ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

4章14話 ロイ、置いていかれたくなかった。



「ホントに?」
「うん、ホントに」
 ロイが訊くとシーリーンは嬉しそうに頷く。

「シィが?」
「うん」
 ロイが問うとシーリーンはさらに可愛らしい笑顔になる。

「ジェレミアを倒した?」
「うんっ!」
 ロイが確認すると、シーリーンはますます彼に愛をねだろうと身じろぎする。

「それで?」
「だから今日はロイくんに、い~~っぱい! ご褒美をもらえたらなぁ、って♡」

 シーリーンとジェレミアが戦った日の夜――、
 星下王礼宮城のロイの自室にて――、

 シーリーンはベッドの上に座るロイ、彼の膝の上に座っていた。しかも彼と向き合う形で。服は着ているものの、いわゆる性交でいう対面座位である。

 シーリーンは物欲しそうに自分の胸を、ロイの身体に押し当てた。
 大々々好きなロイに、少しでも触れていたかったのである。

「っていうか、まさかジェレミアが入団試験にきていたなんて……」

 イチャイチャらぶらぶ状態のシーリーンとは、一瞬だけ相反して、ロイは顔に陰を落としてつらそうな雰囲気を出した。
 当たり前だ。最愛の女の子が、イジメてきていた男と再会して、そいつに性奴隷宣言され、事実、シーリーンが諦めてしまっていたら、そのとおりになってしまっていた可能性もあるのだから。
 が、ロイは少し溜息を吐いたあと、思考を切り替えて、抱き着いてきていたシーリーンを抱きしめ返す。

「ほぇ!? ロイくん?」
「怖かったよね? 傍にいてあげられなくてゴメンね? もう大丈夫だから。だから、今日はいっぱい抱きしめてあげる。いや、抱きしめさせてほしい」
「~~~~っ♡ えへへ♡ 流石ロイくんっ、そういう優しいところ、大好き♡」

 言うと、シーリーンはロイに口付けした。
 もうロイに対する愛情を抑えられなかったのである。
 で、2人は抱きしめ合ったまま会話を進め――、

「ちなみに、筆記と面接の方は?」
「筆記はギリギリだったけど、絶対に不合格、ってラインではないと思う。で、面接はたぶん100点満点!」

「そっか、頑張ったね?」
「えへへ♡ うんっ、ロイくんに褒めてもらえるようにいっぱい頑張った」

 ちなみになぜ戦闘テストのあとに筆記テストと面接なのかというと、七星団の方針だからである。無論、試験といえども戦闘は過酷なモノだ。ゆえに、身体を酷使しても頭を回せるかを確かめるために、戦闘テストのあとに筆記テスト。そして同じく無論、いくら疲れていても、七星団では上官には襟を正して接しないといけない。それを確かめるために、戦闘テストのあとの筆記テストのあとに面接。
 と、このような試験構成を採用していたのである。

「で、アリスが今日ぐらいはシィにロイくんを独り占めさせてあげてもいいんじゃないかしら、って」

「そっか。うん、でも、シィは頑張ってもんね。本当に偉いと思うと」
「やった、ロイくんに褒めてもらえた~っ!」

「それじゃあ、シィ、目、瞑って?」
「――――♡ んっ」

 従順なシーリーンは大人しく目を瞑り、ロイのことを受け入れる。そこから先は、イチャイチャで、ラブラブで、あまあまで、まるでシロップのようにトロトロな時間だった。
 シーリーンはロイの全てを受け入れてくれる。彼女にとって、彼の全てを受け入れてあげることが、最高のご褒美だったから。

 こうして、2人の愛の夜が更けていく。

 そして――、
 5回戦が終わって――、
 シーリーンが疲れて眠ってしまい――、
 時計が午前3時を回ったところで――、

「えっと……もう終わりましたかぁ?」
「は? えっ?」

 ロイがベッドのふちに座って水を1杯飲んでいると、どこからともなく幼い女性の声がした。
 で、コップをサイドテーブルに置いて、あたりをキョロキョロするロイ。

「こっちです、こっち」
「アリシアさ……っ!?」
「しっ、声が大きいですわ! シーリーンさんが起きてしまいます」

 いつの間にか部屋に入っていたのか、魔術で透明になっていたアリシアが姿を現す。
 そしてロイが大きな声を出そうとすると、目にも留まらぬ速さで彼の口を手で塞いだ。
 幼女の姿だったから仕方がないのだが、ロイの口元を覆うために、必死に背伸びして、腕もけっこうギリギリまで伸ばして、非常にTHE・幼女という感じが隠せていないではないか。

「ふはぁ! えっと、いつからここに?」
「一応、本当の本当に終盤ですわ……。あと、服を着てください」

 アリシアにしては珍しく頬を乙女色に染めて、初々しくロイから視線を逸らす。そして両太ももをスリスリさせて、どこか落ち着かない様子だった。

 一方で、ロイもロイで、言われたとおりに服を着直した。

「なんでボクの部屋に……」
「確認しますが、手紙を送ってきたのはロイさんの方でしたよね? 大切な話があるので、お時間ありませんか、って」

「す、すみません……。いや、そうなんですが……、アリシアさんはご多忙なはずので、一度、何日の何時なら時間が空いています、って、返信がくると思ったんですよ……。逆に、こんな深夜に直接くるとは思いませんでしたし……」
「あっ、すみませんでした……。窓の外から明かりが見えたので、それこそ最近少々忙しかったので、まだ起きているなら少し非常識でも、時間があるうちに訪ねておこうと考えまして……」

 完璧にエッチなことをしているのがあだになってしまっていた。
 まさかムード、演出のためのロウソクを、普通の周囲を照らす役割のロウソクと勘違いされたなんて。

「そうでしたか……。でしたら、ボクの方こそすみませんでした……」
「いえいえ、私の方こそ……」

「…………」
「…………」

 気まずくなってしまうロイとアリシア。
 すると、アリシアは深呼吸したあとに、パチン、と、指を鳴らして――、

「……っ、ここは!?」

 まるで紙芝居のように、一瞬で周囲の光景が切り替わる。
 ほんの一瞬前まで室内にいたはずなのに、今や屋外だ。

「安心してください、星下王礼宮城のバルコニーです。あのままロイさんの自室にいたままですと、いつシーリーンさんが目を覚ましてもおかしくなかったので」

 確かに、言われてみればそうだった。
 ここで、アリシアはコホン、と、咳払いする。

「それで、ロイさん、大切なお話というのはなんなのでしょうか?」
「あの……、アリシアさん……」
「はい?」

 少しだけ言葉に詰まるロイ。
 しかしその逡巡は本当にすぐ終わった。

 手紙を出した時点で覚悟できていたことだろう。みんなに置いていかれるのはイヤだろう。これは、自分が最強を目指す上で必要な話なんだ。ロイはそのように自分に語りかけて――、

 そしてキリッ、とした表情かおでアリシアと改めて向き合うと――、

「レナード先輩って、エルヴィスさんの弟子なんですよね?」
「? ええ、以前、ロイさんと一緒にお話を聞いた時のままでしたら」

 レナードはすでに特務十二星座部隊の人間に弟子入りしている。
 なのに自分は七星団に所属しただけで、そういうのはまだだった。

「あと、イヴはセシリアさんに見込まれているんですよね?」
「――あっ、――、そうですわね。イヴさんの光属性の魔術の適性は、セシリアさんを上回っていますから」

 イヴは1つの属性とはいえ、特務十二星座部隊の魔術適性を超えている。
 なのに自分は全てにおいて特務十二星座部隊の領域に届いていない。精神力なら超えている、と、シーリーンやアリスなら言ってくれるだろうが、それは目に見える数字ではない。

「そして、さっき聞きましたが、シィはシャーリーさんとベティさんからの評価をいただいている」
「ええ、ロイさんがシーリーンさんから聞いたように、私も2人から聞きました」

 シーリーンは実力では特務十二星座部隊はもちろん、ロイやアリスにも届かないが、それでも、先刻の戦いでシャーリーやベティでも難しいことをやってのけた。
 なのに自分のやってきたことといえば、覚悟と精神力があれば、極論、誰でもできるようなこと。

「そして、シィもイヴも、たぶん、本当に数日後から七星団の団員として活動することになって、レナード先輩も、現在進行形でエルヴィスさんに稽古を付けてもらっている」
「――――」
「それを踏まえて、お願いがあります」

 真剣なをするロイ。
 対するはすでにロイの言いたいことを察しているアリシア。

 見上げれば空は高く、夜風は歌うように2人の髪を揺らす。
 月だけが見ているバルコニーで、ロイは両手を握りしめ、次いで開く。
 そして――、

「アリシアさん、ボクを、あなたの弟子にしてください」
「へぇ」

 と、心底愉快そうにアリシアは微笑む。
 さらに、追撃のようにロイは言った。

「ボクの、師匠になってください」


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コメント

  • 佐倉唄

    【質問系コメントへの回答】
    Q1:最近、思ったんだけどさ、エクスカリバーって折れないんでしょ? だから体に巻き付けて戦えば傷付かないんじゃね?
    A1:それはもう剣ではなく鎧になりますから、使い手がイメージできないモノを反映することはできない、予めイメージを流し込んでおく以外、身体の一部で触れておかないと、イメージを流し込めない、等々、エクスカリバーのスキルの制限に引っかかってしまいます。また、仮に制限がなくても、爆発などを起こして酸欠で殺す、川や海に溺れさせて殺す、土砂崩れを起こして埋没させて殺す、『折れないこと』と『熱を伝えないこと』は同義じゃないから、蒸し焼きにして殺す、再生能力者が長期戦を挑んで、栄養失調で殺す、人質を取ってスキルを解除させるなど、けっこう攻略法が多いので、ボクも思い付いていましたが、本編で設定を使うか否か、迷っておりました。

    Q2:もうこの作品のジャンルに『エロ』って追加した方がよくないですか……?
    A2:タグは50文字までしか入力できないので、今以上に追加することができず、『エロ』は『R15』で代用できる、と、考えておりました。

    Q3:S極とN極ならくっ付いちゃわない?w
    A3:そのうち直します。

    Q4:魔術の適性は0~10なら11段階かと思うのですが……もしかして0は含まれていない感じでしょうか???
    A4:結果報告書には、0の場合0と記載されますが、作中世界では一般に、0のことを適性ありとは言いませんので(例えば時属性の適性が0なら、時属性の魔術は使えませんので、使えないモノに適性がある、と言うのはおかしい)仰るとおり、少しややこしいかもしれませんが、0は記載されるけれど、10段階には含まれない、というのが答えです。

    Q5:リタとティナのスリーサイズ逆じゃない?
    A5:逆じゃありません! リタは性的に無知なクセに、ロリコンをはじめとするHENTAIをたぶらかすような巨乳だから、その上で、巨乳なのに身長がロリロリしいからいいんです! ついでに言うなら、その体型をクラスの男子にエロい目で見られているのに、気付いていないところがいいんです! ティナだってそうです! ああいう感じの気弱な女の子がぺったんこだからいいんです!(力説   ちなみに年齢を考慮してもなお、身長が低いのは、人間ではなく妖精だからです。

    Q6:最近過去の話でずっと通知がきて続きがこないんですけど修正でもしているんですか?
    A6:結論から言うと修正しています。『小説家になろう』から『ノベルバ』に小説を取り込むと、改行が1つ減るシステム(『小説家になろう』で1つ改行しているところが、『ノベルバ』だと無改行になり、『小説家になろう』で複数行α改行しているところが、『ノベルバ』だと改行されていることはされていますが、α-1改行の文章になる形)だそうです。複数改行α-1は、まぁ、個人的には許せるのですが、改行1つが無改行になるのはあまりにも読者の皆様にストレスを与えると考え、ボチボチ改善作業をしておりました。今日の時点(2018年9月10日)だと、『内政チート、そして結婚制度』~『アリシア、気付いていた。(1)』がまだ修正できていませんので、かなり見づらい文章になっております。ですが、改行を元通りにしているだけで、誤字脱字の訂正を除き、ストーリーラインには一切変更を加えておりません。ですので、「修正だ! ストーリーが変わったんだ!」という意味合いで改めてご愛読なさる必要はございません。もちろん、「面白いから繰り返し読もう!」というご再読は大々々歓迎です。

    2
  • KK

    次の話が読めないのは何故?

    1
  • ペンギン

    いつも楽しみにしています!面白いです!これからも頑張ってください!応援しています!

    2
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