ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~
1章7話 第1特務執行隠密分隊、結成する!(2)
「質問、よろしいですかね?」
「はい! マリアちゃん!」
「わたしたち、明らかに新兵なんですけど、新兵だけで構成された部隊なんて、危なすぎませんかね?」
「そんなことは百も承知だぞ! ただ、これには七星団の事情があってねぇ」
「事情、ですか?」 と、シーリーンはキョトンとする。
「うん! 結論から言うとね、第1特務執行隠密分隊にはスパイの調査、七星団という組織の内部クリーニングをお願いしたいんだよね」
シーリーンたちに知る由はなかったが、それは、アクアマリンの月の26日水曜日のロイとアリシアの会話で、彼女が彼に説明したとおりである。
無論、シーリーンたちになぜ知る由がなかったのかといえば、その時、その場で、アリシアがロイに他言無用をお願いしたからであった。
要するに、アリシアが言っていたそのスパイ掃討作戦に、シーリーンたちが選ばれたというわけ。
いや、この場で語る必要がなかったから、セシリアは特に語らなかったが、そもそも、シーリーンたちとジェレミアが受けた試験は、その作戦の募集を兼ねていた、否、それこそが主な試験開催理由だった。
少し考えれば、ロイならば気付いただろうが、アリシアがスパイ掃討作戦の概要をロイに話した数日後に、シーリーンたちの試験が行われた=つまり、そういうこと、という感じ。
「つまりね? この作戦は七星団の一部の人間しか知らないの。当然だよね。七星団全体に、スパイ掃討作戦を実行します~、なんて告知したら、対策を打たれちゃうもん! それで! その作戦で一番重要なのは、ずばり人選! スパイ本人をこの作戦に参加させちゃったら、調べる側が、調べられる側にいるはずのスパイを見逃す~、ということも発生してしまうしね。だ・か・ら、今回の人選はこうなった、っていうわけ♪」
「なるほど、七星団の中にスパイがいる。なら、新しく入ってきた人をこの作戦のメンバーにすれば、メンバーの中にスパイが紛れ込む可能性は低くなる、という理屈ですね?」
「正解! 流石、最年長のマリアちゃん!」
と、ここで少し疲れたのか、セシリアが近くにあった椅子に座る。
その際、まるで男をたぶらかすしか能のないようなだらしがない爆乳が、たゆん、と、大きく揺れる。
「セッシーからの説明は以上かな? それじゃあ! みんなからの質問受け付けタイムに突入!」
「はいだよ!」
「どうぞ、イヴちゃん!」
「その……、第1特務執行隠密分隊? の小隊長? ううん、人数と名称を考えると分隊長かな? とにかくそれって、セシリアさんなの? 正直、特務十二星座部隊の一員が隊長なんて、考えられないよ」
基本的に、団体の名称は所属しているメンバーの人数で決まり、2~20人で分隊、21~60人で小隊、61~250人で中隊、300~1000人で大隊、500~5000人で連隊、2000~5000人で旅団、1~2万人で師団、3万人以上で軍団と呼ぶ。数が重なっているところはケースバイケースだ。
「いや? 分隊長はマリアちゃん、補佐官をアリスちゃんにしようかなぁ、って、思っていたっていうか、すでに決まっているよ?」
「わたし!?」 と、マリアが驚く。
「いやはや、イヴちゃんはとっても強いけど、いかんせん、少し感情的だし、戦術とかを考えるのは苦手だから。少なくとも、試験の結果を考慮すると」
「が~~ん、だよ!」
「ゴメンね、でも、これ、人の命がかかっているからさ」
「うぅ……」
「でね? 実は第1特務執行隠密分隊以外にも、スパイ掃討作戦を実行する予定の分隊は存在するんだよね。まぁ、お察しのとおり、シィちゃんとジェレミアくんが戦った試験、他にもいっぱい、戦っているペアがいたでしょ? その合格者が、ね?」
「それで、その複数の分隊のトップが、セシリアさんなんですか?」
「アリスちゃん! 正解! いわゆる極秘分隊が王都だけで10個、王都に限定しなければ、国内に100個存在するからね。グーテランドの領土面積と七星団の地方拠点の数を考慮したら妥当な数字なんだけど、ほらっ、すると単純計算で、1000人前後の極秘分隊を束ねることになるからね!」
「全然極秘じゃないよ!?」
「あはっ♡ まぁ、バカ正直に10×100をしちゃったからね! 分隊の平均値が10だと仮定した計算だけど、現に第1特務執行隠密分隊は4人で構築されているでしょ? 実際はもっと少ないから」
「それでも極秘とは言えないような……」
「おっと、その考えはいけないよ、シィちゃん? 人数で考えるからダメなの。全体との比率で考えないと」
「な、なるほど、です」
「それで、他に質問はあるかな?」
「そ、それでは、わたしからも……」
「はい! マリアちゃん!」
「ハッキリ申し上げますと、わたしには分隊長なんて無理だと思っております。理由は、今日が入団初日の新兵だからです。しかし、せっかく与えられた任務、役職を、いきなり放棄しようとも、考えておりません」
「うんうん、それでそれで?」
「わたしごときでは対処できない事態が、これから任務を遂行するにあたり、恐らく、どうしても出てくると考えられます。その際、セシリアさんはかなりご多忙と存じますが、どこに報告や、判断の代理の依願をすればよろしいのでしょうか?」
「うんうん、そうだよねぇ~。セッシーも、秘匿性を重視するあまり、新兵に分隊長をやらせるのはどうなの、って思っていたんだよ……。と、いうわけで! マリアちゃん、念話のアーティファクトを出してくれるかな?」
「? はい、これになりますが……」
すると、セシリアは椅子から立ち上がり、まるでスキップするようにマリアに近付く。
そして自分のカズラ(改)からもアーティファクトを取り出して、それを、えいっ、と、マリアのアーティファクトに近付けた。
「よしっ、これで登録されたね! ちなみに、セッシーはよく特務十二星座部隊の会議とか、枢機卿の会合でアーティファクトの着信に応答できない時があるんだけど、その時でも、セッシーが直々に調査して、この人なら信頼できる! って判断した団員に繋がるから、安心してね?」
「よ、よかったですね……」
「アハハ! 流石に新兵に分隊長を任せるんだもん! このぐらいの保険は用意しておいてとーぜん、とーぜん! さて、他に質問は?」
「じゃ、じゃあ、シィからも1つ……」
「うんうんっ!」
「そもそも、スパイの調査って、具体的になにをするんですか?」
「まず、今この会議が終わったら、セッシーが調査してほしい団員の名簿を渡します」
「「「「はい」」」」
「次に、名簿と同時に渡されるスケジュール表に沿って、実際に団員の調査をお願いするよ。もちろん、君たちは新兵。そんな高度な隠密行動はできないはずだし、できないことを恥じる必要も全然ないけどねっ☆ 当然、マニュアルは用意するし、それのとおりに作戦を遂行してほしいんだけど、もし、敵に存在がバレた! とか。敵が今にも国外逃亡しそう! とか。そういう事態に陥ったら……」
「陥ったら?」 と、アリスが訊き返す。
「殺してもおっけーっ!」
「ハァ!? 相手って魔王軍の一員ですよね!? そう簡単に殺せるんですか!?」
驚愕するアリス。
しかし、セシリアは特に意に介した様子もなく――、
「だって、この分隊にはイヴちゃんがいるし」
「「「あぁ~」」」
「そこで納得しないでほしいんだよ!?」
「もちろん、他の分隊にはイヴちゃんのように明らかに神様に愛されているような魔術師はいないよ? ただ、忘れてほしくないことが1つあるかな?」
「忘れてほしくないこと、ですかね?」
「それは、この分隊は4人で1つということ」
「「「「――――」」」」
「別にね? セッシーは精神論を語っているわけじゃないの。気合で敵を倒せーっ、なんて言っても、意味がないのはわかっているし、実際、戦争では精神論を語る方こそ、負ける傾向にあるとは思わない?」
「それは、まぁ……」
「兵士は、特に上層部は、その中でもさらに参謀指令本部は、徹底してロジカルであるべき。それを踏まえて、4人で1つということを意識してほしい、ということは、数を生かしてほしい、ということなの」
「あっ、もしかして……」
「シィちゃんは察したかな? そう、スパイはグーテランドの国内、ましてや王都で、なかなか他のスパイと、まぁ、連絡を取り合うことはできても、合流することは難しい。だから、1対4、敵の援軍を許したとしても、2対4か3対4の形を常に作り続けてほしい。数で優位になって、万が一、分隊の誰かが攻撃を受けちゃった、って、展開になっても、別の誰かが救助に向かえるような戦いをしてほしい」
「「「「――――」」」」
「まぁ! 戦いに突入するのは本当に最後の展開だし、仮に戦いに突入しても――」
「「「「しても?」」」」
「ぶっちゃけ、君たちなら倒せるレベルのスパイしか、名簿には載せていないから♪ 君たちはね? 自分たちが思っている以上に、強いんだよ? だから第『1』特務執行隠密分隊なんだし」
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