはまだ到着していなかったが、ずいぶんと近付いたところで立ち止まって、歩みを止めており、しかし、彼の体内では悍ましいほどナニカが蠢いている。
背筋が痺れるほどイヤな感じがするシーリーンとマリア。
そして、次の瞬間――、
「――【闇の天蓋から降り注ぐ黒槍】ッッッ!!!」
突如、腹の底に沈殿し響くような、ゴウッッ、という、轟音を大気に唸らせて、夜空から降り注ぐ、闇よりも暗い漆黒の色を呈した数多の長槍。
その全長は優に3mを超越えていた。
先端は古竜の鱗の貫くほど鋭利で、速さは神速。
狙いは一切合切の殺害で、穿つのはエリア全域。
そのような魔術的な凶器が、まるで古竜の飛翔時と同等の速さを誇り、たかが石造りの建物に降り注いだのだ。
建物を裂き、石を崩し、地面を穿つ。
幻などではない、まさにこれは殺戮の体現であった。
深々と黒槍が刺さる宿屋の跡地。土煙が轟々と舞い、呆気も感慨も慈悲もなく、ただただ無常に瓦礫が縦横無尽に散乱する。
実に非現実的、実に圧倒的、そして、実に悪辣の極点。
クリストフはシーリーンたちに包囲されていることに気付くまでは、まだよくても、アリスとイヴが待機している一室だけではなく、宿の全体を壊滅させた。
七星団の団員である2人どころか、まず間違いなく、他の数多くの利用者や、宿屋の主人が、血に塗れ、五臓六腑を吹き出して、死滅の淵に沈んでしまったはずだろう。
正気の沙汰ではない。どのような理由があるかは知らないが、このような大々的な魔術のキャスト、紛うことなくスパイという役割から逸脱した行いだ。
目立つのは必定で、絶対に近隣の住民や歩行者が、七星団に通報すると言い切れる。
「――【雷穿の槍】!」
刹那、マリアの雷属性の魔術が明滅し、雷速で大気を疾――ッッ、と突き進む。
その魔術は万物を灼き焦がし灰燼に還す威力を誇っていた。
そして、それはウソも偽りもなく一瞬の出来事。
人間の動体視力を優に超える雷撃を、ただの人間が躱せる道理はどこにもなく、まして、マリアはクリストフの背後からその雷魔術を撃ち放った。
情報を付け加えるなら、マリアの狙撃は立射でも膝立射でもなく、再三になるが伏射に他ならない。入団したのはつい先日でも、七星団学院に在籍していて、その類の講義、訓練を受けている以上、そして、クリストフが闇の魔術をキャストする際に立ち止まっていた以上、外す方が難しいというもの。
当たるのも必然で死ぬのも必然。
その光景にシーリーンは焦燥感に駆られながら――、
「殺せましたか!?」
「いえ……、いざという時のために殺害の許可は下りていて、わたしも一撃で殺すつもりでいましたが……」
通常ならば全身の血液が沸騰して、肉が焦げるような雷による一撃。
しかし、クリストフは倒れることなく立ったままで、しかも無傷だった。
これの意味するところは――、
「…………っ、死霊術ですね! いくつかの霊魂を消費して、一度死んだあとによみがえった!」
「死霊術!? それじゃあ……っ」
「ええ……っ、シーリーンさんの報告は、1秒も遅れていませんでしたからね……っ! なのにシーリーンさんが言ってくれたように彼の魔力が底上げされたのは、先手を許してしまったのは、霊魂を代償にした実力強化が原因! 恐らく、その中には時間の流れを弄って加速する魔術も含まれているはず!」
ヤバイヤバイヤバイ……ッッ、と、シーリーンもマリアも焦燥する。
脳から耳をキンキンするような警鐘が塞いだ。
警鐘なんてモノ、ただの比喩にすぎないが、しかし、今を喩えるならばどのような感じか、を、問えば、そのように感じてしまうほど、シーリーンとマリアは歯噛みする。
まず、分隊の中で一番強いイヴがやられた。
その上で、一度狙撃して、それで仕留められなかったのだから、どこから撃たれたのかも、十中八九、おおかたの見当が付けられているはず。
戦慄するシーリーンとマリア。
真っ先に悔やむべきは自らの実力不足のはずだが、思わず、ここにはいないセシリアに、文句の1つも叫びたくなってしまう。
それほどに窮地。
しかし――、
「舐められたモノだよ――、この程度でわたしを殺そうなんて」
「…………っ、あれは!」「イヴちゃん!?」
「――闇が光に勝てる道理などない、死滅を以って、そのことを教えてあげるよ」
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