ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~
1章5話 イヴとマリア、各々、兄と弟に対する恋に悩む。
そして数日後――、
ロイ、シーリーンとアリス、イヴとマリア、そしてヴィクトリアとクリスティーナは、星下王礼宮城の敷地の外、門扉の前、門扉を守る七星団の警備兵がいる近くで、最後の挨拶をしようとしていた。
無論、最後ではあるが、最期ではない。
今日、この日、シーリーンとアリス、イヴとマリアは七星団に入団して、正式にどこかしらの部署に配属されることになるのだ。
現に4人は七星団の制服を身にまとっている。
ちなみに、合格通知はつい先日に届いていて、入団式もすでにすませてある。また、その入団式では、王族でもあるし、4人にとっての友達であるヴィクトリアが、4人に限定しないが、とにかく祝辞を述べた。
「それじゃあ、いってらっしゃい。シィ、アリス、イヴ、姉さん。くれぐれも、ケガには注意してね?」
「みなさま、お気を付けていってらっしゃいませ」
「不肖ながらこのクリスティーナ、みなさまのご武運を僭越ながら祈願させていただきます。ファイト! で、ございます」
再三になるが、今、ロイは休暇中である。流石に入団式には参列したが、祝辞は述べなかった、と、いうより、述べようとしたら「ご静養中の王族にそのようなことは……っ!」と恐縮そうに断られた。それと同様、今、4人は初仕事に向かうわけだが、ロイがそれに付いていくわけにはいかない。
また、ヴィクトリアに関して言えば、彼女は王族ではあるが七星団の団員ではない。
そしてクリスティーナにいたって言えば、七星団の団員でないのはもちろん、ロイやヴィクトリアのように王族ではない、むしろ王族に仕えるメイドだから、縁すらなかった。
ゆえに、3人がお見送りするとしたら、ここが限界。
「うんっ、ロイくん、ヴィキーちゃん、クリスさん、いってきます!」
「行ってくるわね? ロイ、ヴィキー、クリスさん」
「すぐに初仕事を終わらせて、すぐにお兄ちゃんたちのもとに戻ってくるよ!」
「クリスさん、弟くんが休暇中なのに働かないように、警戒、お願いいたしますね?」
各々、挨拶を終わらせる7人。
しかし、挨拶は終わったが、コミュニケーションは終わっていない。
ふと、シーリーンがまるでスキップするように、ロイに近付いて、彼との距離を詰めた。
「? どうかしたかな、シィ?」
「えへへ♡ いってきますのキスをしようかな、って♡」
「……、……えっ?」 と、数泊遅れて呆けるロイ。
「「「「「ええっ!?」」」」」
と、なぜかロイ本人以上に驚く残りの女の子5人。
が、シーリーンはまるで意に介した様子もなく――、
ロイに正面からギュ~~、と、抱き着いて――、
服越しにもフワフワで、むにむにで、とにかくやわらかい胸を押し付けて――、
「――――、んっ、んっ♡♡♡」
「~~~~っ、~~~~っ、~~~~っ!」
ロイの口に、自らの薄桃色の、花の蕾ように可憐な唇を押し付けた。
流石にみんなの前だから、舌を絡ませるディープキスではなく、唇をスタンプのように押し付けるスタンプキス、あるいはプレッシャーキスだったが、しかし、自分以外の彼の嫁、アリスとヴィクトリア、そして彼の妹と姉、イヴとマリアに見られながら口付けをしたことには変わりない。
一方でロイは――、言ってしまえばされるがまま、だった。
あまりにも急な展開すぎて、ただ、シーリーンの唇の感触しかわからない。それしか頭に浮かんでこない。
まるでマシュマロのように甘くてやわらかい。
女の子の唇をといえど、しょせんは生き物の身体の一部。味なんてするわけがない。
しかし、シーリーンは違った。
シーリーンはフーリー、神話の時代から美少女しかいない種族ということで、彼女の唇は想像を絶するほど、胸が切なくなるほど甘美な女の子の味がするのだ。
「えへへ♡ これでシィ、部隊に配属されても頑張れそう♡」
「そ、っ、そっか……、う、うん! それならよかったよ!」
と、なんとか気丈に振る舞うロイ。
しかし、ロイがいくらなにもなかったような態度を取るために頑張ろうとも、特にアリス、イヴ、ヴィクトリアの前でキスした事実を、当然、なかったことにできるわけがない。
「ねぇ、ロイ」
「な、なに、アリス?」
「別にね? 私はロイとシィが何回キスしてもなにも思わないわ。それは本当。むしろ新婚夫婦同士、仲が良くてすごく喜ばしいことだと思うのよ」
「う、うん……」
「でもね? 確かロイって、みんなを平等に愛してくれるんじゃなかったかしら?」
笑顔が怖いアリス。
無論、イヴとヴィクトリアの笑顔も怖かった。
「じゃあ……、その……、~~~~っ、アリス!」
「ふぇ!? 私からするんじゃなくて、ロイの方からするの!? わ、わわ、私……っ、まだ心の準備が……っ!」
ロイはアリスの肩に自分の両手を添えた。
そして――、
「――――――」
「んっ♡ はぁ♡ んんっ! んっ、ろ、ロイ……、んむっ♡」
口付けを交わすロイとアリス。
シーリーンの時は急すぎてじっくり見る余裕がなかったが、前置きがあった今回、その光景を、他の女の子全員は、頬に乙女色を差しながら、太もも、内股をもじもじキュンキュンさせながら、ロイとアリスに穴が空きそうなほど凝視してしまう。
しかし、2人が息を吸うために唇を離した、ちょうどその時だった。
「コホン! ご主人様? アリスさま? そろそろイチャイチャタイムを終了させませんと、遅刻の可能性が濃厚でございます」
「~~~~っ、クリスさんの表現に、絶妙に胸が跳ねてしまうわね……。心臓に悪くて」
「あっ、ご、ゴメン……、みんな……。別れを惜しんで遅刻したら、本末転倒だよね」
クリスティーナのおかげで、どうにか遅刻は回避される流れになりそうだった。
しかし、これに異を唱えた者が2人いた。
即ち、イヴとヴィクトリアの2人である!
「待ってほしいんだよ! わたし、まだお兄ちゃんとキスしていないよ!?」
「わたくしもですわ!」
イヴは幼い感じで駄々をこねて、ヴィクトリアは可愛らしく頬を小さく膨らませる。
ちなみに、最後の1人であるマリアは「…………っ、ホントは……、わたしだって……」と小声を零し、女の子らしく拗ねながら、どこか泣いてしまいそうであった。
ロイたちに知る由はなかったが、マリアはそのあと(素直になりたいんですからね……?)(姉だからお利口さんを装っていますけど、弟くんと、キス、したいんですからね……?)と、言おうとしたかったのである。
今まで、このようなことは(アピール、スキンシップすることはあったが、本格的に一線を超えようとすることはなかったという意味で)少なかったが、流石にそろそろ、ロイの周りに女の子が集まりすぎて、なぜか、どこか、焦るようになってしまったのだ。
が、それはともかく――、
「僭越ながら、お嬢様、王女殿下。お嬢様はシーリーンさまやアリスさまとお違い、ご主人様のお嫁さんではございませんし、一方、王女殿下にいたりましては、七星団に配属されるわけではございません」
「うぬぬ、だよぉ……」
「ぐぬぬ……、ですわ」
「畢竟、キスの必要は皆無でございます♪」
クリスティーナは道端という身近に咲く、麗らかなタンポポのように健気な微笑みを浮かべる。まさに、パーフェクトメイドさんスマイル。が、今、この時に限って言えば、そのようにやわらかい笑みこそ、何物にも負けて劣らぬ無言の圧力を放ち続けるのだ。
「コホン、それじゃあ、改めて、みんな、いってらっしゃい」
そのようにロイに言われ、送り出されたので、彼のことが大々々好きなシーリーンたち4人は、後ろ髪を引かれる思いでも、出発しないわけにはいかない。歩み始めないわけにはいかない。
そして、星下王礼宮城の城壁の角を曲がり、ロイ、ヴィクトリア、クリスティーナの姿が見えなくなったところで、イヴは――、
「わたしも……、いつかお兄ちゃんと、キス、できるのかなぁ……?」
と、隣を歩くマリア以外、前を歩くシーリーンとアリスには聞こえない呟きを漏らす。
言わずもがな、イヴはロイのことが大好きだった。それこそ、男女がキスすることの意味を正しく理解できる年齢になって、実際に理解しても、それでもキスを許せるぐらい。
なのによくみんなには、「恋人じゃない」「お嫁さんじゃない」と、曖昧にされてしまう。
相手に悪気がないことは百も承知なのだが、それでも、恋人の好きによって、家族の好きを蔑ろにされてしまうと、モヤモヤしてしまうのだ。
当たり前だ、自分の気持ちを他人の気持ちの下位に設定されて、下位互換だと決められて、モヤモヤしてしまわない人間はいない。
ゆえに、イヴは思う。
好きって平等じゃないのかな? と。
家族の好きは、恋人の好きの前には、控えなきゃいけないモノ、つつしまないといけないモノなのかな? と。
一方で、マリアは――、
(イヴちゃんまで素直になったら、もう、わたしが素直にならない言い訳は残りませんね……)
それに関しても当たり前だ。マリアは家族だから、ロイに対して一線を超えないようにしている。なのに、イヴはその一線を越えようとしていた。そして実際に越えてしまったら、つまり、それはそういうことになってしまうのか?
自明だ。家族でも素直になれる実例ができてしまった以上、マリアはそれを言い訳に使えなくなる。
(はぁ……、お兄ちゃんを好きになるのって、本当に大変だよぉ……)
(はぁ……、弟に恋をするって、本当に大変ですね……。いや、恋かどうかはまだ不明なんですけどね!? まだ、少なくともまだ、素直になるのは早いですからね!?)
翻り、背後で行われている葛藤に気付かない、前方を歩く2人は――、
「あっ、し、シィ!」
「どうしたの?」
「今、腕時計を見たら、まだ全然時間があるわ!」
「ほぇ!? どういうこと!?」
「前回の入団試験に赴く際の、別れの挨拶の時も、キスはなかったけれど、時間ギリギリまで粘ることになったわ! 同じことを2度起こさないために、クリスさんはきっと、時間よりも前の段階で、そろそろ遅刻の可能性が濃厚でございます~、みたいなことを言ったのよ!」
「そんなぁ……、1秒でも長くロイくんといたかったのにぃ……」
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コメント
ペンギン
もう、2人ともくっついちゃって下さい!僕的にもその方がスッキリするので!