ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~
1章2話 アリシア、返事する。(2)
「ですが、一応、面接ぐらいはこの場でしておきましょうか」
「よ、よろしくお願いいたします!」
わずかに慌ててしまうロイ。
面接やテストは予想していたが、まさか夜分遅くに話が進んでいき、さらにまさかバルコニーで始まるとは思ってもいなかったから。
「あらあら、ふふっ、そこまでかしこまらなくてもけっこうですよ? ただ、私の質問に答えればいいだけですし、ロイさんの人柄はすでに知っておりますから、相手のことを知るためにイジワルな質問をする~、ということもありません」
「は、はい!」
背筋を改めて伸ばすロイ。
日本にはもちろん、この世界にも、親しき中にも礼儀あり、という諺は存在していた。
今から行われるのは面接だ。いくら多少は親しいといっても、普段以上に礼節を重んじて受けようとロイは決める。
そして、彼の心の準備が整ったと察すると、アリシアは花の蕾のように薄桃色の唇を開いた。
「質問はたった2つです」
「はい」
「まず、第1の質問、ロイさんは騎士か魔術師かでいえば、間違いなく騎士です。それなのに、同じカテゴリーの団員ではなく、魔術師である私に弟子入りを申し込んだ理由は?」
これは当然の質問だった。
騎士が魔術師に教えを乞う。確かに得られるモノは多々あるだろうが、比較すると、どこからどう考えても騎士を師匠にした方がそれは多い。
仮にロイが弟子入りするのがアリシアではなくエルヴィスだったならば、基本中の基本、剣の握り方から振り方、斬り方、力の入れ方などを初心に帰って1から洗練化することもできるし、無論、洗練化を終えたら、応用はもちろん、エルヴィスと聖剣と聖剣をぶつける模擬戦だってできる。
強いのはアリシアでも、剣の使い方が上手いのはエルヴィス。これは厳然たる事実だ。
アリシアに弟子入りした場合、強くなれるのは確実だが、例えばエルヴィスの弟子になった時に得られる、計り知れない恩恵は得られなくなってしまう。
が、ロイがその程度のことを考えていないわけがない。
「率直に、最強だからです」
「できるならば、詳しく」
アリシアは幼女らしく、可愛さ満点で小首を傾げて追及した。
その際、サラッと髪が揺れて、女の子の匂いが夜風に混じる。
「アリシアさんの言うとおり、ボクは騎士です。魔術師ではありません。ですが、ボクが目指しているのは騎士の頂点じゃない。聖剣使いも、魔剣使いも、普通の魔術師も、召喚士も、錬金術師も、占星術師も、エクソシストも、全てが入り混じっている戦場の頂点です」
「――――」
「ボクが目指しているのは最強です。だから、最強のあなたに教えを乞い、そして、いつかあなたを超える。そのための弟子入りです」
ロイは堂々と言ってのけた、いつかあなたを超える、と。
超えようとしているのは、目の前で微笑む王国の最強だ。夢物語で終わる可能性は果てしなく高い。
それでも、夢を見なければ夢は叶わない、と、ロイは考えていた。
「傲慢ですね。だからこそ、その答えを気に入りました」
正直に答えようと思ったとはいえ、傲慢だとは自分でも思っていたが、正直、だから気に入るというのはよくわからなかった。
だが、その理由をアリシアは訊くまでもなく答えてくれる。
「傲慢とは、向上心ですから」
「ありがとうございます」
「ですが、私は知ってのとおり、星の序列第2位です。第1位はエドワードさんですし、彼は魔術師ではなく、ロイさんと同じく聖剣使いにして魔剣使い。まぁ、ロイさんのエクスカリバーが聖魔剣なのに対し、エドワードさんは聖剣と魔剣の双剣流ですが」
「なぜエドワードさんではなくアリシアさんなのか、それが、第2の質問ですか?」
「ええ、肯定です」
アリシアは妖しい瞳でロイを見る。恐らく、1つ目の質問よりも、こちらの質問が本命なのだろう。
だが、ロイは臆しない。答えなんて、考えていることを言えばいいだけだから。
考えていることが皆無ならばこの問答にすさまじく緊張するだろうが、ロイはそこまで愚かではなかった。
事実、ロイはエドワードのことも師匠の選択肢に入れていて、その上で、アリシアを選んだのだし。
「強さの方向性の違いです」
「方向性?」
今度はアリシアがわからなくなる番だった。方向性とはメインの攻撃手段が剣か魔術かのことだろうか、と、アリシアは一瞬思うも、しかし、それならむしろ剣、エドワードを選んで然るべきである。
結局、アリシアが悩んで、強さの方向性が関連して自分が選ばれる理由に辿り着くことはなかった。
「確かに、エドワードさんはアリシアさんよりも強いでしょう。ボクは実際に【白羊】の実力を見たことはありませんが、星の序列がそれを物語っていますし」
「そうですわね、彼と模擬戦闘をしたことは何度かありますが、引き分けに持ち込むのが精一杯です。と、いいましても、片手で数えられる程度の戦闘回数ですが」
「ですが、恐らくエドワードさんは、大規模な破壊はできない」
「へぇ? と、いいますと?」
「もちろん、聖剣と魔剣の双剣流、そして魔術無効化のゴスペル、最後に時属性と空属性の魔術は強力です。しかし、アリシアさんの破壊の規模が対軍レベルなら、エドワードさんの破壊の規模は対人レベル。違いますか?」
「正解です。お察しのとおり、彼のメインウエポンが剣である以上、もちろん特務十二星座部隊に見合う遠距離攻撃もできますが、基本的に彼は接近戦を好み、かつ、遠距離攻撃よりも近距離攻撃の方が強いです」
「たぶん、ジャンケンと一緒なんですよね? 仮定として、1万の敵軍がいたとしても、それはアリシアさんには勝てない。そして、アリシアさんはエドワードさんに勝てない。最後に――」
「エドワードさんは、私より強くても、規模は小さいから、1万の敵軍に勝つとしても、多少は苦戦してしまう」
「ええ、それがボクの考えです」
と、ロイは締め括る。
以上こそ、ロイはエドワードよりもアリシアを選んだ理由、それに他ならなかった。
「安心してください、それであっていますから。ですが、1つだけご注意を」
「注意?」
「確かに私の破壊の規模は凄絶で、エドワードさんの破壊の規模はけっこう私に劣ります。無論、私に劣るだけで、平均的な騎士と比べたら雲泥の差ではありますが」
「はい」
「ですが、勘違いはしないように注意してください。エドワードさんは確かに広範囲への影響力が低いですが、そのぶん、自分に近しい周囲に対しての戦場支配力、とでも言いましょうか? とにかく、それが強いのです」
ロイは思わず戦慄する。
恐らく、アリシアは地図、軍事マップ、戦場の1000という桝に1万の破壊を振り撒くことが可能。
対してエドワードは、1000という桝の外側9割にあまり被害を出さず、代わりに自分の周囲の残った1割に、1万の殲滅を振り撒くのだ。
同じ程度の戦力でも、戦力密度が違うのである。
「で、それでも私に弟子入りを申し込みますか?」
「もちろんです」
即答するロイ。迷いなんてモノは微塵も存在しなかった。
ゆえに、少し上機嫌になって、アリシアは追及する。
「戦力密度の高さよりも、戦力の規模の大きさに惹かれる理由を、まだ訊いていませんでしたね」
「簡単なことですよ」
ロイは清々しい表情で簡単、と、言ってのける。
事実、本人はそれを本当に簡単だと思っているのだろう。
師匠にエドワードと選ぶか、あるいはアリシアを選ぶか、なんて、普通の団員、あるいは七星団学院の学生なら、緊張して夜も眠れないほどだというのに。
「――――」
「ボクにとって、戦う力は守る力だ。恋人を、家族を、友達を、同僚を、そして国民を、魔王軍の魔の手から守る力だ。そしてボクは、叶うならばなるべく多くの人を、広いエリアを守りたい。全ての国民を守るのが幻想、実現不可能だとしても、1人でも多くの人を守りたいと思うスタンスは、間違っていない」
「――――それが、強さの方向性の違い、ですか」
「そのとおりです。だから、ボクはエドワードさんよりもアリシアさんに弟子入りしたいです」
アリシアは再度瞑目する。
この少年は、あまりにも純粋だった。
最強に弟子入りしたいから、自分とエドワードのどちらを選ぶかで選択を迫られた。
そこまではいい。
そこで、現実的な指導、適切な助言ができる相性よりも、戦力の方向性、言ってしまえば戦争に持ち込む信念を選択において優先する。
これはあまりにも精神的だった。
騎士が騎士に、魔術師は魔術師に弟子入りするのがオーソドックスなこの国において、戦い方が気に入ったから別の方に弟子入りする?
ハッキリ言って常識的ではない。
だが、アリシアはすでに理解している。
この少年の精神は特務十二星座部隊レベルで、そこまで極まった精神を、今さら他人が1mmでも別の方向に矯正することは不可能。
かつ、まったく論理的ではないし、正直自分は精神論とか根性に対して否定的だが、なぜか、この少年は想いのチカラでとんでもないことをするし、事実、魔王軍の幹部の1人を討った。
ならば、答えは決まっていた。
するとアリシアは目を開いて――、
「わかりました、面接はこれで終わりにしましょう♪ 休暇明けに、また、今度はこちらから呼び出させていただきますね?」
「はい! ありがとうございます!」
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コメント
ペンギン
やっぱり面白いです!毎回更新楽しみにしています!頑張ってください!応援しています!