ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

2章7話 イヴ、ベッドの上で不安を打ち明ける。(1)


 その日の夜――、
 晩餐を終えたばかりで、まだ深夜と呼ぶには微妙に早い時間帯――、

 ロイはマリアの部屋に呼び出されていた。

 部屋に入ってみると、ネグリジェ姿のマリアの他に、同じくネグリジェ姿のイヴの姿があった。
 2人は今、ベッドに腰かけて、仲睦まじく並んでいる。

 で、ロイは近くにあった椅子に腰かけた。

「どうしたの、姉さん? 話ってなにかな?」

「ゴメンなさいね? 弟くんの部屋で話すと……その、シーリーンさんやアリスさん、ヴィキーさんがやってくる可能性もありましたので」

「確かに……」

 と、ここでロイは少しだけ考える。
 さん付けしているものの、マリアと3人の仲がよそよそしいというわけではない。むしろ、年齢差はあるものの友達と言って、なんら不思議ではない関係性のはずだ。

 特に、アリスとマリアは同じ読書という趣味を共有していたので、毎週というわけではないが、休日には揃って本屋や図書館に行くような仲でもあった。

 で、ここに集まっているメンバーを再確認するロイ。
 ロイと、イヴと、マリアの3人で、言うまでもないが、この3人の共通点は血が繋がっている、ということ。

 つまり――、

「それで、ひょっとしなくても、家族の話し合いだよね?」

「はい、そのとおりです。まぁ、今ではシーリーンさんもアリスさんもヴィキーさんも、弟くんの家族ですけどね」

「それで……イヴ? どうかしたのかい?」

 ロイはイヴに目線をあわせて問いかける。
 この話し合いのテーマがイヴに関係しているのは、一目瞭然だった。

 普段、元気で、明るくて、親しみやすいイヴが、今に限ってマリアの手を握っている。
 そして先ほどから一言も喋らずに、ただ、ロイとマリアが、自動的に会話を進めてくれるのを待っていた。

 どこからどう考えても、今のイヴの様子はおかしい。
 ゆえに、マリアに確認するまでもなく、ロイは直接、イヴに訊いた。

 するとイヴは――、

「お兄ちゃん……、わたし、自分のチカラが、少しだけ怖くなっちゃったよ……」

 ロイは少しだけなにも言えなくなってしまう。
 ロイはイヴの本領を、少ししか見たことがなかった。具体的には、レナードと初めて戦った日の翌日、決闘場の様子を見に行った時、彼に斬りかかれた際にイヴが展開した【聖なる光の障壁バリエラン・ハイリゲンリヒツ】のフィフスキャストしか。

 そう、以前、イヴがツァールトクヴェレで魔王軍の手先と戦った時、彼女は光属性の中でもSランクの魔術、【絶光七色アブソルート・レーゲンボーゲン】を詠唱破棄で発動させているのだ。
 シーリーンとアリスは、その時、驚く余裕がなかったとはいえ、一番近くで見ているし、マリアだって、別荘の窓からそれを確認していた。

 今日にいたっても実際に見ていないのは、兄であるロイだけ。

 が、ロイは少しだけ考えを改める。
 重要なのはそこではない、と。

 それが事実なのはシーリーンとアリス、そしてマリアから聞いた話で確定している。ならば重要なのは、その事実にイヴが押し潰されようとしていることだ。
 これは、兄として見過ごせるようなモノではない。

「そっか……、そりゃ、いつの間にか、自分でも知らないうちに、人をこ……人を戦闘不能にできる魔術を覚えていたんだもんね。怖くて当然だよ。大丈夫、イヴはなにも変じゃないよ?」
「うん……、でもそれだけじゃなくて……」

「他にもなにか?」
「……、この間、特務十二星座部隊のセシリアさんに言われたんだよ。光属性の魔術適性が10、って、確認されて頷いたら、すごいなぁ~、セッシーでさえ9なのに、って。これって、自惚れかもしれないけれど、一応! 本当に一応だけど! 適性数値では、わたしなんかが特務十二星座部隊の人を上回っている、ってことだよ!?」

「そう、だね……。まぁ、セシリアさんは人じゃなくてフェアリーだけど」
「別に……、わたしは人を戦闘不能にできる魔術が、そんなに怖いわけじゃないんだよ。そりゃ、少しは取り扱いに気を付けないと、って、思ってはいるんだけど……」

 イヴは頭がいいわけではないが、物事の善悪をきっちり判断できる女の子だった。
 ゆえに、ものの道理が上手くわからないことが多々あっても、善悪の判断だけはきちんとしていることが多いように、ロイは彼女の常日頃の生活、日常を見ていて思う。

 だからこそ、強力なアサルト魔術を保有することの危険性も、特に間違いはなく理解しているはずだろう。
 基本的に他人をケガさせるのは悪いこと、という事実から派生して。

「なら……、厳密にはいったいなにを?」
「思った以上に、わたしのチカラが大きいこと、だよ」

「――――」
「この前、セシリアさんに2つの提案をされたんだよ。1つは、魔王軍に対するセンサーとして協力してもらってもいいかな? っていう感じ提案」

「確かに、イヴはツァールトクヴェレで、特務十二星座部隊でも感知できなかった魔王軍の匂いを感知していたからね」

 ロイはひとまず、自分の感想、考えを言う前に、事実だけを述べた。
 事実だけを述べて、イヴが話してくれたセシリアの提案に、それは合理的、理解できない話ではない、ということをほのめかす。

「これに対して、わたしは、うん、って、即答したんだよ」
「なら――」

「うん、問題はもう1つの方で、戦闘要員として、七星団に入団してみない、って、訊かれたんだよ」
「…………っ」

 その言葉に、ロイは少なからず動揺を自覚できた。
 マリアの方にチラッ、と、視線をやると、マリアはロイに対して軽く頷いて、イヴの発言内容を肯定してきたので、恐らく、ロイが部屋にくる前に、一度、イヴから聞いていたのだろう。

 無論、今、グーテランドは魔王軍と戦争している最中だ。
 肉体強化の魔術が普及しているこの国において、女性でも七星団の団員になることは珍しいことでもない。そもそも、仮に肉体を強化できなくても、ひいては、男性と同じ腕力で戦うことができなくても、この世界には【魔術大砲ヘクセレイ・カノーナ】や【雷穿の槍シュペーア・フォン・ドンナー】などがあるのだ。女性でも充分に戦力になる以上、数、戦力を増やすために女性を導入しない理由がない。

 それに、アリスだって数回、ロイに対して、ロイが七星団にこれからもいるなら、自分も一刻も早く七星団に入団する、という旨を伝えている。

 だから本来、イヴが七星団に入団することは、驚くべきことではないはずなのだ。
 それなのに動揺してしまった理由は、恐らく、イヴの性別ではなく年齢にある、と、ロイは自己分析する。

 そう、まだイヴは15歳にもなっていない。
 お酒すら飲めない年齢なのだ。


「ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

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コメント

  • ペンギン

    なぜ、ネグリジェ姿なのかが分かりません...
    誰か教えてください...

    1
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