ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

2章3話 マリア、少しずつ明かされる?



「は、初めまして! ロイくんの恋人……じゃなかった、お嫁さんのシーリーン・ピュアフーリー・ラ・ヴ・ハートです」

 と、少しだけ緊張した様子で、しかし素直にシーリーンはジュリアスとカミラに頭を下げる。

「初めまして、エルフ・ル・ドーラ侯爵家の次女、アリス・エルフ・ル・ドーラ・オーセンティックシンフォニーと申します。ご挨拶が遅くなってしまい、申し訳ありません。去年のラピスラズリの月から、ロイさんとはお付き合いさせていただき、このたび、王女殿下がロイと結婚するのならば、私も、ということで、入籍させていただきました」

 と、丁寧で、淑やかに初対面の挨拶をしてみせるアリス。
 幼い頃から貴族のパーティーに出席して、初対面の相手とも笑顔を見せて話すことを、少しだけとはいえ意識するように育てられたアリスだ。コミュニケーション能力、特に初めて会う人に対する自己紹介は、シーリーンとは比べ物にならない。

 が、そんなアリスに対してロイとヴィクトリアは――、

「アリスがボクのことをさん付けで呼んでいるとか、違和感しかない……」
「アリス様、いつものように愛称で呼んでくださいまし……」
「むっ、こういう時はこれでいいのよ!」

 ロイとヴィクトリアの突っ込みにより、即効で淑やかな仮面がアリスから外れてしまう。
 で、シーリーンとアリスの挨拶が終わると、次は当然、ジュリアスとカミラの番であった。

「ロイとイヴとマリアの父親のジュリアスだ。はは、こんな可愛い女の子と結婚できるなんて、ロイは幸せ者だな!」
「同じく3人の母親のカミラです。シーリーンさん、アリスさん、いつも息子と仲良くしてくれてありがとうね?」

 先刻ほどの緊張も動揺も見受けられない2人。
 それを見てヴィクトリアは小さく頬を膨らませて拗ねてしまう。

「むぅ、わたくしの時はあんなやわらかい感じではありませんでしたわ」
「まぁまぁ、ヴィキー、父さんも母さんも、いずれヴィキーとも対等に話してくれるよ。まだ、今日が初対面なんだし」

「そういうものでしょうか?」
「それにさっきは国王陛下もいたじゃないか。まさか、陛下の前でヴィキーに少しでも軽く話しかけるわけにはいかないよ」

「それは、まぁ……」

 なんてやり取りをするロイとヴィクトリア。
 一方で、ジュリアスとカミラの方では――、

「パパ! ママ!」
「お久しぶりですね、お父さん、お母さん」

「イヴ! 大きくなったなぁ」
「マリアも健康そうでなによりだわ」

 無論、シーリーンとアリスに挨拶することも大切な用事ではあるが、彼らは当たり前だがロイの他に、イヴとマリアの両親でもあるのだ。挨拶と同じぐらい、実の娘と久しぶりのコミュニケーションを交わすのも、大切な用事といっていいはずだ。

「ところでマリア」
「……なんですかね、お母さん?」

「わたし、マリアが七星団学院に通っているなんて、ロイから手紙をもらうまで知らなかったのだけれども」
「…………」

 と、そこでロイは数ヶ月前のことを思い出してみる。
 具体的には初めて王都に訪れた日のことだ。

 ロイはあの時、イヴと一緒に七星団の寄宿舎にやってきて、クリスティーナの説明を受けて、そしてトイレに行こうとしたら、その中にマリアが入っていたのだ。

 そしてそのあと、マリアを自室に招待して、イヴとマリアが「お姉ちゃん、ここってグーテランド七星団学院の寄宿舎だよ?」「そうですね。まぁ、要するにわたしもグーテランド七星団学院に在籍しているんです」という会話をしたのも覚えていた。

 そして、なぜこの会話が成立したのかというと、マリアが七星団学院に通っているという事実を、ロイとイヴが知らなかったから。
 当たり前だ。知っていたらこのような会話は発生しない。

「そういえば、姉さん。ずっと聞くのを忘れていたけれど、そもそも、なんでボクたちに七星団学院に通っていることを黙っていたの?」
「単純に、お母さんがグチグチ言ってくるからですね。学院なんかに行っていないで結婚しなさい。お見合いでもすれば学院やめるでしょう。そんなことを言われるのは火を見るよりも明らかでしたからね。そのために、王都で何をしているかは秘密にしておきました。まさか手紙で追及させることはあっても、秘密を暴きに馬車に乗ってやってこないでしょう、と、考えて」

 確かに、この世界の、この時代の、このグーテランドでは、女性は仕事したり勉学に励んだりするよりも、少しは早く結婚した方がいい、という価値観が広まっていた。
 とはいえ、例えば特務十二星座部隊のアリシアや、セシリアや、イザベルのように、社会で活躍する女性は数多くいたので、ロイの前世の18世紀よりも、女性の社会的地位は向上している。

「お姉ちゃんはそれがイヤだったの?」
「2重の意味でイヤでしたね」

「「2重?」」 と、ロイとイヴの声が重なる。

「お見合いなんかしても、弟くんレベルの男性とは会えないという意味と、わたしには高等教育に通って研究したいことがあったという意味ですね」
「ハァ……、マリア、あなたは夢を見過ぎよ? ロイと同じレベルの男性なんて、王国中を探しても片手で数えられるぐらいしかいないわよ」
「それで、マリアは今、高等教育でなんの研究をしているんだ?」

 カミラがため息を吐いて、ジュリアスが訊く。

「――、魔術開発の研究ですね。新しい魔術を生み出したり、既存の魔術の強化や軽量化、効率化を計算したり、そもそも、声による詠唱とも、脳波による詠唱破棄とも違う、別の魔術の発動方法を考えたりするのがメインですね」

「お姉ちゃんがそんなこと研究しているなんて、知らなかったよ……」
「いつも昼休みも放課後もシィたちと一緒にいるから、正直、暇しているのかと思っていました……」
「正直、マリアさんの日常って、一番謎に包まれていたわよね……」

 それはアリスの言うとおりだった。中等教育上位の学生の日常はロイやシーリーンやアリスが現在進行形で体験していることだし、下位にいたってはすでに歩き終えた道だ。

 しかし、高等教育は違う。
 まだ自分たちが卒業していない教育の、さらにその上の教育なのだ。

 高校生には中学生の日常がイメージできる。しかし大学生の日常をイメージできない。そんな感じかな、と、ロイはなんとなく自分の中で整理を付ける。

「まぁ、いいわ、せっかく入学できたのだし、精一杯、頑張りなさい」
「言われるまでもないですね」


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